<この体験記を書いた人>
ペンネーム:クリス
性別:女
年齢:53
プロフィール:大嫌いだったはずの父。幸せな記憶が「ホントは好き」という思いに気づかせてくれました。
いい年してこんなこと言うのはホントに恥ずかしいのですが、私は父が大嫌いでした。
父が起こしたお酒のトラブルは数知れず、暴れたり家族に手をあげたこともあります。
あるいは、母への異常な束縛は「家庭内ストーカー」のレベルと思えるほど。
その上、自分の事にしかお金を使わない、家族や親戚へ暴言をはく、平気で嘘をつく。
そんな振る舞いにいつも悩まされてきたので、どうしても「大嫌い」という気持ちになってしまうのです。
しかし、その父もここ数年は持病の悪化や加齢による衰えが顕著。
会うたびに「弱った......よね?」という印象を受けます。
そんな父の様子に、私の中で「意外な変化」が起きました。
父の姿を見ると少し辛くなり...涙が出そうになるのです。
そして...
「昔、優しかったときもいっぱいあったよね」
そんな良い思い出ばかりがよみがえてくるのです。
特に思い出すのが私が小学生の頃...家族で野球をした時のことです。
体が弱く、スポーツも得意ではなかった私は当然野球も一番の下手くそ。
兄弟の中でいつも笑われてばかりいました。
そんな私が何を間違ったか、ホームランを打ってしまった時があったのです。
みんなはポカーンと大きなお口をあけて打球を見上げる中、父は「すごいじゃないか!」と目をキラキラさせながら満面の笑顔を向けてくれました。
その笑顔が、今でも幸せな思い出として心の中に刻まれています。
あるいは私が宿題ができなくて困っていた時のこと。
一度だけ徹底的に付き合ってくれたことがありました。
算数が苦手な私には解けない問題ばかり。
いつもなら諦めるしかなくて、学校で怒られるのが運命の私だったのですが、この時は違っていました。
父が「よし今日は俺が徹底的に付き合うぞ」とか言いながら、怒りもせずただただ私を見守っていました。
そして、どうしても問題が解けなくて泣きべそをかく私に、解くためのヒントをくれたのです。
それから数時間、夜中までずっと父が宿題に付き合ってくれたことで、私はこの時の宿題を何とか克服することができました。
それが嬉しくて自分が涙を流したこと。
「よく頑張った」と私を褒めてくれた父の笑顔。
今でも鮮明に覚えています。
そしてこの時の経験が「諦めずに頑張れば、難問でも解決できる」という教えを自分に与えてくれたと思っています。
そんな幸せな思い出と、弱りきった父の姿が私の涙腺を緩め、自分の中にある「大嫌い。でも、大好きな父」という気持ちを思い出させてくれたみたいです。
今はそのことに気づけて本当に良かったと思っています。
そして、これからはできるだけ「父が大嫌い」という思いだけにとらわれず、「父のことが大好き」と思い出させてくれた記憶と共に、 素直に向き合いつつ接していきたいと思います。
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