<この体験記を書いた人>
ペンネーム:健康人
性別:男
年齢:58
プロフィール:体調を崩したのを機に早期退職を選んだ58歳の独身男性です。そこそこの貯えもあり、悠々自適の生活を送っています。
会社員として勤めて35年。
昨年末からどうにも体調がすぐれず、医者には精神的なものが大きいと言われました。
思い切って早期退職の選択をしたところ、徐々に体調も戻ってきました。
仕事のストレスってやつかな、と思い、生活に不安のない程度の貯えがあることもあって悠々自適の生活を送っています。
「回覧板ですよ」
いつもは黙って置いていくのに、と思って出てみると、隣の奥さん(63歳)が立っていました。
紫色の髪に、花柄のプリントシャツ、ビビッドカラーのスキニーパンツと何とも目立つスタイル、ご近所では「スピーカーおばさん」と呼ばれています。
「あら、いらっしゃったの? お仕事、お休みですか?」あちゃあ、と思いました。
この人が件の名前で呼ばれるのは、ゴシップ好きだからです。
おそらくこの頃、いつも私が在宅しているのを不審に思って偵察に来たのでしょう。
下手に誤魔化そうものなら、あらぬ話に仕立て上げられるのは目に見えています。
「いやあ、ちょっと仕事がきつくなってきて、体調を崩してしまいましてね。まあ、気ままな独り身なので、これを機会にと、思い切ってリタイアしたんですよ」
「まあ、そうだったんですか。いえね、ずっとお宅にいらっしゃるようだから具合でも悪くしてるんじゃないかって......当たらずとも、ってわけですねえ」
「いやいや、仕事を離れてからはすっかり体調もいいんですよ。ご心配をおかけしてしまって......」
「お隣同士、気遣い無用ですわよ、それじゃあ、お大事に」
ニヤつきながら暇乞いする様子に、何となく嫌な予感はしていました。
しばらくして、高校時代からの付き合いの友人から電話がありました。
「はい、健康人ですが」
「えっ、ほんとに健康人? 起きてて平気なのか?」
「久しぶりに電話してきてご挨拶だな。ピンピンしてるよ」
「......お前、寝たきりになってるって聞いたんで、心配でかけてみたんだよ」
「は? 何の話だ?」
その友人によると、先日同級生で集まって飲んだ時に、私が不治の病で引きこもっている、という話になったとのこと。
話の出どこを聞いたところ「隣家のおばさんから聞いたっていうから、確かな話だと思ってさ......いや、デマでよかったよ」と。
やられた、と思いました。
私の元気な姿を見ているはずなのに、スピーカーおばさんにかなり尾ひれをつけられたようです。
このままだと死んだことにされかねないと意識して散歩に出るようにしました。
「あれ? 健康人さん? よかった、お元気だったんですね」
「いやあ、心配してたんですよ」
会う人みんなが判で押したように怪訝な顔で声をかけてきます。
しばらくはゾンビ扱いされるのは必至のようです。
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