同棲先から「帰りたい」と幼い頃のような声で泣いた娘。心配はするけど、好きに生きていいよ

<この体験記を書いた人>

ペンネーム:ちもて
性別:女
年齢:52
プロフィール:子育てはほぼ終了、勝手気ままに暮らしたい52歳。

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昔からあまり自己主張の強いほうではなかった娘が、「好きな人ができた。一緒に暮らしたいから家を出る」と宣言したのは、大学卒業後、就職して2年が経ったときでした。

やっと仕事にも慣れてきたところなのに、その仕事も辞めるというのです。

結婚したいというならともかく、同棲するために仕事を辞めて遠い街へ行くことに、考え直す気はないかと夫も私も説得を試みましたが、娘の意思は固く、私達もやむを得ず承諾しました。

春が来て、娘が家を出る日がきました。大型のレンタカーを借り、荷物を積み込み、娘と三人で片道約7時間の引越しです。他にも兄弟がいるので三人だけで旅をすることはめったになく、どこかウキウキして新鮮な気分でした。他愛もないことをしゃべり、途中のパーキングでおいしいものを食べたりしながら、寂しい気持ちをお互い思い出さないようにしていた気がします。

日が暮れる頃、相手の男性が待つ家に到着しました。挨拶もそこそこに黙々と荷物を運び入れる夫に、それぞれが手を貸しながらも、それぞれが複雑な気持ちでいました。
「娘をよろしく」と言うのも何か違うような気がして、「元気でね」とどちらにともなく声をかけて、家を後にしました。

夫婦2人になった車の中は、なんとも言いようのない寂寥感に包まれ、お互い口数も少なく静かでした。せっかくここまで来たのだからと1泊し、観光して帰路に着きましたが、そのときのことはあまり覚えていません。夫も私も娘の話は極力避けていたように思います。

そして、私達は娘のいない生活に少しずつ慣れていきました。しばらくは、楽しそうに暮らす娘の姿をSNS等で見てほっとしたり、たまに電話で話したりしていました。

ですが、家を出て間もなく1年が経とうかという頃、娘からメールがきました。そこには「うまくいかなくなってきた。これ以上一緒に暮らせない。家に帰りたい」といった意味の文字が並んでいました。すぐに電話をすると、出るなり娘は「帰りたい」と泣き出しました。「どうしたの、仲直りできないの」と聞いても「ごめんなさい、家に帰りたい」と泣きじゃくるだけ。「迎えに行こうか?」と聞くと、「1人で大丈夫、帰ってもいい?」と泣く娘に「当たり前じゃない、ここはあなたの家なんだから。すぐ帰ってらっしゃい」と即答しました。

相手の男性と何があったか、詳しいことは聞きませんでした。原因は一つや二つではないのだろうし、どちらがいいとか悪いとかいう問題でもないでしょう。ただ、勝手に飛び出すのではなく、納得してもらって円満に同棲を解消するようにと伝え、娘は家に戻りました。そのことに関して夫はもちろん兄弟たちも何も言いませんでした。皆、娘がいなかった1年などなかったように、昨日の続きのように、娘のいる生活に戻っていきました。

そして娘は新しい仕事を見つけ、新しい恋を始め、育み、ひとまわり大人になって結婚していきました。あの頃のことを思い出すと甘酸っぱい気持ちになります。「帰りたい」と泣いた娘は、幼い頃の泣き声そのままでした。これからもいろいろなことがあるでしょう。いつも心配しています。でも、いくら心配させられてもいいから、自分の思うままに好きに生きてくれるのが一番だな、と思うのです。

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