<この体験記を書いた人>
ペンネーム:トマト
性別:女
年齢:52
プロフィール:90を目前に亡くなった義父。生前はその破天荒な振る舞いにいつも泣かされていた義母なのですが......。
どんなに近くで見ていても、「夫婦の本音ってなかなかわからないものだな~」と実感した出来事を紹介します。
90歳を目前に亡くなった義父は破天荒そのものでした。
車に乗れば乱暴な運転を繰り返しますし、街に出かけた時なんて、ちょっと気に入らないことがあっただけで、見知らぬ人に食って掛かります。
足の骨折で入院した時には、そのあまりにも身勝手な振る舞いに強制退院寸前になったことも。
こちらは以前に書かせていただきました。
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そんな義父なので、義母はいつも緊張しながらの生活を強いられていました。
挙げ句、周囲に謝り倒しながら、「やめてください」と義父に懇願して泣いたり怒ったりの連続で、ホントに大変な生活でした。
そんなことを繰り返していると、どんなにガマン強い義母だって愚痴の一つも言いたくなります。
そして、愚痴を聞かせる相手は...嫁の私。
義父が起こした出来事を聞きながら「なんて人を選んじゃったんだよお義母さん!」なんて思っていました。
しかし、そんな毎日も永遠とは続かず、ついに義父は亡き人に。
もちろん、寂しさ、悲しさという感情はあるものの、これでやっと「お義母さんの緊張と謝罪の日々が終わるのだ」なんて安堵の気持ちもあったんです。
そして、お義母さんも私と同じ気持ちカナなんて勝手に思い込んでいたのですが、コレは私の大きな勘違いでした。
義父亡きあと、義母は「寂しい」と言っては泣いてばかり。
実は破天荒な姿からは想像もつかない「優しい一面」が隠されていたのでした。
そのことを知ったのは義父が亡くなって数カ月が経過し、季節が夏から秋へ変わろうとしていた頃です。
その日もいつも通りに実家に向かい、義母の話し相手をしながら、義父の破天荒エピソードについて語り合っていました。
いつもならそこで話は終わりなのですが、この時はその続きを話してくれたのです。
義母は「あんなお父さんだったけど、毎日寝る前になるとね、"こんなオレでゴメンな"って謝ってくれてたのよ」と、ポツリポツリと話してくれました。
「その時にはとても優しい目をしててね。そしていつもアリガトウなって言いながら目を閉じるの......」と、ここで義母の目から涙がポロポロとこぼれ落ちたのです。
そして「......でもね、そんな日はもう来ない。だから寂しくてしかたないの」と泣きじゃくるのです。
思えば義父は破天荒なだけではなく、とっても頭の良い人でした。
なので、きっと自分のやっていることの是非はどこかで分かっていたのでしょう。
それを必死になって止めようとしている義母を見ながら、心の片隅ではいつも感謝とお詫びのような、申し訳ない思いを抱えていたのかもしれません。
これが、破天荒だった義父が義母の心をとらえて離さなかった一言でした。
きっと、義父はこの一言に精一杯の愛情を込めていたのでしょう。
いろいろ大変だったけど、とっても愛されてたね、お義母さん。
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