<この体験記を書いた人>
ペンネーム:水色のモフモフ
性別:女
年齢:50
プロフィール:未婚・独身・チワワの「クッキー」と2人(?)暮らし。
突然、友人の娘さんから「母が仕事中に倒れた」と電話がありました。もうびっくりして、とるものもとりあえず車で1時間半かけて会いに行きました。
彼女は私にとって、とてもとても大切な友人です。
少女の頃からずっと友人関係は続いていて、私は独身で夫も子どももないので、彼女の子どもたちを自分の姪っ子ちゃん、甥っ子ちゃんだと思ってきました。向こうも少しは頼りにしてくれていたのでしょう、だから電話をくれたのだと思います。
彼女は職場で激しい頭痛を訴えて救急車で病院へ。
一週間ほど入院してさまざまな検査を行ない、出た結果がなんと「うつ病」でした。彼女の家族も、私も、彼女自身も呆然としてしまいました。
彼女は頭が良くて誰にでも優しく親切、そして明るい気づかいができて、非の打ちどころがありませんでした。ただ、逆に言えば、とても周りに気をつかう、周りのことが必要以上に見えてしまう人だったのです。
退院後は通院治療となったのですが、なぜそこまで追い込まれてしまったのか理由を聞いてびっくりしました。
彼女の病気の理由は家庭の経済事情にあったのです。
彼女の夫はいわゆる「町の運送屋」さん。中元歳暮の時期は大手宅配業者の下請け配達があったりするそうですが、他の時期はなかなか厳しく、収入が安定しないそうです。
言われれば「ああそうか」と思うのですが、彼女はこれまでそんな様子は見せたことがなく、私はそんな苦しい状況を想像もしていませんでした。
子どもたちが幼い間は専業主婦だった彼女が急に職探しを始めたときも、「これから子どもたちにお金がかかるから」という理由を何の疑いもせず「そうだね」なんて軽く聞いていました。
さらに、実は勤めた職場でも仕事が上手くいかず、悩んでいたそうです。
それも上手くいかないことを責められていたわけではなく、職場の皆さんが心配してくれたりフォローしてくれたりするのが申し訳なく心苦しかった、と。辞めようかと夫に話すと「家計のために頑張ってほしい」と言われて辞められなくなった、と。
彼女の一番上の娘さんは声優志望で専門学校を卒業したものの、まだプロにはなれていません。
真ん中の男の子は家庭の経済事情を考えて大学進学はやめましたが、一番下の小学校低学年の男の子は幸い無邪気に過ごしているようです。
自分が仕事を辞めて楽になるために、娘に夢を諦めて普通に働いて家にお金を入れて、とは言えなかった彼女。一方、大学を諦めた真ん中の男の子には、「奨学金制度もあるし、夢があるならおじいちゃんやおばあちゃんに相談もしてみるから進学してみたら?」と話していたけれど拒否されたと聞きました。それも彼女に暗い影を落としたようでした。
一人で悩んで、頑張って、追い込まれて...周りの私たちが気づけなかったことが悔やまれます。
でも、「どうして相談してくれなかったの」とは言えませんでした。
私に相談されても、彼女の夫の仕事を紹介したり、娘さんをプロにしてあげることもできないからです。一緒に泣くしかない自分自身に腹がたったし、自分も辛いのにそんな私に気をつかう彼女の姿がたまらなく切なかったです。
彼女の病状は行ったり来たりだと娘さんが報告してくれています。突然泣き出したりする日もあるそうです。
「静かに見守ってあげてね、泣けるようになっただけ、感情を表に出せるようになっただけ、お母さんは良くなってると思うから」と伝えました。急がなくていい、行ったり来たりでいいんだよ、と彼女にも彼女の家族にも伝えています。完全に元気になるのは時間がかかるでしょう。でも、気分のいい日が少しずつ増えればいいな、と思っています。
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