<この体験記を書いた人>
ペンネーム:つよぽん
性別:女
年齢:40
プロフィール:2児のアラフォーママです。自粛が続くなか、94歳祖父の余命宣告。今の私に何ができるのか考えています。
2020年の前半は新型コロナウイルスの影響で、当たり前の生活ができなくなりました。
4月には全都道府県で緊急事態宣言が出て、さまざまな自粛を余儀なくされました。
親族に会うことさえ極力避けているなかで、思いもよらぬ報告が届いたのです。
それは4月下旬、66歳の父からの突然の電話でした。
何かあったのだろうか?
何となく嫌な予感がしました。
「もしもし、どうかしたの? 何かあった?」
「あまりよくない話だけど......おじいちゃん、もう長くないみたい」
私の悪い予感は的中してしまいました。
祖父は94歳です。
父の話を聞くと最近祖父の体調に異変を感じ、病院を受診したようです。
そこで末期がんと診断され、約1カ月の余命宣告まで受けたとのこと。
私はショックで言葉が出てきませんでした。
「もう高齢だし仕方がない。入院せず家で過ごすよ」
父はそう言っていましたが、現実をすぐに受け入れられませんでした。
祖父は現在自立した生活を送っています。
食べることが大好きで、病気知らず。
農業を営んできたこともあり、足腰は丈夫です。
そんな元気っぷりを見てきただけに、あと1カ月だなんて......信じたくありませんでした。
父の電話を切ったあと、今私にできることは何なのか考えました。
祖父の家はわが家から車で片道一時間ほど離れた、田舎町にあります。
すぐ会いに行ける距離ですが、緊急事態宣言が出ている状況では安易に会いに行けません。
緊急事態宣言が解除されたら会いに行こう、そう思っていた矢先でした。
緊急事態宣言を1カ月程度、延長する話が出たのです。
このまま会うことなく、祖父が天国へと旅立ってしまうなんて、やはり悔いが残りそうです。
幸いにも私と祖父が住む地域に感染者は出ていませんでした。
もちろん油断はできませんが、お互いの距離を保つなど万全の注意を払って会いに行こうと決めました。
祖父は寝込んでいるのだろうか......。
心配しながら車を走らせました。
到着し祖父の姿を早く見ようと、急いで家の中へ入ろうとした時でした。
庭にある石の椅子に座った、祖父の姿が見えました。
「よく帰ってきたね、おかえり」笑顔で私を迎えてくれました。
一瞬見間違えたのかと思いました。
寝込んでいなかった......。
以前より痩せて顔色もよくありませんでしたが、いつもの元気な姿を見られて心底ホッとしました。
続けて祖父がこう言ってきました。
「(私に)会うのが楽しみでね、外で待っていたよ」
その言葉を聞いて目頭が熱くなりました。
私にできることが何なのか答えが出た瞬間でした。
本当であれば堂々と祖父に会いに行きたいのですが、この状況です。
とんでもないことを! と怒られても当然だと思います。
それでも私は一瞬でも祖父に顔を見せたかった、そして私も祖父の顔を見たかったのです。
そして、見せることができて本当によかった。
祖父のことを思い出すたびに、そう感じています。
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