性別:女
年齢:50
プロフィール:12歳から23歳の3人の子ども&脳梗塞の夫と暮らす、50歳のワーキングマザーです。
※ 毎日が発見ネットの体験記は、すべて個人の体験に基づいているものです。
◇◇◇
お盆も過ぎたある蒸し暑いの夜のことです。夜勤の仕事をしている私は、いつものようにスマホのアラームを起床時間の20時にセットして夕方から眠っていましたが、電話の着信音に意識が浮上しました。枕元に置いてあるスマホを手に取りメガネをかけて画面を確認すると、そこに表示されているのは、めったにかかってこない3歳下の弟の名前。それも、自宅からではなく、携帯からの着信です。嫌な予感を覚えながら通話ボタンを押せば、聞こえてきたのはかなり緊張気味の弟の声でした。
「じーちゃん(父)が散歩中に倒れて救急車で〇〇脳外科病院に運ばれている」。弟の説明に、心臓が止まるかと思うくらい「ドキリ!」としました。その脳外科病院は、奇しくも7年前に脳梗塞で倒れた夫が救急搬送された病院だったからです。幸い夫の命は助かりましたが、右半身マヒと言語障害の後遺症が残りました。「もしかしたら父も脳梗塞では?」「命に関わるのでは?」......悪い想像ばかりが浮かんできます。
取るものもとりあえず、お財布とスマホをバッグに突っ込み、脳外科病院に向かうべく車に飛び乗りました。病院は自宅から車で5分の距離です。弟も職場で連絡を受けたため詳しい情報は分からないようで、救急車には母が同乗し、弟のお嫁さんが車で病院に向かっているとのこと。私は、胸いっぱいの不安と焦る気持ちを抱えながら、とても長く感じる5分間の道のりを急ぎました。
病院の駐車場に車を滑り込ませれば、救急搬入口に救急車が停まっていて、帰り支度をしていました。慌てて目を走らせると、救急車のボディには実家を担当する地区名のステッカーが貼られています。「もう着いている!」。急ぎ足で玄関口から病院内に入り、受付にいた男性に尋ねると、父は検査が終わり処置室で傷の手当てをしているとのこと。はやる気持ちを抑えながら処置室に向かうと、処置室の前のイスに座る母とお嫁さんの姿があり、私は足を速めました。私の姿を見た母が、涙目になりながら「お父ちゃんが、お父ちゃんが......」とオロオロ。隣に腰を下ろし、私も泣きたいような気持ちで、事の経緯を説明する母の言葉にただ頷くことしかできませんでした。
私と弟は2人姉弟です。私は嫁に出たため弟が跡を取り、実家から徒歩で5分ほどの場所に家を建てて住んでいます。父は夕方、弟の家へ中学生の孫娘の顔を見にいくことが日課になっていて、その日も弟の家にいった帰り道に砂利道でつまずき、倒れてしまったそうです。自力で起きようとしましたが更に転倒。そのときたまたま近くにあったブロックの角で頭を打って裂傷を負い、意識はあったものの立てなくなっていたところを近所の方がたまたま通りかかって、母に知らせてくれたとのこと。頭を打っていたため、脳外科病院に搬送されたというわけです。
結果を言えば、幸い父は脳や骨には異常はなく、転んだときに切った額の傷を縫ってもらいそのまま帰宅できることになりました。心底ほっとしましたが、処置室の横たわる頭に白い包帯を巻かれた痛々しい父の姿を目にしたときは、胸が痛みました。いつでもバリバリと仕事をしていた父の姿はそこにはありませんでした。思えば父も73歳。背中もだいぶ丸くなり、歩く速度もゆっくりになりました。老いは、確実に訪れていたのです。
今回のことで父の老いを改めて実感した私は、日々の忙しさからあまり実家に行けない現状の中、せめて声だけでもとマメに電話をするようになりました。特別な会話をするわけではありませんが、「元気?」「うん、元気だよ」。そんなたわいない会話で、父母との距離が縮まった気がします。
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