<この体験記を書いた人>
ペンネーム:向日葵
性別:女
年齢:52
プロフィール:結婚生活30年。5歳年上の脳梗塞の夫と2人の子供と暮らす、働くお母さんです。
私(52歳)と夫(57歳)は、結婚生活30年。
気心もしれたベテラン夫婦、のはずですが、夫が8年前に脳梗塞で倒れて以降は、私が夜勤で仕事をはじめたこともあり、ゆっくり会話をする暇がありませんでした。
しかし最近ようやく夫もリハビリの甲斐があって昼間の仕事を得て社会復帰。
障害者採用のため給料は低いですが、経済的にも精神的にも大分楽になりました。
そこでふと、ここ8年間夫とまともな会話をしてこなかった気がして、意識して色々話題を振ってみることに。
そう決意してから、はじめて振った話題は、職場の同僚に孫が生まれた話だったと思います。
朝食を食べながら「生まれたての赤ちゃんって、可愛いよね。家でもいつかは孫が見られるかな?」と私が話しかけました。
すると夫は「お姉ちゃん(長女)は、結婚しないって言ってなかったか?」と不機嫌そうな表情でボソリと返答。
確かに、県外で就職して一人暮らしをしている長女は「お母さん見てたら大変そうだから、結婚はしない」と言っていました。
しかしそれはそれ、まったく可能性がないわけではありません。
「でも、縁があれば、結婚するかもしれないでしょ? そうなれば孫ができる可能性もあるじゃない?」
どうにか明るい未来図を想像して話を続けてみるけれど、夫は「変に期待するとガッカリするだけた」と、話をシャットアウト。
最初の試みは、気まずい雰囲気を残したまま、失敗に終わったのです。
それからも、なかなか話が続きません。
「次女は成人式は出ないって言ってるけど、着物を着つけて写真だけでも撮ろうか? ついでに、家族写真も撮っちゃわない?」
楽しいイベントの話題を振ってみても......
「写真は嫌いだからいい」
夫は話をシャットアウト。
「もう少し、楽しく会話のキャッチ・ボールをしてくれてもいいのに」と心で思う一方、脳梗塞のせいで、感情を隠すことが苦手になった夫に悪気がないことも承知しています。
ならば、夫が心から楽しいと思える話題を選べばいいのですが、それがなかなか難しいのが現実です。
楽しい話題をふったつもりが、夫の否定的な言葉で終了。
楽しい会話につながる話題作りにことごとく失敗して、「やっぱりもう無理かも」と諦めかけていた時、意外な伏兵が現れました。
それが、末の息子。
現役の中学生男子です。
朝、朝食に現れた息子の額のニキビの表面が全部削れて、小さな赤い点が無数に散らばっていることに気付きました。
「なに? どうしたの、その額」と聞いてみると、突然夫が愉快そうに吹き出しました。
「ニキビが気になるから、俺のあかすりタオルでゴシゴシ顔を洗ったらしいぞ」
と夫は笑っています。
夫の浴用のあかすりタオルは、かなり固めで間違っても顔を洗うようなものではありません。
ましてや、ニキビをこすったりしたら、惨状は目に見えています。
もちろん、息子にはニキビの手入れは、体温よりも低いくらいのぬるま湯を使い手で優しく洗うようにしっかり教えました。
そんなやり取りを見ていた夫は、私の説明に頷き「その通り!」と、朝から愉快そうに笑っています。
なるほど、楽しい愉快な話のネタは、子供にあり。
特に上の2人は女の子なので、同性の末息子の話題は、夫の楽しいツボに入ったようです。
その後も、夫は息子に『ひげが生えてくる年齢や髭剃りの極意』などを嬉々として伝授しています。
夫婦の会話に固執せずに、子供を巻き込んでの家族の楽しい朝食トーク。
これからも、肩の力を抜いて自分も楽しみつつ続けて行きたいと思います。
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