<この体験記を書いた人>
ペンネーム:濃姫
性別:女
年齢:43
プロフィール:会社員の夫と高校生と中学生の子供2人の4人家族。夫の実家の食堂を手伝っている主婦。
私は、父(76歳)、母(75歳)と兄(50歳)との4人家族で、両親にとっては待望の2人目。
さらに女の子ということもあり、小さい頃から両親だけではなく年の離れた兄からも、甘やかされて育ちました。
しっかり者の兄とは反対に私は両親に心配をかけることも多かった私。
夫と結婚する時も両親は祝福してはくれましたが、義父(71歳)、義母(67歳)との同居に加え、義父母が営む食堂も手伝うことなどについて色々と心配もしていました。
「辛いことはないか? 結婚生活が無理だと思ったら、いつでも帰って来なさい」
結婚してもうすぐ20年経つ今でも、父は会う度にそう冗談めかして言っています。
昨年の秋ごろ、用があって実家に行った時、たまたま家の改築を先延ばしにする義父母と、義父母を説得できない主人(46歳)に対しての不満が溜まっていたため、両親につい義父母と主人の愚痴を話してしまいました。
しばらく黙って聞いていた父ですが、私が一息つくととんでもないことを言い出しました。
「濃姫が心配だから、この家を売り払って、濃姫の家の近くに引っ越そうか」
「そうね、そうしましょうか。私も一軒家は掃除が大変だから、マンションがいいなと思っていたのよ」
母も同調しだして私もびっくり。
とはいえ冗談好きな両親のいつもの冗談だと思った私。
「ありがとう! お父さんとお母さんの気持ちだけで元気になったわ」
軽く受け流して帰宅しました。
しかし数日後、父から連絡がありました。
「濃姫の家の近所にもうすぐ完成する新築マンションの内覧を予約するけど、濃姫も一緒に来て欲しいから都合の良い日を教えて」
え⁉ あれは冗談じゃなかったの?
私は両親が本気だとわかり驚きましたが、こんな大変なことをはいそうですかと進めるわけにはいきません。
「家の近くに来てくれるのは嬉しいけど、高齢になって引っ越しは大変でしょ? それにお兄ちゃんは、お父さんとお母さんの面倒を見るつもりで、今の場所に住んでいるんだし、お兄ちゃんの気持ちもちゃんと考えて」
父は私が大喜びすると思っていたのでしょう。
反論されて少し不機嫌そうな声になりましたが、引っ越しは丸ごと業者に頼むし、兄にも話したから大丈夫と言います。
仕方がないので、日時を決めて一緒にマンションの内覧に行くことにしました。
私は、その時に両親を説得しようと思っていたのですが、内覧後、両親はマンションをとても気に入ったようでした。
さらに不動産会社の人に現在の家を売却して、この辺りの物件を購入したいという相談までして、実家の査定までお願いしてしまったのです。
帰りに3人でカフェに寄り、私はもう一度説得を試みました。
「お義父さんも、お義母さんも、2人が私を心配して近所に引っ越して来たら、良い気分ではないと思うからやめてよ」
「あら、私たちはお義父さんとお義母とは仲良しだから大丈夫よ」
「そんなこと気にしないだろ」
ダメだ...私の気持ちなんておかまいなしのようです。
2人の子どもの親となった中年の私に対して、今でも愛情を注いでくれる両親を有難いとは思いますが、今回の引っ越し騒動には困り果てています。
こればかりは何とか食い止めなくては...。
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