<この体験記を書いた人>
ペンネーム:梅の実
性別:女
年齢:49
プロフィール:昔のことは本当によく覚えているのに最近のことは忘れてしまいがち。これがアラフィフの現実なのかと思う日々です。
先月、20歳の甥っ子が「カセットテープって知ってる?」と話しかけてきました。
「もちろん知ってるわよ! 昔はカセットとレコードしかなかったのよ」
そう答えつつ、久しぶりに聞いたカセットテープ、という言葉で思い出した甘酸っぱい思い出...。
それは私が18歳だった約30年前、バイト先の先輩に片思いをしていた90年代のことです。
学業よりもバイトに精を出していた私は、バイト先の先輩たちに可愛がられていた方だと思います。
その中でもリーダー格だった大学4年生の先輩Kさんは、仕事はテキパキできるしみんなに優しくて、私は尊敬と共に淡い恋心を抱いていました。
バイトの休みが合う人同士でドライブに出かけたりと、バイト以外でも仲良しだったのですが、ある時、みんなで遊びに行く予定だったのに、行ける人が私とK先輩だけになったことがありました。
緊張していた私ですが、K先輩が自分で編集して作ってきたというカセットテープの曲はどれも私が知っているものばかり。
夏だったので、TUBEや杏里といった、当時の「夏といえば」のノリのいい曲をかけてくれました。
それで緊張が解けた私は、かかっているそれらの曲を口ずさんだり、曲についてあーだこーだと一方的に話しているのをK先輩は静かに聞いていてくれました。
そして、その日を境に少しK先輩との距離が縮まった! とポジティブに思い込んだ私は「またバイトの休みの時に、ドライブ連れて行ってくださいよ~!」とK先輩に気軽に話しかけることができるようになりました。
そして実際その後また2人でドライブに行くことができたのです。
ただ、他愛もないおしゃべりをしながらその日の目的地までドライブするだけ。
ですがそれだけの事でもとても楽しかったです。
そして3回目のドライブの時のこと。
いつもは朝から夕方まで出かけていたのですが、道が混んでいたせいで、家の晩ごはんに間に合わなくなってしまったことがありました。
公衆電話から家に電話をかけ、母親に事情を伝え帰りが少し遅くなることを連絡して車に戻ってみると、カセットテープが新しい別のものに変わっていました。
日中に聞いていたノリのいい曲ではなく、DREAMS COME TRUEのちょっとしっとりしたバラードとか、Winkのドラマチックなラブソングとか。
ただその時は「わー! この曲いいですよね」と無邪気に言いながら聞いていたんです。
そしてその後も何度かK先輩と2人でドライブに出かけたのですが、私が受験勉強のためバイトにあまり行かなくなったりしたため、K先輩ともそのまま疎遠になりました。
あの頃は携帯電話なんてなく家の電話しかなかったですし、連絡手段がほどんどなかったので余計にそうなってしまったのです。
それから1年ほど経ったある日、バイト仲間でもあった同級生にその話をしたら、「その先輩って、たぶんあなったのことを好きだったんじゃないのかなあ」と言われたのです。
聞けばK先輩は、ふだん車を運転する時にはラジオをかける人だったらしく、私と出かける時にだけ、カセットテープを用意していたようなのです。
そして少し帰りが遅くなってしまった時の選曲を考えると、あっ、もしかして本当に両思い? だったのかも...。
K先輩とは、その後3年ほど経ってバイトの同窓会で再会しました。
相変わらずの人気者で、周りに沢山人がいたので軽く挨拶しかできませんでした。
遠目にK先輩をみながら、あの時、K先輩は何故私をドライブに連れて行ってくれたんだろう...と胸の奥が少しキュッとなったのでした。
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