<この体験記を書いた人>
ペンネーム:masako
性別:女
年齢:53
プロフィール:主婦です。55歳の夫と2人暮らしです。13年ほど前に、書店で半年ほどアルバイトをしていました。
もともとの出版不況に加え、コロナ禍の影響もあってか閉店する書店も多いですよね。
私が13年前に半年ほどアルバイトをしていた書店も、先月店を閉めました。
閉店を知った時、アルバイトをしていた頃のことを思い出して胸が痛くなりました。
吐き出さずにはいられないので、聞いてください。
私がその書店でアルバイトをしていたのは、2007年の6月から12月にかけてです。
入社初日、駅前店ということもあってか、お店はかなり賑わっていました。
先輩達はレジ打ち、品出し、返品作業に忙しそうで、新人を気遣う余裕もなかったようです。
私は朝礼で紹介されただけで、レジの打ち方も、カバーのかけ方も教えられないまま、1時間以上放置されていました。
周囲が忙しそうにしているのに、自分だけが何もできないというのは辛いものです。
ですが、先輩たちがあまりにも忙しそうなので声もかけられず、私はただオロオロするだけでした。
そんな私に声をかけてくれたのは、Aさんでした。
Aさんは50歳手前の大柄で見るからに仕事のできそうなハキハキした女性でした。
「放っておいて、ごめんね。ここは誰に対しても、最初はこうだから気にしないでね」
Aさんはそう言って豪快に笑うと店内を案内し、各場所で忙しく手を動かす先輩たちに改めて私を紹介して「ちゃんと面倒見てあげてね」と頼んでくれたのです。
それだけではありません。
昼休みは交代で休憩室で過ごすのですが、「初めは1人だと不安だろうから」と店長に掛け合い、一緒にとってくれました。
おまけに「入社祝い」と称して、近所のケーキ屋さんで買ったプリンアラモードをくれたのです。
なんと優しい人なのだろうと、私にはAさんが救いの女神のように見えました。
その後もAさんは私をよく気にかけてくれました。
レジの打ち方をはじめ、仕事もほとんどAさんから習いましたし、お客様からのクレームで困っているとさりげなく手助けもしてくれました。
私はAさんに会えて幸運だったと思いましたし、心から尊敬していました。
ところが、一本の電話が、すべてを変えました。
入社して5カ月が過ぎたある日、Aさんは私の携帯に電話してきてこう言ったのです。
「主人に内緒で父親の借金を返している。でも、今月は返済ができそうにないので、お金を貸して欲しい」
でも...私は、その言葉が信じられなかったんです。
なぜならAさんが毎晩のようにカラオケに行ったり、子供を留学させたりしているのを知っていたからです。
おそらく、借金は父親の肩代わりではなく、日々の贅沢や、子供の留学費用によって作ったものなのではないでしょうか。
同時に今までAさんが私の面倒をあれこれ見てくれたのは、「折を見て借金を申し込むつもりだったのではないか」という疑惑がムクムクと湧いてきてしまったのです。
私は本能的に「ここで貸すと一生たかられる」と感じ、「我が家も貸すほどお金がない」と断りました。
するとAさんは「3万円でいいからお願い。そのくらいならアルバイト代から出せるでしょ」と食い下がってきたのです。
「3万円でいい」という台詞に、Aさんの背負っている借金の大きさが感じられるようで、私は背筋がゾッとしました。
その後も何度も借金を申し込まれた私は、1カ月後、怖くなって退職しました。
もちろん真相はわかりませんが、Aさんが優しくしてくれたのは借金が目的だったのかもしれないと思うと...13年も経った今でも気が重くなります。
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