<この体験記を書いた人>
ペンネーム:文月奈津
性別:女
年齢:64
プロフィール:夫と次男の3人暮らし。長男が最近結婚。長男の幸せをうれしく思う気持ちの中に、ちょっぴり淋しさが混じります。
2020年の4月、長男(31)から結婚するとの報告がありました。
お嫁さんとは前年の11月に先輩から紹介されすぐに意気投合し、お互いの結婚への気持ちも年末には固まっていたようです。
8月に長男の現在住んでいるマンションにお嫁さんが来て、入籍するとのことでした。
長男は一人暮らしを始めて2年。
待ち望んでいた報告が聞けて、私はうれしさでいっぱいになりました。
でも、コロナ禍で自粛が求められているだけに、結婚式は当分挙げられないなと思いました。
長男も「入籍の前に結婚式を挙げたいけれど、式はコロナがあるからどうなるか分からない」と言いました。
新婚生活がスタートした8月の下旬、長男から連絡がありました。
「12月の日曜日にホテルの結婚式場で、式を挙げることにした。料理を試食したら、おいしかったよ。楽しみにしていて」
「えっ、コロナで式をキャンセルしたり延期したりした人が多いって、ニュースで流れているじゃない。式を挙げられるかしら。それに、エンゲージリングやなんやらで物入りだったでしょ。お金のことも心配だわ」
私は思わず早口になって言いました。
しかし、長男は決心を固めているようです。
「この日を逃したら、仕事が忙しくなって結婚式ができないよ。費用は大丈夫。ご祝儀もあるし、ちゃんと計算しているよ」
何を隠そう長男は公認会計士。
1月から6月は繁忙期で、毎日残業、お休みも週1回になるのです。
この日から結婚式まで、いいえ結婚式の日のあと感染しなかったと分かる日まで心配の毎日でした。
結婚式の招待状には、「コロナ禍ですので、出席に関して、私たちに遠慮をなさらず無理をしないでください」の一文がありましたが、長男が家に来る度に「出席者の事を考えて、身内だけの結婚式にしたほうがいいんじゃない」と何度言おうとしたことでしょう。
でも、花嫁さんは一人っ子。
両親は彼女の花嫁姿を見たいに違いありません。
長男は、花嫁さんを「望んでいた通りの人だ」と喜んでいます。
花嫁さんの両親への思い、自慢のお嫁さんを縁の深い皆さんに会ってもらいたいとの長男の気持ちもよく分かります。
私が応援する側にならなくてはいけないと、毎日心に言い聞かせました。
長男達は、式場に打ち合わせのために何回も足を運んでいる様子。
「式で、赤ちゃんの時からの写真をスライドにして見せるから、写真をちょうだい」
ホテルからも子どもたちに渡すメッセージを書くようにと、メッセージブックを送ってきました。
私の心配をよそに準備は着々と進んでいきます。
そして当日。
会場の片隅から、きれいなたくさんの花に囲まれ幸せそうな新郎と新婦、列席してくださった会社の上司、先輩、公認会計士のための勉強を共にした大学時代の仲間たち。
そして息子の高校時代の友人たちを私は代わる代わる見ていました。
コロナ禍の大変な中、年末の忙しい時期に駆けつけてくれた皆さんに、何度御礼を言っても足りないと胸がいっぱいになりました。
2人が皆様への感謝を忘れず、幸せな家庭を築いてほしいと願ったのでした。
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