息子の貯金を下ろして失踪した義母。20年後、一本の電話で明らかになった「やるせない事情」

<この体験記を書いた人>

ペンネーム:向日葵
性別:女
年齢:52
プロフィール:脳梗塞の夫と二人の子供と暮らす、働くお母さんです。

息子の貯金を下ろして失踪した義母。20年後、一本の電話で明らかになった「やるせない事情」 pixta_61260408_S.jpg

ある日、知らない携帯番号から、私の携帯に電話がかかってきました。

普段は知らない番号には出ないのですが、虫のしらせというのか、なんとなく出てみたのです。

「お久しぶりです。A子です」

「A子さん!?」

驚きました。

電話をかけてきたのは、20年間、音信不通だった、夫(57歳)の妹・A子さん(48歳)だったのです。

A子さんは家出同然でシングルマザーになった人で、長男である私の夫と大げんかの末出て行ったため、現在に至るまでずっと音信不通でした。

「久しぶりだね。いったいどうしたの?」

突然何事かと驚いて聞くと、「実は先日、母が亡くなりました」と、沈痛な声で返事がありました。

実は義母(80歳)とも、この20年あまり音信不通でした。

20年前、A子さんが家を出た後しばらくして、義母が突然「親戚のおばさんが入院したから、泊まり込みで看病に行く」と言って、大荷物を持って出かけて行きました。

ところが、夫がそのおばさんに連絡を取ってみると、本人は至って元気で義母は来ていないと言うのです。

おばさんの話では、「たぶん、A子ちゃんのところじゃないかな?」とのこと。

どうやら、おばさんの看病と偽り、A子さんのところで生まれたばかりの赤ん坊の子守りをしているようでした。

「シングルマザーで苦労している娘のために同居して子守りをしたい」

義母の気持ちも分かります。

そうならそうと言ってくれればいいのに、と思いましたが、この後、ある事実が発覚しました。

なんと、義母が息子である夫の口座から、100万円近く引き出していたことが分かったのです。

もちろん、夫は激怒。

すぐに義母の携帯に電話をかけましたが、一向に出ません。

今度は、A子さんの所に電話をかけてみましたが、こちらは「お客様のご都合により...」とアナウンスが流れるばかり。

そうこうしているうちに、我が家に義母あての借金返済の催促の電話がかかってくるようになりました。

カードローン会社、所謂消費者金融からの、取り立ての電話です。

それも一社だけでなく、複数の会社からかかってきました。

「義母は、ここには住んでいません」

「行き先は分かりません」

そう繰り返しましたが、あまりに数が多いので、ほとほと困りました。

つまり義母は、夫のお金を持ち出しただけではなく、多額の借金を残して、行き先も告げずに出て行ったのです。

さすがに夫も大激怒して、義母とは絶縁状態になりました。

そして20年経ち、夫の妹から義母が亡くなったと連絡が来たのです。

やはり義母は、A子さんとずっと同居していたとのこと。

義母の借金はほとんどA子さんのためだったようです。

義母は生活保護で生活をしながら、晩年の数年間はアルツハイマーを患い、施設に入っていたとのことでした。

葬儀は、A子さんが喪主で、家族葬にてひっそりと行うことになりました。

夫ははじめ「葬式なんか行かない!」と怒っていましたが、さすがに実の母親の葬儀にでなかったら後悔するだろうと、私が説得して参列。

20年ぶりに会ったA子さんから、その後の義母の様子や、亡くなる間際の話を聞き、なんともやるせない気持ちになりました。

アルツハイマーで昔の記憶がない義母は「なんで、お兄ちゃん、面会にきてくれないのかなぁ?」「会いたいなぁ」と寂しそうに言っていたそうです。

義母のしたことは褒められたことではありませんが、既に遠い昔のこと。

思えば姑としては面倒見も良く、優しい良い人でした。

ただ、娘可愛さのあまり、愛情をかける方向が少し一般的ではなかったのかなと思います。

いろいろありましたが、今は、天国で安らかにと願うばかりです。

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