<この体験記を書いた人>
ペンネーム:つよぽん
性別:女
年齢:40
プロフィール:2児のママです。先日94歳祖父がこの世を去りました。改めて命の尊さを実感しています。毎日を大切に過ごしたい。
2020年4月下旬に聞かされた、94歳祖父の余命宣告から1カ月が経過した5月の話です。
コロナウイルスの影響で面会は許されず、祖父の顔を見ることさえできません。
会えない中で、祖父に何をしてあげられるか考えました。
そこで思い付いたのは、祖父との思い出の写真を見せることでした。
わが家から車を1時間走らせ、祖父の家へ。
昔の写真を保管している重たい段ボール箱を取り出しました。
軽く30年以上は経過しているでしょうか。
ほこりまみれになった段ボール箱を開けると...懐かしいアルバムが何冊も入っています。
当時60代の祖父が満面の笑みを浮かべながら、赤ちゃんだった私を抱っこしている写真、小学生だった私や弟を連れて、プールへ行った時の写真。
想像以上にたくさん写真があり、つい見入ってしまいました。
夏休みになると、祖父の家に帰りたくさん遊びに連れて行ってくれたな...。
写真を見るたび、数々の思い出がよみがえってきます。
気付けば涙が私の頬を伝って流れ落ちていました。
元気で人情深い祖父ともう会えなくなるなんて、本当に信じられません。
限りある命だからこそ、毎日を大切に過ごしていかなければならない。
そう改めて感じつつ、祖父に見せる写真を集めていきました。
無事に写真が集まり、わが家へ帰宅。
さっそくスキャナで写真を取り込みました。
「プールに遊びに行ったね、竹馬の乗り方を教えてくれてありがとう」
など写真にコメントを付けたオリジナルアルバムを作りました。
印刷してスタンド付きのコルクボードに貼り付けて完成です。
ベッドで横になりながら、いつでも写真が見られるよう工夫をしてみたのです。
きっと祖父も喜んでくれるはず。
期待を胸に祖父が入院する病院へ行き、看護婦さんに預けました。
数日後に看護婦さんから「毎日写真を見てニッコリ笑っているよ」と聞き、とてもうれしかったです。
これくらいのことしか、祖父のためにしてあげられないけど、喜んでくれたならよかったです。
それから時は経ち、6月下旬にさしかかった雨の日、祖父は安らかに天国へと旅立っていきました。
余命1カ月と宣告され、2カ月近くがんばったのは祖父らしいところです。
入院中に会えなかったのは心残りですが、きっとどこかで私のことも見てくれているはず...そう思うしかありません。
お通夜で久しぶりに会う祖父の顔色はよく、本当に亡くなったとは思えませんでした。
受け入れるまでしばらく時間がかかりそうです。
そして65歳の母が私にこんなことを言ってきました。
「最期にね、じいちゃんが手に握りしめていたものがあったのよ。これ...」
母が差し出した手には、一枚の写真がありました。
見ると私と弟、祖父と撮った写真でした。
夏休みにプールへ行った時の一枚です。
その瞬間に祖父の愛を感じ、涙が止まらなくなりました。
この写真をギュッと握りしめていたと思うと、涙が止まりません。
おじいちゃん、ずっと大好きだよ。
これからもずっと...見守っていてね。
関連の体験記:「抱っこさせてくれるの?」名家に嫁ぎ、劣等感にまみれた私の前で、初孫を抱いて涙ぐんだ義母
関連の体験記:「お嫁さんがかわいそうよ」頑なに同居を拒む母に、兄夫婦が思いついた「ほっこりする暮らし」
関連の体験記:夫が倒れて働きづめの私。進学を諦め、助けてくれた長女。並んで座った電車での何気ない会話に涙が...
- ※
- 健康法や医療制度、介護制度、金融制度等を参考にされる場合は、必ず事前に公的機関による最新の情報をご確認ください。
- ※
- 記事に使用している画像はイメージです。