<この体験記を書いた人>
ペンネーム:ウジさん
性別:男
年齢:58
プロフィール:地方都市の公務員男性(58歳)です。リンゴ畑の広がる住環境に満足していますが、畑の持ち主の行動に疑問ありです。
「おや、また始まったな。通行止め」
道路に三角コーンと単管パイプで作った車止めが置かれ、「私有地に付き通行禁止」と札が下がっています。
我が家の近所にはちょっとした農業団地があり、リンゴ畑が広がっています。
ここは我が愛犬との絶好の散歩コースで、四季折々のリンゴの風情を楽しんでいます。
知人の男性(75歳)はここでリンゴ作りに取り組む農家なのですが、ちょっと困った行動があります。
リンゴの作業をする時に、畑を横切る100m程の道路を通行止めにしてしまうのです。
農業団地の中の道なので、通る車もほとんどありませんが、実はこの道は「市道」のはず。
私が散歩コースを変えざるを得ないように、通行を妨げられる車もないわけではありません。
「危ねえんだから、入ってくんな!」
「なんだよ、勝手に道ふさいでんじゃねえよ!」
こんな言い争いを耳にしたこともありました。
「ここは私有地なんだ。何にもねえときは通らせてやってるけど、作業中はダメだ!」
畑の主にそう言われてはしょうがないと、渋々バックしてくる車を、犬をとどめながら見送りました。
「まずいんじゃないですか?」
畑の主人に声を掛けましたが、知人は「何がだ?」意にも解さぬ様子です。
「いやあ、畑の中を横切っているとはいえ、市道を勝手に通行止めって言うのは...」
そういうと、急に声を荒げ始めました。
「もともとこの道はうちの私有地だ! 市がどうしても通らせてくれって言うから差しさわりのない時に通らせてやってるだけだ」
「この道、除雪や草刈りも市でやってるじゃないですか。市道でしょ?」
「それは借りてる負い目があるからやってんだよ。この道は畑と一緒にうちの私有地だ」
知人は一歩も譲りませんが、はたから見ればどう見ても一般の道路です。
首をかしげていると自信満々に言ってきます。
「証拠はあるんだ。見せてやっからうちに来てみな」
話の行きがかり上、家まで招かれていきました。
そして「ほれ、これだ」と見せられたのはボロボロの紙に手書きされた絵図面です。
「俺の親父が描いたんだ。ほれ、あの道路もちゃんとうちの敷地になってるだろ?」
茶色く変色して、折り目はちぎれかけている紙片に、墨で描いたような地図が描かれています。
どうやら知人のお父さんが覚書のように描いたもののようでした。
そこには男性の自宅やその周囲の土地、リンゴの畑や持ち分の田んぼなどが「一反二畝」のように面積とあわせて細かく書き込まれており、問題の畑も道路の両側が合わせて八反ほどの私有地として表されていました。
「確かに私有地と書かれていますね...ただ日付があるわけじゃなし、もしかしたらこの図を描いた後に、道路だけ市に譲ってるのかもしれないですよね」
「譲ったとは聞いてねえなあ」
「でも、私有地を市が管理してるっておかしくないですか?」
「そんなのはこっちの知ったこっちゃねえよ」
証拠というには、あまりにも大雑把な絵図に言葉を失ってしまいました。
市の建設課の知り合いにそれとなく聞いてみましたが、やはり件の道路は市道になっていました。
男性の父親は市に道路を譲っていたようです。
今のところは大ごとにはなっていませんが、そのうちとんでもないトラブルにでもなりやしないかと冷や冷やしています。
関連の体験記:「手伝いますよ」のひと言が命取り...44歳、義実家の町内会で「若手」と重宝される私の葛藤
関連の体験記:娘には言えないけど...70歳手前、貯蓄はキープしたい私たち夫婦にとって「可愛い孫」への出費が痛い
関連の体験記:「なんで最期に来てくれんかったんや!」と泣く父。母の死後、薄情だった母の実家とどうつきあう?
- ※
- 健康法や医療制度、介護制度、金融制度等を参考にされる場合は、必ず事前に公的機関による最新の情報をご確認ください。
- ※
- 記事に使用している画像はイメージです。