<この体験記を書いた人>
ペンネーム:ウジさん
性別:男
年齢:58
プロフィール:父(89歳)と母(88歳)が住む実家を離れて暮らしている58歳の男性です。両親は独立して生活をしています。
私の両親は、自分たちが建てた家に二人暮らしをしています。
私は大学進学を機に実家を離れ、そのまま就職。
妻(56歳)を得て、実家から離れた生活の場を築きました。
「やっぱり駄目だ。まったく頑固だからな」
実家に近い所に暮らしている兄(61歳)からの電話です。
最近すっかり体調を崩している母(88歳)を案じて、兄が実家に居を移して同居しようと提案したのですが、断られました。
「おやじとお袋、2人の暮らしを楽しんでるんだから邪魔するな、だってさ」
そう、子供は子供、親は親。
兄が結婚した時の同居の申し出もそう言って断られ、兄は近くのマンションを購入して家庭を築きました。
義姉(54歳)と母はとても馬が合っていたので、同居することは義姉も了解済みだったのですが。
「おふくろも寝たり起きたりの状況だからな、無理するなってうちの奴も言ってくれたんだけど...」
体調を心配して、という理由はなおさら母を意固地にしてしまったようです。
うちの両親は、子供の世話にはならない、が信条で、自分たちが死んだ時の葬式や墓の手配まで、生前から契約をできる業者に依頼してしまっているほどです。
一時母が入院した時は、私も見舞いに行きました。
主治医の先生と話をしたところ、今は数日の入院で一定程度は回復するが、可能ならしっかり治療ができる長期の入院をお勧めします、と言われました。
母は状態が落ち着いたらすぐに家に帰りたいと主治医に話しているようでした。
「母さん、今まで頑張ってきたんだから、この辺でちょっと骨休みしてもいいんじゃない?」
病室で母に会った時に切り出してみました。
「どういうこと?」
「しっかり入院して治療した方が安心だってことさ」
「何言ってるの、お父さんを1人にしておけないでしょう?」
「それは兄貴と考えてうまくやるからさ」
「ダメダメ、私じゃなきゃダメなことばっかりなんだからね」
「だから、心配だって言ってんだよ! たまには親孝行の真似事ぐらいさせろよ」
なかなか聞き分けてくれない母につい語気を荒げてしまいました。
「子供に心配されるほど悪くないって言ってるのよ。自分のことは自分が一番分かります。
あなたたちに心配されてるってことが、私には一番気欝なの」
結局母は2日ほどで退院して、その後は通院治療をしています。
「私だって死にたいわけじゃないんだからね、病院にはちゃんと行きますよ」
強がりたっぷりの電話を聞かされて、それ以上何も言えなくなってしまいました。
「なあ兄貴、母さんいつまた悪くなるともしれないんだろ?」
「まあ、俺の方でちょくちょく様子を見るようにするよ」
「大丈夫かなあ?」
「まあ、そうやって気を張ってるから保ってるってところもあると思うし、やれるうちは気のすむようにさせてやりたいし...」
兄の方が近くにいる分、母の状況や気持ちにも気を配れているようにも思いますが、離れている分、心配ばかりが募ってしまいます。
まあでも、電話の度に「ああ、ウジさんかい? 私は元気だから、心配いらないよ」と先制パンチを食らわせられているうちは、見守っていこうかな、と考えています。
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