<この体験記を書いた人>
ペンネーム:ウジさん
性別:男
年齢:58
プロフィール:地方公務員の58歳男性です。コロナで出歩けないので家じゅうの片づけを進行中です。
コロナでなかなか出歩けない昨今、改めて眺める我が家の散らかりように一念発起。
あちこちの片づけを妻(56歳)と共に進めています。
「あら、懐かしい」
まあ、こういった時のあるあるでしょうが、古いものを整理するとついつい手が止まります。
妻が見つけたのは息子(23歳)の小学校の頃の作品が詰まった段ボールです。
その中にアルバム風にまとめられた作品がありました。
「ぼくのおいたち、って何だっけ?」
「ほら2年生の時だっけ? 生活科の課題とかで...」
「ああ、大騒ぎして宝探しをした時の奴か」
今から15年ほど前、息子が学校から出された課題は、自分が生まれた時や今までのことをおうちの人に聞いてみましょう、というものでした。
こういう時は本人よりも親が本気になるのはよくある話で、母子手帳を引っ張り出してエコー画像を見せてやったり、子どもの時に履いていた靴に「こんな小っちゃかったんだ」と盛り上がったりしていました。
「...ばあちゃん(現在88歳)ってお父さんのお母さんなんでしょ?」
「どうした急に、当たり前だろ」
「ばあちゃんも、こんなふうにお父さんの物を取ってあったりするのかなあ?」
息子の突然の問いかけに「そりゃあ...」と言いかけて、そう言えばそんなこと話したことなかったなあ、と思いました。
その年の帰省で実家に戻った時、息子はこの件を覚えていたようです。
「ばあちゃん、お父さんが子どもの時の物ってある?」
「そんな昔の物、ないんじゃないの?」
私が続けると、母はくすくす笑いながら言いました。
「見られたくないんじゃないの? もちろん取ってありますよ」
そして、自分の部屋へ入っていきました。
やがて戻ってきた母は大きな長持(ながもち)を持っていました。
「うわあ、すごい!」と言いながら息子が中を探り始めました。
へその緒に母子手帳はもちろん、小学校の時の通知表やら幼稚園の時のウルトラマンの落書きまで、出るわ出るわ...。
「これ何?」と息子が紙切れを見せると母は楽しそうに微笑みます。
「ああ、それは小学校の時に書いてきた手紙でね、字の間違いが多くて嬉しいより先に説教しちゃったのよねえ」
余計なことを覚えているなあなんて思っていると、妻も私の過去に興味津々。
「この靴は?」
「それは初めて履いた靴なんだけど...嬉しかったのかねえ、つないでた手を振り切って1人で歩き始めて、側溝にはまっていきなり真っ黒にしちゃって大泣きしたのよねえ」
恥ずかしいことを覚えているものです。
長持の中には広告の裏に書いたカレーライスの絵までありました。
「こんなの、なんで取ってあるの?」
「それはあなたが母の日に描いたのよ。お母さんの好きなもの何、って言うから、カレーかなあ、って言ったら描いてくれたのよね」
目を細めながら話す母はとてもうれしそうでした。
描いた本人も覚えていないのに、よく覚えているものだと驚きました。
改めて自分は息子の思い出の品を見てもここまで覚えてはいないことに気付き、反省したものです。
自分のことをいとおしんで育ててくれたのだなあ、そうしみじみと感じました。
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