親しみやすいヤクルトから先進的な大人向けのYakultへ
「Yakult1000」とは、"ヤクルト史上最高密度"という1本(100ml)あたり1000億個の乳酸菌シロタ株を含み、腸内環境の改善に加えて「ストレス緩和」「睡眠の質向上」の機能が報告されている機能性表示食品です。
近年の研究で「腸と脳との関係」がホットトピックとなっていることに着目。
「腸内の健康を保つことがストレス改善につながるのではないか」という観点から、新商品のコンセプトを組み立てました。
さらに研究の結果、乳酸菌シロタ株の密度が上がると、睡眠の質の改善につながることが判明しました。
そこで、主力商品である「Newヤクルト」(1本65mlに200億個)や「ヤクルト400」(1本80mlに400億個)よりも密度の高い、100mlに1000億個の乳酸菌シロタ株を入れることにしたのです。
さらに、これまでのヤクルトとは異なる「Yakult1000」の価値を伝えるために、既存のものとはまったく違う商品開発を実施しました。
それは以下のようなものです。
・メインターゲットを、日々のストレスや睡眠で悩む人が多い30~50代のビジネスパーソンとする。
・彼らに刺さる「先進的、機能的、科学的、大人向け」を表現するために、「ネーミング表記」や「パッケージデザイン」を変える。
・商品名はこれまでのカタカナ表記から「Yakult」とアルファベット表記へ。デザインも、従来品と差別化するためにメタリックで光沢感のある赤色を採用。
・味わいも従来品より甘さを控えめにして、よりすっきりした味に。一方で、飲み応えを出すために100mlと量を増やす。
・最新技術を結集して作ったことから、1本48円(税別)の「New ヤクルト」の約3倍で
ある1本130円(税別)という高価格に値付け。
ヤクルトレディによる地道な販売で徐々に浸透
とはいえ、当時は睡眠にアプローチする飲料の市場はまだ小さく、「腸と脳との関係」が消費者に理解されるかどうかが不透明でした。
社内での検討の結果、「この価値を正しく理解してもらないと売れない」とし、「まずは限られた地域の宅配で、ヤクルトレディによる丁寧な説明が不可欠」という販売方針が固まりました。
こうして「Yakult1000」は2019年10月、メインターゲットとして想定する30~50 代のビジネスパーソンが多い関東1都6県限定で、ヤクルトレディによる宅配専用商品として販売されたのです(加えて百貨店や高級スーパーの一部店舗でも限定販売しました)。
ヤクルトレディは1963年からあるヤクルト独自の宅配販売員制度。個人事業主である宅配員(現在はパート制度もあります)がお客さんの自宅やオフィスに出向き、直接話をしながら新商品の説明をしたり、商品を届けたりするのが特徴です。
最初に実行したのは、ヤクルトレディやその家族たちに「Yakult1000」を飲んでもらうことでした。
自身や家族で飲用して効果があると思えれば、販売時に説得力が生まれます。情報過多の現在だからこそ、なじみの人が顔を見て説明する効果は大きいと考えたのです。それは見事に当たりました。
こうしたヤクルトレディの地道な営業や、コロナ禍のストレスフルな状況が追い風となり、売上が増加していきます。
テレビCMでは各界のプロフェッショナルに登場してもらい、仕事で大切にしていることや信念を語ってもらうことで、これまでとは違う「先進的、機能的、科学的、大人向け」が浸透するようにしました。
SNSにも「ぐっすり眠れた」「すっきり目覚められた」といった口コミが多く投稿されるようになりました。2021年4月から宅配の全国展開をスタートすると、公式サイトで「Yakult1000」の新規受付を一時中止せざるを得ないほど注文が殺到します。
同年10月からは、販売チャネルをスーパーやコンビニに広げ、容量と価格を店頭用に変えた「Y1000」(150円、税別)を販売。入手しやすくなったことでさらにファンが広がりました。
さらに2022年4月には、マツコ・デラックスさんがテレビ番組で「眠りがよくなった」「念のため2本飲んでいる」と発言したことから人気が爆発。
スーパーやコンビニでは品薄・品切れが続き、入手困難な状況が社会現象にもなったのです。