政府が消費税率を上げて、法人税率を引き下げてきたのはなぜか。「日本企業の競争力が云々...」。でも、優遇し続けてきたのに、日本の企業社会の競争力は落ちてきたでしょう。昔は法人税率も高かったけれど、日本企業は世界的に強かったわけです。時価総額の世界ランキングに何社も入っていました。
消費税が上がると、財布のヒモは堅くなります。消費が冷え込むと自分たちの首を絞めることになるのに、なぜ経団連は消費税を上げろというのでしょうか。
日本政府の債務残高を減らしたいということもあるのでしょう。日本は直近で財政破綻はしないと思いますが、財政的なリスクは下がった方が海外からの投資を呼び込めます。マーケットの安定感、信頼性、健全性が高まった方が好ましい。
一方で、グローバル企業にとって、国内よりも世界が主力マーケットです。日本市場からの売り上げが占める割合はどんどん下がっています。アメリカと欧州、中国市場などが堅調であれば、日本はあまり関係ないということでしょう。
ぼくは以前、「エリートと生活者の利益相反」という論説を書いたことがあります。エリートの主張と生活者の利益が合致しなくなっているという主張です。
昔は、エリートは生活者のある種の代弁者であり、エネルギーはあるけど知識はない大衆をリードする存在で、それがエリートだと目されていて、理念的には両者の利益は合致していました。
でも、今のお金持ち、カッコつきのエリートは違います。
これからは「エリート」と生活者の利益は相反していくと考えています。「エリート」はたとえば子どもの教育を日本で受けさせる必然性がありません。海外にフライトすればいいからです。日本社会や教育がどうなるかも、ある意味関係ないんです。前述の通り、緊縮して財政再建してほしい。
それに対して生活者は、貧しくなっても日本にしがみつくしかないですよね。留学どころか、円安で海外旅行すら高嶺の花になりつつあります。そうすると当然、社会福祉や政府支出を手厚くしてほしいとなり、政府の財政支出は基本的に大きくなる一方です。でも、これ軒並み前述のエリートの利益と真逆ですよね。
企業社会も同じ。アベノミクスの恩恵を受けて、輸出企業は円安のおかげで物凄く儲かっています。売上高も利益も、過去最高を更新している企業がたくさんあります。そういう企業に対しては、やはり課税を強化するべきです。