双極性障害の治療後、長く続く抑うつ状態と向き合ってきた筆者。ネガティブな世界からのサバイバルをあと押ししたのは、意外にも簡単な7つの「行動」でした。2ヶ月ぶりの換気、10秒片付けからはじまる、抑うつ状態への行動療法、認知療法的アプローチの実践と記録に、「自分を好きになる」ためのヒントを探してみましょう。
※この記事は『自分を好きになろう うつな私をごきげんに変えた7つのスイッチ』(KADOKAWA)からの抜粋です。
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【前回までのあらすじ:1章】
記者として東日本大震災の被災地取材を続けるうちにうつ病を発症。
のちに双極性障害の診断を受けて、2年間の休職と投薬治療後、社会復帰を果たした筆者。
それでも、喜びや悲しみ、意欲などの感情を取り戻すことはできずにいました。
家に帰ったら、ベッドへ直行
彼が去ってからの私は、仕事を終えると、スーパーに寄って惣菜弁当と缶酎ハイを買い、家にまっすぐ帰りました。夜の街のバーに入って、ちょっといいなと思う男の人に媚(こび)を売ったりとか、そういうことに全く興味がなくなりました。ひとりで部屋に戻り、着ていた服を脱ぎ捨てソファーに積み上がった服の山の上に放り投げるとすぐに、ベッドに潜り込みました。
スーパーの惣菜弁当は、ベッドの中で寝ながら口に放り込み、缶酎ハイで胃袋に流し込みました。食べ終わったら、スーパーの袋に入れてベッドサイドに積み上がったゴミの山に捨てました。
ベッドの中で、私は、「この先、きっといいことなんか何もないだろうな。確かに病気はよくなっているんだろうけれど、そのおかげで仕事もできるようになったけれど、心が死んだみたいなこの気持ちはなんとかならないのかな」と、悶々(もんもん)と考えていました。
以前、双極性障害の治療のために1年4ヶ月ほど療養していた時もそうだったのですが、何もしていないと、時間が経つのがものすごく早いのです。昼前に起きて、散歩に行き、ベンチに座って太陽を浴びて、食事を作って食べて、ネットをして寝る......という毎日を繰り返していると、記憶に残るような刺激がないので、毎日が全くおなじように過ぎるためだと思います。1年4ヶ月が3ヶ月ぐらいに感じました。
そして、今回も、ベッドの中で惣菜弁当と缶酎ハイをお供にしながらネットをしていたら、いつのまにか2ヶ月経っていました。状況はどんどん悪くなっていくような気がしました。
彼に会いたくてたまらなかったけれど、会ってもどうにもならないような気がしました。どんな手を使ってでも無理やり連絡して会って、謝って、すがったら、優しい彼は何度かは、付き合ってくれるかもしれません。
でも、彼に連絡することはもうできませんでした。
自分の心のスカスカ感、つまり不充足感を、彼という存在を利用して埋めようとしたら、それはこれまでの「モテ」のためにしてきた不毛な行為にとても似ているような気がして、やっと好きになれる人に出会えたと思ったその彼には、そういうことをしたくないと思いました。
孤独だけれど、どうしたらいいのか全然わかりませんでした。布団の中で、弁当を食べながら、スマホでSNSをしたりネットを眺めて、眠くなるまでの時間を過ごしました。
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