夫への不満、義両親とのいざこざ、相続問題、お金のトラブル、年を重ねるほど悩ましいキャリア問題などなど...。人生、「モヤモヤ」や「悩み」が尽きませんよね。そんなモヤモヤ、悩みに対して、その道の専門家のアドバイスをご紹介。あなたのお悩み解決のヒントがここで見つかるかも!?
<このお悩み体験記を書いた人>
ペンネーム:はるな
性別:女
年齢:56
プロフィール:自宅から1時間半かかる所にあるお墓の墓じまいを決断。しかし、その後はどうするか、とてもとても悩んでいます。
自宅から車で1時間半かかる所に、祖父が生前建てた先祖のお墓があります。しかし、私も高齢者になるとそう簡単にもお墓参りに行くこともできないと思い、2年位前から墓じまいし、近辺にお墓か納骨堂を購入しようと検討していました。
そんなとき、88歳の実母が急遽入院。母が元気なうちに墓じまいし、新しい納骨先を確保して母を安心させてあげようと、実行を決心しました。
そうなると、祖父母や父のお骨の移動先を考えなければなりません。お墓か納骨堂と思っていましたが、将来は永代供養も考えないといけないので、そうなると選択肢は単純なものではありませんでした。
まず、檀家のお寺を訪ね、墓じまいとその後の相談をしたら、3つの選択肢を提示されました。1つは納骨堂。永代供養の費用を別途支払えば、納骨堂が何かでなくならない限りは、いつまでもここで供養してくれるそうです。2つ目はお墓。しかし、お墓は、誰もお世話をする人がいなくなれば、自動的に墓じまいになるとのこと。3つ目は、永代供養付きの共同碑にお骨を納める方法。1体5万円と価格もリーズナブル。しかし入って6年経てば、お骨はほかの誰とも知らない人のお骨に混ざってしまうというものです。
この中でお墓は、永代供養とはならないので、私の中ではありえないと思いました。
次に、霊園を2カ所程尋ねました。こちらもいろいろ選択肢がありました。
まず1カ所目の霊園にも2つ方法があり、1つ目は永代供養付きだけど4体しか入れない、2つ目は何体でも入れるけど、永代供養は付いていないとのこと。しかし、別途管理費を支払えれば永遠に管理してくれ、お墓がなくなることはないといわれました。
2カ所目の霊園は、何体も入れて永代供養も付いているという、私にとっては最も好条件です。しかし、自宅から車で40分位かかるのが気になります。
少し調べただけで、これだけたくさんの選択肢があることにびっくりしています。
これから母や私が入ることを考えると4体と限られても困るし、何よりも大切なのは永代供養だと私は思っています。
最近テレビでは、宇宙葬や樹木葬、また、海へ散骨するなど、お墓を設けない形も話題になっています。私も、6、7年位前は、死んでしまったらどうせ分からないのだから、死んだ後はどうなろうともいいやとは思っていましたが、いざ決めるとなると、そう単純なものでもありません。こんなにお墓について考えたのは初めてです。
小さい頃は、お墓や納骨堂以外の選択はなかったし、それが昔からの在り方でしたので、何の疑問もありませんでしたが、今はお葬式や納骨の在り方も様々です。亡くなったあと、この世に戻った人はいませんので、どうするのがベストかなどは知るすべもありません。ただ今は、生きている人が、自分の納骨を自分の価値観で自由に決められる時代。跡形もなくきれいさっぱり消えてゆくのもいいのかもと思ったり、迷うばかりです。
そんなとき、テレビで亡くなった有名人のニュースを目にして、有名な方は亡くなっても何らかの形で、世に名を残せるものなのだなあと思いました。多分、祖父母や父母、私などは、何十年も過ぎれば親類にも忘れられるでしょう。そう思うとお墓を建て、先祖の名前を刻み、生きた痕跡を残してあげるのも先祖に対する努めなのかなと思い、お墓がいいのかなと思うようになりました。
今の時代でも先祖があるから私が今ここにいるのだと思うと、同じお墓でこの世にひっそりと名を残すのもいいものかもしれないと、今は思っています。
【知っておきたい!お墓についてのQ&A】
誰しもが迎える最期の時。送る側も送られる側も悔いない時間となるように、第一生命経済研究所主席研究員の小谷みどりさんに、お墓について伺いました。
Q:墓は長男が継ぐものですよね?
A:墓は誰が承継しても問題ありません
墓を継ぐことを「承継」といい、継ぐ人のことを「承継者」と呼びます。戦前までは、家を継ぐ人は長男で、長男が墓も承継することが半ば慣習化していました。しかし、いまはライフスタイルが多様化していること、子どもが娘1人という家、子どもがいない家などもあり、昔のように家族で承継することが難しくなってきています。そのため、基本的に誰が承継しても問題ありません。息子が2人いるなら長男ではなく地元にいる次男でも、嫁いだ娘でも、孫でも、さらに親戚でも承継できます。夫婦で、実家の墓をそれぞれ承継するケースもありますし、どちらかが両家の墓を継いでも問題ありません。
Q:子どもがいなかったり、いてもお墓を継いでくれずに放っておくとどうなりますか?
A:無縁墓として、撤去されることがあります
墓を承継できなかったり、承継しても霊園などに支払う年間の管理料を数年間納めずに放っておくと、無縁墓と認定され、墓地や霊園によっては撤去されることがあります。撤去されなかったとしても、無縁墓として放置されます。子どもがいなくて墓参りができなくても、管理料さえ納めていれば無縁墓にはなりません。中には、買ったのに無縁墓になるのはおかしいと怒る人がいますが、その土地を購入したわけではありません。土地は霊園や寺の所有物で、霊園などから借りているに過ぎません。この借りるための料金が、霊園などに支払った永代使用料です。
Q:「墓じまい」と「改葬」がよく分かりません
A:墓じまいは墓を片付けること、改葬は墓の引っ越しです
墓を片付ければ(墓じまい)、その後引っ越し(改葬)する必要がありますし、墓を改葬するには、事前に墓じまいをしておく必要があるので、基本的には同じことです。例えば、地方に住む親が亡くなり、地元に墓はあっても墓参りが大変なので、子どもが住んでいる地域に墓を改葬する例などが考えられます。例えとして、名古屋から東京郊外の民間霊園へ改葬したとすると、墓の撤去費用や改葬先の墓の建立費(永代使用料込み)なども含めて二百数十万円かかります。いずれにしても、後々トラブルとなることを防ぐためにも、家族や親族などと話し合いを持つことが必要です。
Q:夫の家の墓には入りたくありません。実家の墓に入ることはできますか?
A:できます。姓が違っても6親等以内の血族3親等以内の姻族が一つの墓地に入れます
さまざまな理由で、嫁ぎ先の墓には入りたくないという人がいます。もし、自分が亡くなった後に、実家の墓に入れてほしい場合は、事前に承継者の許可をとっておくことと、自分が亡くなった後に実家の墓に入れてほしい旨を遺言などで遺された家族などに伝えておきます。墓地によっては、6親等以内の血族もしくは3親等以内の姻族まで埋葬できると決められているところがあります。自分から見て、いとこの孫なども入ります。実家の墓がどのような基準になっているか確認しておくといいでしょう。
小谷 みどり(こたに・みどり)先生
第一生命経済研究所主席研究員。博士(人間科学)。専門は生活設計論、死生学、葬送問題。著書に『〈ひとり死〉時代のお葬式とお墓』(岩波新書)他がある。
取材・文/金野和子