すでに「格差社会」といわれて久しい日本ですが、島田裕巳氏の著書『葬式格差(幻冬舎新書)』によると、"人の葬り方"にも地域による「格差」が見られるそうです。一体、どんな格差があるのでしょうか。
火葬代がダントツで高額なのは東京23区
自分が住む地域の火葬代を知っていますか? 札幌市は無料、仙台市は9000円、千葉市は6000円、名古屋市は5000円、大阪市は1万円、福岡市は2万円(『週刊ポスト』誌2012年7月20・27日合併号より本書に転載)と、地方自治体によって差があるのです。
さて、東京23区ではどうでしょう。東京23区には公営2カ所、民営7カ所の計9カ所の火葬場がありますが、火葬代は民営で5万円代、公営でも3万円台~6万円台(いずれも大人の場合)と、断トツで高額なんだとか。その背景には、明治時代から民営の火葬場が存在していたことや、大都市が抱える過密な住宅事情があるといいます。
納骨の選択肢もさまざま
火葬後、遺骨の扱いにも東西で違いがあるんだそう。東日本では、遺族が遺骨をすべて引き取る「全骨拾骨(ぜんこつしゅうこつ)」が一般的ですが、西日本は遺骨の4分の1から3分の1を引き取る「部分拾骨」の地域が多いのです。この慣習の違いは互いに驚きではないでしょうか。よって、骨壺の大きさも東西で異なっているのです。
また、納骨にも東西で違いがあるといいます。西日本では、遺骨を集めて仏を造る"骨仏"が広く知られています。また、関西圏にある宗派の総本山では、数万円ほどで誰もが納骨可能です(信徒が条件の寺も一部あり)。海や山に骨を撒く「散骨」は、関東のほうが熱心だそうです。
関西には、そもそもお寺が多い。(略)それぞれが特定のご利益を強調していたり、広く知られた祭や行事を行っていたりすることで知られる。
ところが、関東のお寺では、そうしたところは少ない。
葬り方の選択肢も少なく、墓を造れば、相当な費用がかかる。関東で死ぬ、東京で死ぬということは、自動的に多くの金を必要とするということなのである。
関西では信仰を集める長い歴史が、関東では寺とのつながりの希薄さが、如実に表れた結果ではないでしょうか。
このように"人の葬り方"には、地域によって知られざる格差があります。当然ですが、葬式は予定できるものではありません。喪主ともなれば、悲しむ間もなく葬儀会社に連絡し、葬式の日程や内容を数時間で決め、納骨までが慌ただしく過ぎていってしまうもの。家族が元気なうちにこそ、希望する葬式や納骨について、オープンに話し合っておきたいですね。
文/小林みさえ
(島田裕巳/幻冬舎)
葬式にまつわる地域差は思ったより大きい。仏式葬儀の成り立ちやお坊さんの現状、過度な演出の「おかしな葬式」、お墓の行く末など、宗教学者である著者が「格差」をテーマに日本人の葬式のあり方を問う一冊です。