「今日こそ片づけよう」そう一大決心して部屋の片づけを始める人は多いはず。しかしなかなかスムーズに進まない...。もしかするとあなたが片づけられない理由は、片付け技術ではなく「心」の方にあるのかもしれません。
人気の空間心理カウンセラーが書き下ろした不思議な片づけ物語は、読むだけであなたの心を「片づけられる人」に変えるかも! 可愛い毒舌フェニックスによる「心も片づく魔法」にあなたもかかってみませんか?
※この記事は『毒舌フェニックスが教える 家族を救う片づけ』(伊藤 勇司/KADOKAWA)からの抜粋です。
前の記事「目的1つに1つのタスクが片づけへの好循環を生み出す/家族を救う片づけ(5)」はこちら。
空間心理カウンセラー・伊藤勇司さんからのメッセージ
「人に嫌われたくない」「恥ずかしい想いをしたくない」「人によく思われたい」という気持ちが強くなり、行動できなくなっている、その結果として部屋が片づかなくなる、というケースは少なくありません。
この場合は、必ずしも部屋の片づけを行わなくても、
「人に嫌われたくない」
→「人に嫌われてもいい」
「恥ずかしい想いをしたくない」
→「恥をかいてもいい」
「人によく思われたい」
→「人がどう思おうと関係ない」
と心理状態を変えることができればいいのです。
すると自分の素直な心に正直に判断や行動をするようになるので、ブレることなく自分を生きるようになり、その結果として部屋を自然に整えたくなって片づける人も多いものです。
そうした心理状態を形成するためには、恥ずかしいことや、人に言いたくない格好悪いことこそを、人に話してみるだけで、心は飛躍的に楽になります。
そこで、以前メルマガで書いたところ非常にご好評をいただいた、過去の僕の恥ずかしいエピソードをあなたにもシェアしたいと思います。空間心理カウンセラーになるずっと以前の、若かりし頃の話です。
「カウンセラー」という肩書きから、「慎重で冷静な常識人」のようなイメージを抱かれることが多いのですが、実はもともとの僕は、常識や他人のルールをあまり気にしないタイプ。一言でいうと、「ダメ元人間」と言えるかもしれません。なんでも躊躇(ちゅうちょ)せずにダメ元で言ってみることで、人生を発展させてきたとも言えます。
例えば若い頃、いくつものアルバイトを渡り歩いていた頃の話です。
求人広告にはよく採用基準が書いてありますよね。でも僕は例えその基準に当てはまらなかったとしても、「そこで働きたい」という意志があるなら、とりあえず応募するのです。
すると意外と受かることが多かったのですが、僕の記憶の中でも特に印象深いのは、スキーのインストラクターというアルバイト募集に応募した時のことです。
単純すぎる理由ですが、募集を見て、
「スキーしながらお金もらえるって、素晴らしいなぁ!」
と思い目を惹かれました。さらに、
経験不問/研修あり
と書かれてあるので、
「よっしゃ! やってみよう!」
と思ってすぐさま応募してみました。ちなみに、スキーの経験はゼロでした。
すると面接当日に、こんなやり取りが生まれます。
面接官「スキー経験はどのくらい?」
僕 「いや、まったくありません」
面接官「......いや、スキーできなかったら教えられませんよね?」
僕 「えっ、経験不問で、研修ありって書いてましたよね?」
面接官「......それは書きましたけど、常識としてそこはできる前提でしょう!?」
僕 「大丈夫です。運動神経はいい方なので、研修でマスターします」
面接官「ところで、スキーウェアや板は持ってますか?」
僕 「経験がないので、持っていません。制服的な感じで支給していただけるのではないのでしょうか?」
面接官「いや、普通は、人に教えるくらいだから、すでに自分のものを持っているのが常識ですよ!」
僕 「あっ、そうなんですね。経験がないので、道具も一切ありませんが、やる気は誰よりもありますので、頑張ります!」
こんなやり取りを面接でしていたら、
面接官「君、面白いな! こんな奴が面接に来たの、初めてやわ。まあ、ダメ元で研修受けてみる? 使わなくなった俺のウェアと板を貸してあげるよ」
と無事に面接に受かって、研修に行けることになりました。
そうして長野県まで研修に行くバスの中には、40名くらいのインストラクター候補の方々が乗っています。道中のバスでは、
「私、めっちゃ不安なんです。みんな上手そうで大丈夫かなって思って」
と、不安になる人も。そんな中で、前代未聞の「経験ゼロ」の僕がバスに乗っているわけです。内心、ちょっと、いや相当場違いかなという空気を感じつつ、現地に着いて研修がスタートしました。
「では、スキルに合わせて上・中・下と研修グループを振り分けていきますので、自分のスキルに合うと思うグループに行ってください」
もちろん、僕は問答無用で下のグループへ向かいます。そして、すぐに滑走開始。すると、全員が驚く光景が目の前に繰り広げられます。
僕一人だけ、生まれたての子鹿のように足をガクガク震わせながら、前に滑ることすらできません。それを見てみんな爆笑。バスの中で不安がっていた子もホッとした顔で笑っています。
「この人、なんでここに来てるの?」という感じになりましたが、結局僕はインストラクター研修の「素人役」という役目をゲットし、そこでほかの研修生のみなさんから親切丁寧に滑りを教えてもらうことになったのです。
そうして過ごした3泊4日の研修を終えた後、面接していただいた方と改めて対面しました。
「で、どうだった?」
と、聞かれて、
「無理でしたね」
と、即答する僕。
「まあ、君の勇気には感動したよ。不安だった子たちが勇気づけられたのは事実だからね。残念ながらインストラクターで雇うことはできないけど、記念に俺のウェアと板をあげるから、それでスキー練習して、またよかったら面接来てね」
ということで、スキーのスキルと道具一式を手に入れて、そのアルバイトを後にしました。
インストラクターにはなれなかったものの、やってみれば何かは得られるもの。その後僕はインストラクターに再チャレンジすることはありませんでしたが、いただいたスキーの板とウェアを活用して、友達と雪山へ何度も遊びに行くことができました。
こんな経験が時を経てこうして本に載ることにもなったように、その時は恥ずかしいと思うような経験も、未来の時間軸から見ると、ある種の武勇伝として笑える日が来る可能性もあります。
あなたの恥ずかしい経験が、誰かの一歩踏み出す勇気になる可能性がある、というわけです。このコラムをきっかけに、あなたの過去の恥ずかしい体験で、今となっては笑えるようなことを一度思い出してみませんか?