「顔を立てる」のも人間関係をスムーズにこなす通貨と思え!/発達障害の仕事術

「顔を立てる」のも人間関係をスムーズにこなす通貨と思え!/発達障害の仕事術 kaowotateru.jpg仕事や人間関係がうまくいかない...「もしかして自分は大人の発達障害なのでは?」と悩む人が増えています。しかし、その解決策を具体的に示した本は少ないのが現状です。

本書『発達障害の僕が「食える人」に変わったすごい仕事術』は発達障害の当事者が、試行錯誤と度重なる失敗の末に身につけた「本当に役立つ」ライフハック集。うつでもコミュ障でも、必ず社会で生き延びていける術を教えます!

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前の記事「「褒め上げ・面子・挨拶」は職場で使える「見えない通貨」の代表格!/発達障害の仕事術(25)」はこちら。

 

部族の三大通貨:面子

──「俺は聞いてないおじさん」が発生する理由

ボス猿にボコボコにされないために

僕が勤務していた金融機関では、自分の部署の関係者全員に話を通して仕事の協力を依頼するときに、

・誰から順番に話を通していくか
・誰の意見を最も尊重するか

ということが極めて重要な概念でした。その場のパワーバランスに配慮して、「顔を立てる」という支払いをしなければ物事が円滑に進まないわけです。

課長と係長ならわかりやすいですが、係長が2人いたらどうするべきでしょう。ここを判断するには、部族の掟を観察する他ありません。平担当者にも当然序列はあります。

「俺はその話を聞いてないぞ」と言いながら、よくわからないエラいおじさんが話に介入してきてシッチャカメッチャカになった経験って、誰もがあるのではないでしょうか。あれは、「俺の面子を潰しやがって」と怒っているのです。「俺に支払いがなかったぞ」と怒っているのです。どうです?

実にわかりやすいものでしょう。上手にやっていきましょう。

面子を立てるとは、部族の掟に従い「私はあなたに敬意を払い、顔を立てるべき相手と認識しています」という表明をすることです。あなたは見えない通貨で対価を支払い、相手に協力を依頼したわけです。

いますよね。ちょっと顔を立て損ねると不機嫌になる上司。自分を飛ばして話が進んだらぷりぷり怒り出す人。当時は意味不明だと思っていましたが、今はわかります。あれは「自分に支払われるべき対価が支払われなかった」という怒りなのでしょう。

この「敬意」や「尊重」はかなり強力な決済手段と言えると思います。新卒の若手、平社員など組織の下っ端としてやっていく場合は、支払いに使える通貨はほとんどこれしかないと言っていい。

「あなたの面子を立てます」という概念は、反社会組織から公務員まで実に幅広く流通している通貨だと思います。この決済のやり方を知らなかった僕が集団の中でボコボコにされたのは、今思うと「当然」という気しかしません。

 

「数字が全て」の世界では「面子」の価値が小さくなる

ただし、「どのように振る舞うことが敬意や尊重を示すことになるか」は、「部族」ごとにかなり違いがあります。場所により、全く重視されていない部族もあります。

特に、公務員や総務部門、実質的にはほぼメリットのない管理職など、金銭的な褒章を得にくい職種の場合は、この「面子」という通貨を得ることに人間は本気を出し始めます。サル山のボス猿争いと根本的には同じです。ボス猿に「あなたがボスだと認めます」という態度を示さなかったサルはボッコボコにされるわけです。

逆に言うと、「数字が全て」の世界ではこの「面子」の価値は相対的に小さいものになります。例えば、シンプルに数字を競うような営業の世界では、面子など何の役にも立ちません。目の前の数字こそが全てになります。この面子のゲームをやりたくないのであれば、そういった職種に飛び込むのもひとつの手です。ただし、数字が上げられなければ辛いという点はありますが。

「人間の面子を尊重し損なったから怒られる」より「数字が上がらないから怒られる」ほうが納得がいくよ、という人は営業職がおすすめです。僕も、現在は「最も劣悪」とされる営業職のひとつに在籍していますが、「ここは楽園か」という気持ちがあります。何せ、数字さえ上がっていれば人間として扱ってもらえますので。

 

【まとめ】
・何かを相談するときは「話を通す順番」と「優先順位」に注意せよ
・もしあなたが数字を競わない部門にいるなら、面子の概念は必須

  

次の記事「「挨拶」は人間関係でかなり使える「見えない通貨」だった!/発達障害の仕事術(27)」はこちら。

 

借金玉(しゃっきんだま)

1985年生まれ。診断はADHD(注意欠陥多動性障害)の発達障害者。幼少期から社会適応が全くできず、登校拒否落第寸前などを繰り返しつつギリギリ高校までは卒業。色々ありながらも早稲田大学を卒業した後、何かの間違いでとてもきちんとした金融機関に就職。全く仕事ができず逃走の後、一発逆転を狙って起業。一時は調子に乗るも昇った角度で落ちる大失敗。その後は1年かけて「うつの底」から這い出し、現在は営業マンとして働く。

『発達障害の僕が「食える人」に変わったすごい仕事術』

(借金玉/KADOKAWA)

社会生活がうまくいかず苦しむ「大人の発達障害者」が増えていると言われる現代日本。発達障害によって30歳を前に人生をほぼ破たんさせかけた著者が、試行錯誤で編み出した「発達障害者のため」の今日から使えるライフハックを多数紹介! 仕事や人間関係がうまくいかない全ての人のための「日本一意識が低い」自己啓発書です。

この記事は書籍『発達障害の僕が「食える人」に変わったすごい仕事術』からの抜粋です
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