謝罪したつもりが相手を怒らせてしまった、という経験はないでしょうか? 気を遣いすぎるあまり、相手に意図が伝わらずやきもきしたことは? 思い当たる節があるあなたには、「言い換え力」が不足しているのかもしれません。
言いにくいことでも、ちょっとした言い換えで確実に伝えられたり、知性や教養があるという印象を相手に与えることができたりと、「言い換え力」を身に付けるメリットは数え切れないほど。言語学者の石黒圭氏は著書『大人のための言い換え力(NHK出版新書)』の中で、「言い換え力」は私たちが現代社会で生きていく上で必須のコミュニケーション能力であると指摘しています。
率直な「言い換え」でコミュニケーションを円滑に
言いにくいことを伝える場合、あまり気を遣いすぎて遠回しな言い方を選ぶと、逆にコミュニケーションに支障を来してしまうよう。その理由は、(1)意図がうまく伝わらなくなること、(2)相手をかえって傷つける可能性があること、(3)自己決定ができなくなること。本書では、知人から友人の入社について頼まれた人事担当者の例を挙げて、次のように説明しています。
そんなすてきな方ならぜひ採用したいのですが、ここのところ当社の業績も芳しくないので、難しいかもしれません。でも、検討はしてみますね。
本当は断りたい場合、このように遠回しに伝えることで相手に期待を持たせるよりは、率直に伝えたほうが結果的に相手の気分を害さずに済むのだといいます。
このところ当社の業績も芳しくないので、新規採用は厳しいと存じます。せっかくすてきな方をご紹介いただいたのに、ご期待に添えず、申しわけありません。
一言添える「言い換え」で印象アップ
相手に心からの謝罪や御礼の気持ちを伝えたいとき、型通りの御礼文や謝罪文で済ませていることはありませんか? 特に謝罪の場合、絶対に避けたいのは謝罪の内容を軽く考えているように受け取られ、相手の気分を害してしまうこと。誤解を招かないために石黒氏が重要視しているのは、お詫びの事実を重く受けとめていることを示し、事態の深刻さを前面に出すこと。さらに、言葉を尽くして事情説明と改善策を示すことも欠かせないといいます。
御礼の場合は、「○○、ありがとうございました」の「○○」という名詞の前に、相手の行為を高く評価する形容詞を添えると印象がアップするようです。確かに、ただ「プレゼント」と言われるより「素敵なプレゼント」と言われたほうが、気分がいいですよね。
言い換えの本質とは、相手のことを考え、伝えたい内容を十分に伝わるように考えることなのです。
ご近所でも職場でも、人気を集める人はTPOに合わせた言葉の選択に長けているもの。あなたも「言い換え力」を磨いて、人生を好転させてみませんか。
文/佐藤結衣
『大人のための言い換え力(NHK出版新書)』
(石黒 圭/NHK出版)
「言い換え力」を磨いてコミュニケーション上手になりませんか? 言語学者の著者が伝授する、現実社会を生き抜くための「言い換え」の技術・発想を身に着ける10の方法。日常生活やビジネスの場で実践したくなること間違いなしです。