なぜ体力測定B判定でも、日本代表として世界を相手に活躍できたのか?
数々の記録をもつ天才サッカー選手・遠藤保仁の「最速で最高の決断」をくだす思考のつくりかたの極意を大公開!
「やることが山積みで全然前に進まない」「頭の中がごちゃごちゃでつらい」などの悩みをかかえているあなた、本書『「一瞬で決断できる」シンプル思考』から考え方のコツを学びましょう。
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前の記事「一流のプレーヤーは0.1秒でもボールを見る時間を減らしている/遠藤保仁「一瞬で決断できる」シンプル思考(9)」はこちら。
視界の端で情報をとらえる
視野を広げるためには、できるかぎり目を使い意識的に情報収集をすることが大事だ。そのためには、物理的に視野を広げるのが効果的だ。
たとえば、公園のベンチに座っているとき、視界の右隅にブランコが見えるとしよう。普通の人も意識すれば、右隅にブランコがあることくらいはわかるだろう。しかし、あとで「何番目のブランコが揺れていたか」と訊かれても、とっさには答えられないはずだ。視界の端にある情報をそこまで拾う習慣がないからだ。
僕の場合は、「何番目のブランコが揺れていたか」と訊(き)かれても、すぐに答えることができる。ふだんから広い視野を使って見ることを習慣にしているからだ。
街を歩いているときも、正面を見ながらも視界の両端に見える情報を集めるようにしているから、視界の端っこを走り抜けていった自転車に乗っていたのが男性か女性か、何歳くらいかといったことまでわかる。食事をしているときや雑談をしているときも、正面を見ているようで、実は視界の両端にも意識を向けているのである。正面の相手に50%くらいの意識を集中させて、残りの50%はその周辺に意識を向けているという感覚である。
視界が広くなれば、サッカーのプレー中も多くの選択肢を用意することができる。ボールと目の前の敵については、ぼんやりと見るにとどめて、残りは視界の左右にいる選手のポジションや動きに意識を向ける。首を左右に振れば、さらに視野は広がる。意識してより広範囲の情報を得ようとすることによって、フィールド全体を俯瞰する力を養うことができるのだ。
第三者的に分析する力を鍛える
情報は、見ようと意識しないと入ってこないものだ。それはサッカー以外でもいえることで、まわりを見ることを意識しなければ情報に対する感度は落ちるし、意識して見れば、他の人が気づかないようなことにも気づくことができる。
どんな世界でも一流といわれる人は、できるかぎり意識して情報を集めているはずだ。だから、他の人には思いつかないようなアイデアを出すことができたり、コミュニケーションをするうえでも細やかな気遣いができたりするのではないだろうか。
もちろんサッカーの練習でも、ちょっとしたパス練習を「何となくこなす」よりも「止める」「蹴る」を意識するだけで気づくことは意外と多い。さらには、シチュエーションとして、実際の試合で敵がいることを意識するだけでも、また違ったパス練習になる。
「そんなの当たり前だ」と言われればそうかもしれないが、常に意識して実践している人は実は少ないのではないだろうか。
おそらく、「意識する」というのは、「自分を他人のように冷静に客観的に分析する」ことにつながると思う。この第三者的に分析する能力を鍛えることで、自然と俯瞰する力も身につくと考えている。そうなれば、技術の上達速度も飛躍的に上がるはすだ。
意識が変われば、行動が変わる。
行動が変われば、習慣が変わる。
習慣が変われば、きっと未来を変えることだってできる。
ありきたりな言葉かもしれないが、そのちょっとした意識があらゆる物事におけるすべての始まりであることは間違ってはいないと考えている。
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撮影/佐藤 亮
遠藤 保仁(えんどう やすひと)
1980年1月28日、鹿児島県生まれ。鹿児島実業高校卒業後の1998年に横浜フリューゲルスに入団。京都パープルサンガを経て、2001年にガンバ大阪に加入。数々のタイトル獲得に大きく貢献し、2003年から10年連続でJリーグベストイレブンに選出され、現在もガンバ大阪の中心選手として活躍中。また、U-20日本代表をはじめとして、各年代の日本代表に選出され2002年11月に日本代表国際Aマッチデビュー。その後は、日本代表の中心選手として活躍し3度のワールドカップメンバーに選ばれる。「日本代表国際Aマッチ出場数最多記録保持者」「東アジア最多出場記録」「2009年アジア年間最優秀選手」「2014年JリーグMVP」など数多くの記録をもつ。178㎝、AB型。
『「一瞬で決断できる」シンプル思考』
(遠藤保仁/KADOKAWA)
「国際Aマッチ出場数最多記録保持者」など、数々の記録をもつ天才サッカー選手・遠藤保仁の「一瞬で決断できる」シンプル思考の原点に迫る! 年齢を重ねるごとに進化する「最速で最高の決断」をくだす思考のつくりかたの極意44。