生活費が上がり続けるいま、節約や年金、税金など「お金」について考える機会が増えたのではないでしょうか。どうすれば、シンプルながらも豊かな暮らしを実現できるか、識者からたくさんのヒントをいただきました。
【前回】知っておきたい「年金・税金のお得な制度」。老後資金で、収入増や資産運用より「考えるべきこと」
森永卓郎さんの提案
工夫次第で「お金に困らない長生き」は実現できる
これからやってくる年金給付額減の時代
日本は世界で最も少子高齢化が進展している国。
これに伴い、今後は公的年金の支給額減と税や社会保障費の負担増が訪れようとしています。
例えば年金。
現在の厚生年金のモデル年金額は月額22万円ですが、約30年後には月額で13万円を切る可能性が高いと私は考えています。
また、現役世代の数は減る一方で医療や介護を必要とする高齢者の数は当面増えますから、社会保障費の負担は増えるばかりです。
「30年後なんてまだ先」と思うでしょうが、政府は国民年金保険料を納める期間を現行の20~60歳から5年延長する案を打ち出しました。
実現すると、これも大きな負担増になります。
豊かな老後を迎えるには、いまから手を打っておくべきであり、預貯金や運用を通じて資産をつくっておくのはもちろん、お金のかからないライフスタイルを確立しておくべきです。
収入を増やすのも良いですが、好きでない仕事を続けても、人生は味気なくなります。
それよりは、あまりお金は得られなくても、満足のいく時間を過ごす方が、明るく日々が過ごせるというものです。
30年後、公的年金は月13万円になる?
現在:月額22万円
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約30年後:12.9万円(所得代替率36%の場合)
「現在の年金制度は、現役世代が納める年金保険料を高齢者など受給者に分配する『賦課方式』を採用しています。少子化が進み労働者が減る一方で年金受給者は増え続けているので、これから年金は減っていく可能性が大です。厚生労働省は最も悲観的な将来予測の場合、約30年後に過去の年金余剰分をためた年金積立金はなくなり、平均給付額は約19万円になると試算していますが、私の推測ではもっと減り、13万円を切ると考えています。対して、高齢者夫婦世帯では月26万円の生活費がかかると言われていますから、節約は必須となっていくでしょう」(森永さん)
家計の基礎支出を減らすことが節約の第一歩
ポイントは、生活の基礎支出を減らすこと。
そうすると、不慮の出来事で収入が減っても焦ることはありません。
いまや家計支出の大きな割合を占める携帯電話は格安プランにすれば、かなりの金額が浮きますし、スーパーの特売品で日々の献立を決めるだけでも、食費の節約になります。
使える場所があれば、私のように家庭菜園をするのもおすすめです。
運動にもなり健康寿命の延伸につながります(笑)。
昨今は電気代の高騰も話題ですが、戸建てなら屋根に太陽光パネルを置き、自家消費するのもあり。
自治体によっては補助金を出しています。
年金の受け取り時期を調整して収入を減らすと、住民税非課税世帯になり、節税になることもあります。
あらゆる手段を活用し、シンプルで豊かな暮らしを実現すること。
そうやって、長い人生を楽しむ術を身につけましょう。
年金は繰り下げない
本来の65歳受給開始を70歳にすると年金月額は42%、さらに75歳まで繰り下げると84%増えます。ただし、負担する税金や社会保険料も増え、女性が75歳から受給を始め平均寿命87歳まで生きた場合、年金の受取総額は466万円減少する計算に...。繰り下げ支給=お得ではないことを理解しましょう。
住む場所を再考する
都心部は住むのに便利かもしれませんが、物価は高く人間関係も希薄です。田舎は物価が安いと思われがちですが、輸送コストがかかるので意外にそうではなく、濃密すぎる人間関係が苦手だという人も。そこで考えたいのは、首都圏なら都心から半径50km圏内で、程よい物価と人間関係が期待できる、都会と田舎の間「トカイナカ」への移住です。
そこそこ働く
いくつになっても働き続けることは決して悪くありませんが、収入が多いと年金が減額され、税金や医療費などの負担は大きくなります。好きな仕事なら楽しいでしょうが、そうでないなら苦痛にしかなりません。それよりは、そこそこ働いて満額の年金を受け取り、預貯金なども組み合わせてのんびり生活する方が、日々の満足度は高まります。
お金のかからない趣味を持つ
私は現在、自宅の近くに土地を借りて家庭菜園を楽しんでいます。良い運動になりますし、季節に合わせて多種多様な野菜を育てているので、スーパーなどで買うことはほとんどなし。食費の節約にもなっています。かつ、家庭菜園はお金もそれほどかかりません。こういったお金のかからない趣味を持つと、長く楽しみやすいのではないでしょうか。
都市部ならリバースモーゲージを検討
老後資産が足りない場合は、自宅を活用する手段があります。一つは自宅を担保に生活資金の融資を金融機関から受け、死亡時に売却して清算する「リバースモーゲージ」。もう一つは自宅を売り、その家を借りる「リースバック」です。資産価値のある自宅なら、これらの手段で資金を得られます。
可能なら住民税非課税になる
年間の所得が一定以下になると、介護保険料が軽減されたり、医療費の高額療養費制度の上限負担額が小さくなる「住民税非課税世帯」になる可能性があります。コロナ禍では臨時特別給付金の対象になりました。年金受給開始時期を繰り上げて受給額を減らすなど、収入を調整することで、こういった制度の対象になることもあります。非課税になる所得額は自治体ごとに異なります。くわしくは市区町村窓口で確認を。