ウォーキングは歩数より歩き方! 74歳の医師・鎌田實さんが実践する「何歳になっても歩ける体作り」

定期誌『毎日が発見』で好評連載中の、医師で作家の鎌田實さん「もっともっとおもしろく生きようよ」。今回のテーマは「ウォーキングは歩数よりも、歩き方!」です。

「イマイチ効果がない」理由

今年4月、日本医学会連合を中心とした80団体が「フレイル・ロコモ克服のための医学会宣言」を発表しました。

そのなかで、「80GO」(ハチマルゴー)を提唱し、80歳になっても歩いて外出することを目標に掲げています。

何歳になっても「歩ける体」を作ることが、健康にとって大切ということです。

ウォーキングはいつでも、だれでも取り組みやすい運動です。

長野県茅野市では40年近く前から「歩け歩け運動」を行いました。

各地域にも広がり、長野県が健康長寿県になったのも、ウォーキングが一役買っていると思います。

しかし、一方で「イマイチ効果を実感しにくい」という声も聞かれます。

そういう人にどんな歩き方をしているか聞いてみると、犬の散歩を兼ねていたり、街中を漫然と歩いているという話でした。

まったく歩かないよりもいいですが、これではあまり運動効果は期待できません。

反対に、歩数にこだわって一日1万歩以上歩いているという人もいました。

歩けば歩くほどいいと、がんばりすぎているのです。

ウォーキングの効果は、8000歩までは歩数に比例して高くなりますが、8000歩を超すとそれほど高まらないといわれています。

むしろ、がんばりすぎは三日坊主の原因になりますし、膝や腰などに問題が起こりやすくなるので注意が必要です。

歩き方のポイントは「速さ」と「歩幅」

では、どうしたら効果の高いウォーキングができるのでしょうか。

今、ウォーキングをしている人は、二つのポイントを意識して、少しだけ歩き方を変えてみましょう。

一つ目は歩く「速さ」です。

80歳で目標とする歩行スピードは10秒で11m。

この速さを下回る人は10年後に要介護になる可能性が高いとされています。

どの程度の速さがいいかは、年齢や体力などで異なりますが、だいたい「走り出す手前の、急ぎ足の速さ」がいい。

比較的きつい運動なので長時間は続けられません。

あとで述べる鎌田式速遅歩きの基本は、速歩きを3分したら、次の3分で遅歩きをして、弾んだ呼吸を整えるというのを繰り返します。

だから、続けやすいのです。

二つ目は「歩幅」。

歩幅を大きくして歩くと、下半身の筋肉がより刺激され、腕も大きく振るので、全身運動になります。

東京都健康長寿医療センターの研究では歩幅の広い人よりも、狭い人のほうが認知症の発症リスクが約3倍になったと報告しています。

女性の場合はさらに差が大きく、5.8倍になったそうです。

この「速さ」と「歩幅」を意識して歩くと、漫然とした散歩が、運動のためのウォーキングへと生まれ変わります。

生涯現役を目指す「鎌田式ウォーキング」

ぼくは「亡くなる直前まで、日帰り温泉やおいしいものを食べに行ける体を作ろう」と呼び掛けてきました。

そのための健康法として、ウォーキングは重要です。

前述した二つの歩き方のポイントをおさえ、「鎌田式ウォーキング」を考案しました。

そのなかの一つ「スタートアップ速遅歩き」を紹介しましょう。

あまり時間をかけずに歩けるので、忙しい人やせっかちな人にもおすすめです。


スタートアップ速遅歩き

(1)幅広歩行1分。歩幅を今より5~10cm大きくして歩きます。

ウォーキングは歩数より歩き方! 74歳の医師・鎌田實さんが実践する「何歳になっても歩ける体作り」 2212_P141_01_W500.jpg

(2)ピッチ歩行1分。ふつうの歩幅に戻し、競歩のように足の回転数を上げて歩きます。

ウォーキングは歩数より歩き方! 74歳の医師・鎌田實さんが実践する「何歳になっても歩ける体作り」 2212_P141_02_W500.jpg

(3)ゆっくり歩き1分。腹式呼吸をして呼吸を整えながら、ゆっくり歩きます。季節や風を感じながら歩きます。

ウォーキングは歩数より歩き方! 74歳の医師・鎌田實さんが実践する「何歳になっても歩ける体作り」 2212_P141_03_W500.jpg

(4)再び幅広歩行1分。

ウォーキングは歩数より歩き方! 74歳の医師・鎌田實さんが実践する「何歳になっても歩ける体作り」 2212_P141_04_W500.jpg

(5)ピッチ歩行1分。

合計5分間が1セットです。

ウォーキングは歩数より歩き方! 74歳の医師・鎌田實さんが実践する「何歳になっても歩ける体作り」 2212_P141_05_W500.jpg


通勤の駅までの時間や買い物に行くとき、いつものウォーキングの歩きはじめに、やってみてください。

慣れてきたら2~3セットやりましょう。

4セット20分ならさらに効果は大。

毎日続けると、血圧が下がり、メタボが少しずつ改善します。

ぼくは体重が8キロ落ち、上の血圧が140から120へと安定しました。

一時期飲んでいた不整脈の薬も要らなくなり、睡眠薬に頼らず眠れるようになりました。

こうしたウォーキングの方法を『奇跡の鎌田式ウォーキング』(家の光協会)にまとめました。

基本の歩き方や体質改善を目指した歩き方、動的ストレッチをしながらの回旋ウォークなど6種類を紹介しています。

高血圧や糖尿病、フレイル、認知症予防に

ウォーキングは、高血圧や糖尿病、脂質異常症など生活習慣病の予防効果が知られています。

もちろん、高齢になって要介護につながるフレイル(虚弱)になるのも防いでくれます。

認知機能の低下や認知症の予防にもウォーキングはおすすめです。

ウォーキングをすると脳由来神経栄養因子(BDNF)という物質が脳の中で盛んに分泌され、神経結合を増やし、思考や感情にかかわるドーパミンやセロトニン、ノルアドレナリンといった神経伝達物質の分泌を促し、認知能力を強化してくれるのです。

歩くことは、人間らしさにもかかわっています。

700万年前、ぼくたちの先祖は直立二足歩行になりました。

それにより、自由になった手を使うことができ、脳が大きく発達したのです。

写真/鎌田 實
 

<教えてくれた人>
鎌田 實(かまた・みのる)さん

1948年生まれ。医師、作家、諏訪中央病院名誉院長。チェルノブイリ、イラクへの医療支援、東日本大震災被災地支援などに取り組んでいる。『だまされない』(KADOKAWA)など著書多数。

■「認知症予防」をもっと詳しく知りたい人は!

81QzvVsK7xL123.jpg

「図解 鎌田實医師が実践している 認知症にならない29の習慣(朝日出版社)

今回、鎌田先生が紹介してくださった「認知症予防」が詳しく解説されている最新刊! 医学的に正しい認知症予防の方法が、豊富なビジュアルとともに紹介されています。
「速遅(はやおそ)歩き」「青魚、えごま油、高野豆腐を食べる」「新聞から4つの単語を選ぶ」など、無理なく日常生活で実践できる習慣がわかりやすく解説されています

この記事は『毎日が発見』2022年12月号に掲載の情報です。
PAGE TOP