意外と盲点!? 「自宅で長く暮らす」にも「住み替えする」にも知っておきたい3つのこと

定期誌『毎日が発見』の読者アンケートで、これからの住まいについて350人にお聞きしたところ、約8割の人がいまの自宅に住み続けたいと回答されました。一方で、約9割の人がその自宅に問題があると考えているようです。そこで今回は、終の住処 設計企画 終の住処コンサルタントの田中 聡(たなか・さとし)さんに、「自宅で長く暮らすコツ(住まい編)」についてお聞きしました。

【前回】いまの住まいで長く暮らすためには?元気なうちにやっておきたいこと

自宅で長く暮らすコツ【住まい編】

断熱リフォーム

温度差をなくして体にやさしい家に

冬の寒さ対策も忘れずに行いたいものです。

屋内の温度差が原因のヒートショック(※)を予防するには、温度のバリアフリーが重要です。

断熱リフォームの前後で血圧の変化を調べた実証実験では、居室を暖かく保つと血圧上昇を抑えられたという結果に。

「室内の熱の大半は窓から逃げてしまうため、内窓をつけるのが一般的な断熱リフォームです。長い時間を過ごす居間の窓に施すだけでも有効で、補助金制度もあります。断熱リフォームは、冷暖房の効果も上がるため環境にやさしく、経済面からもおすすめです」(田中さん)

リフォームが難しいときは、カーテンを厚手のものにするといった工夫も効果的です。

※急激な温度変化によって血圧が変動し、心臓や血管の疾患が起こること。

断熱リフォーム前後の起床後血圧上昇の比較

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協力者52人のリフォーム前と後の起床後血圧上昇*を測定し、その平均を比較したところ、リフォーム前に起床後血圧上昇が強く見られた人は、リフォーム後に上昇が抑制された。

*起床後2時間の平均収縮期血圧から睡眠中最低値と前後30分の平均収縮期血圧を引いて算出したもの
出典:「住まいの暖かさが高齢者の健康に好影響!!」(健康長寿住宅エビデンス取得委員会発行)

《補助金をうまく活用》

全国を対象とした断熱リフォーム支援事業があります。居間の窓だけでも利用できます。

●居間だけ断熱(窓+玄関ドアなど)
補助対象経費の1/3以内(上限120万円)

●トータル断熱
(断熱材、窓、ガラス+玄関ドアなど) 
補助対象経費の1/3以内(上限120万円)

*いずれも戸建ての場合で諸条件あり。

詳しくは(公財)北海道環境財団補助事業部 011-206-1573

火を使わない

エコで経済的安心安全な最新機器

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忘れっぽくなると心配なのが火の元です。

IHのコンロなら火災の心配がありませんが、ガスの方が慣れている、停電時に困るという意見も。

「2009年10月から、調理油過熱防止装置や立ち消え安全装置といった安全のための装備がないガスコンロは販売できなくなりました。それ以前に購入したものなら、新しいものに買い替えるだけで、ガスコンロでも安全性が増します」(田中さん)

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また、石油ストーブなどの火を使う暖房器具は、できればパネルヒーターなどに交換を。

暖房器具に限らず、家の設備は最新のものにすると省エネにもなり、経済的です。

安全面でいうと、防犯も気がかりでしょう。

最近は、防犯や見守り用に性能の高いカメラが多く販売されています。

価格も安くなっているので、家の外部には防犯用、室内には遠方の家族と会話ができるタイプのカメラをうまく使うと安心材料が増えます。

住み替え

どんな住み替えにも良しあしがある

まず覚えておきたいのは、自宅を安易に売らないこと。

住み慣れた環境から離れるのは覚悟が必要です。

一般的な住み替え例として、以下の3つの選択肢が挙げられますが、どの住み替えにもメリットとデメリットがあります。

「小さい中古住宅に住み替える場合、いまより便利な場所、日当たりがいい、1階で全て完結できる間取りならいい住み替えになります。集合住宅は、戸建てより防犯の優位性はありますが、戸建てでは必要なかった経費がかかることもあります」(田中さん)

最近移住に力を入れる自治体が増え、地方への移住は選択肢も増えています。

ただ、成功例に惑わされず、失敗例も要チェック。

車の運転ができなくなっても快適に生活できるかなど、しっかり確認を。

住み替えのメリットとデメリット

小さい中古戸建て

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メリット
・独立性が保てる
・自由にリフォームできる

デメリット
・収納スペースが少なくなる
・セキュリティ面が心配
・古い物件の場合、耐震性・断熱性に問題があることも

集合住宅

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メリット
・ワンフロアで生活が完結
・断熱性が高い
・セキュリティが高い

デメリット
・収納スペースが少ない
・管理費や積立金など、毎月の出費が多い

地方へ移住

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メリット
・自然が豊かなところで、ゆとりをもって暮らせる

デメリット
・利便性が悪い可能性があり、場所によっては車がないと生活できない
・病院の数が限られている

施設という選択肢

入居を迷うならやめるべき

ケアハウス/特別養護老人ホーム/有料老人ホーム/サービス付き高齢者向け住宅

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高齢者向けの施設にはさまざまなタイプがありますが、どの施設でも入居にあたって注意したいのは「入るのは簡単でも出るのは難しい」ということです。

入居した施設の居心地が悪くても、新たな行き場所は簡単に見つかりません。

まして自宅を処分して入居権利金を準備したとしたら、金銭的な負担も大きいものになってしまいます。

「もし、入居を迷っているなら、やめておいた方がいいでしょう。入居の決め手は、寂しいと感じているかどうかです。また、1カ月程度の体験入居もおすすめです」(田中さん)

読者の私はこうしています
いまの自宅の周辺環境はとてもよいので動けなくなるまでは住み続けるつもりですが、夫婦のどちらかが動けなくなったり、亡くなったりしたら老人ホームへ行くつもりです。(63歳・女性)

取材・文/石井信子 イラスト/カトウミナエ

 

<教えてくれた人>

終の住処 設計企画 終の住処コンサルタント
田中 聡(たなか・さとし)さん

一級建築士、介護福祉士、福祉住環境コーディネーター1級。大手ハウスメーカー勤務、介護施設の施設長などを経て現職に。著書に『施設に入らず「自宅」を終の住処にする方法』(詩想社新書)がある。

この記事は『毎日が発見』2022年10月号に掲載の情報です。
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