ひどい痛みで指が曲がらない、関節が太くなった、指の形がおかしい...。それらの症状、もしかしたら「へバーデン結節」かもしれません。患者数350万人以上とも言われる「へバーデン結節」ですが、原因自体はまだ解明されておらず、手指の痛みをそのままにしてしまっている人も少なくないそう。そこで今回は、麻酔科医・富永喜代先生による著書『全国から患者が集まる麻酔科医の へバーデン結節・手指の痛みの治し方』を紹介。具体的な症状や対処方法、自分でできる痛みをやわらげる治療メソッドなど解説していきます。
※本記事は富永喜代著の書籍『全国から患者が集まる麻酔科医の へバーデン結節・手指の痛みの治し方』から一部抜粋・編集しました。
【最初から読む】ひどい手指の痛み...もしかして「ヘバーデン結節」かも? 痛みを和らげる方法をチェック
10秒神経マッサージはへバーデン結節外来のプロセスの一環にもなっています
私のクリニックのへバーデン結節外来を受診するみなさんは、どのようなプロセスで治療していくのか、おおまかな流れを紹介します。
まずは、初診では問診から。
「いつから痛いか」「どのくらい痛いのか」「首や肩の不調はあるか」「手指を酷使する仕事か」「飲んでいる薬はどうか」などを聞き取っていき、患者さんの現在の状況をしっかりと把握します。
問診が終わったらブロック注射治療や近赤外線治療を施し、「10秒神経マッサージ」のやり方をレクチャーします。
へバーデン結節外来では、このマッサージをご自宅で毎日行っていただくことが、治療の大切なプロセスのひとつ。
そこで自分一人でも行えるよう、押し方や強さ、手順などを丁寧に指導します。
このときに、その場で指の痛みがやわらいだことに驚かれる人もたくさんいます。
また、へバーデン結節外来はオンライン診療での受診もできます。
オンライン診療は、スマートフォン・パソコンを使って1週間ごとに受診していただき、ご自宅に郵送で薬が届きます。
保険も適用できるので、遠方で通院が難しい方は利用してください。
へバーデン結節外来での治療の流れ
直接来院、オンライン診療ともに可能
問診
最初に患者さんの状態を確認します。痛みのレベルや頻度をはじめ、既往歴や合併症、飲 んでいる薬などもチェック。首のトラブルがないか、普段の手指の使い方も聞き取ります。
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「10秒神経マッサージ」のやり方を指導
自分一人でも行えるよう、手順ややり方をレクチャーします。しっかり効果が得られるように、刺激するポイントや強さなどを伝え、コツを覚えていただきます。
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神経ブロック注射・薬の処方
首・肩の神経が走っている部分に、神経ブロック注射を施します。これによって「痛みの通り道」をブロックするほか、状態によっては痛み止めなどの薬を処方するケースも。
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自宅で朝晩2回、「10秒神経マッサージ」を行う
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外来を再診(2~4回)
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症状により期間は異なるが完治を目指す
10秒神経マッサージを行うとなぜつらい痛みが改善するのでしょうか
へバーデン結節の痛みの症状を改善させるために考案したのが「10秒神経マッサージ」。
これは、手指の表面近くを通っている神経ポイントに10秒間刺激を加える、という方法です。
このメソッドを実行することで、多くの患者さんが実際に痛みを軽減できたのはなぜでしょうか?
その仕組みをご説明しましょう。
そもそも指先がしつこく痛むのは、痛みの「悪循環ルート」のせい。
「痛みが指の関節や筋肉を硬くし、血管を収縮させてしまう」→「血流が悪くなるため、酸素や栄養分が体に届かなくなる」→「患部の組織が痩せて硬くなり、痛みがますます強まる」という負のスパイラルができあがってしまっているのです。
ところがこのマッサージで神経ポイントに刺激を与え、痛みをやわらげることで、痛みの悪循環を断ち切ります。
痛みがやわらぐと関節や筋肉がゆるみ、血行も回復して、痛み物質も洗い流されていきます。
負のスパイラルから、痛み解消へと向かう道筋が作られていくのです。
10秒神経マッサージ3つの特徴
1.痛みの専門医が考案した独自のマッサージ
ペインクリニックで長年、多くの方々の手指の痛み、しびれを診察してきました。その経験をもとに、瞬時に痛みをやわらげる方法として独自に考案したのが「10秒神経マッサージ」です。そして"いつでも、どこでも、誰でも簡単に痛みをコントロールできるセルフケア"という点にもこだわりました。
2.マッサージの効果を手指の痛みやしびれに応用
体の痛い部分に手を当ててさすると、痛みがやわらぐのは科学的にも証明されています。皮膚をさすると皮膚表面の神経から脳に「心地いい」という情報が伝わります。さらに力を入れて揉むと、筋肉の緊張がほぐれ、血行がアップしてリラックス効果が得られるというマッサージの効果に着目しました。
3.痛みをやわらげる「神経ポイント」の発見
筋肉や関節を動かす運動神経と、痛みを伝える知覚神経。手指にはこの2つの神経が、体の表面から浅い位置で並行して走っているポイントがいくつかあります。それを「神経ポイント」と名付けました。ここを刺激することで、運動神経と知覚神経に同時にアプローチすることができるのです。