9月1日は「防災の日」! 災害への備えで注意すべき点は? 防災グッズの「点検のポイント」を解説

9月1日は「防災の日」。台風の季節でもあるこの時期に、防災リュックの点検をしておこうという人も多いのではないでしょうか。そこで今回は、ソナエルワークス代表で備え・防災アドバイザーの高荷智也(たかに・ともや)さんに、「災害への備え」についてお話を伺いました。


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関東大震災(1923年)が起こった9月1日は、「防災の日」に制定されています。

台風の季節でもあるこの時期に、防災リュックの点検をしておこうという人も多いのではないでしょうか。

備え・防災アドバイザーの高荷智也さんは、私たちが防災リュックを点検する際のポイントとして「意外と多いのが、防災リュックにいろいろ詰め込み過ぎて、いざ避難するときに重過ぎて背負えなかったという例です」と指摘。

さらに、「防災リュックは背負った際に走れる、あるいは楽に移動できる重さにしておくことが大切です」と続けます。

また、下に示したように防災リュックとは別のカバンや車輪付きのキャリーバッグを用意して小分けにしておくことや、薬や歯ブラシなど体調を守るためのグッズを用意しておくことも大切です。

高荷さんは「加えて、防災グッズを買ってすぐに防災リュックに入れるのではなく、開封して一度は使ってみることも必要です」と話します。

「未開封のままだと、防災グッズを使用しなければならなくなったときに、実は電池が必要なのに入っていなかったことに気付いたり、電池を入れるためにドライバーなどの工具が必要だったり、ということも実際に起こっています。防災グッズを購入したら必ず開封して、必要なら電池も入れて、使い方を確認しましょう」(高荷さん)

防災グッズの点検を行った際、足りないものや古いものがあれば補充するはず。

「実は最近、防災グッズも便利に進化しているんですよ」と、高荷さん。

そんな高荷さんが特におすすめするのが、下で紹介している持ち運び可能なポータブル電源や太陽光発電が可能な小型のソーラーパネル、かつての「乾パン」などとは違っておいしくて機能的な非常食、そしてスマートフォンです。

高荷さんは「ポータブル電源とソーラーパネルがあれば、避難生活中に扇風機を使うことが可能です。飲料水や濡らしたタオルと組み合わせれば、暑さ対策に有効です。また、地震や水害によって直接死亡することはなくても、避難生活で衰弱して病気を発症し、それが原因で『災害関連死』になってしまうことも問題視されているのですが、おいしくて食べやすい非常食があれば体力の維持に役立ちます」と説明。

さらにスマートフォンについては、「苦手意識のある方は無理に使わなくても問題ありませんが、あると便利なのも事実です。苦手意識のない方は、うまく活用してもらえれば」と話します。

このように進化している防災グッズ。

高荷さんは「防災の日を機に防災リュックの中身を点検することはもちろんよいことなのですが、点検のタイミングとしてよりおすすめなのは、5月頃です。その時期なら、台風シーズンを前に一斉に買い求めるという人も少ないため、防災グッズの売り切れも起こりにくいです」と呼びかけています。

ただし一方で、高荷さんは「防災グッズを準備することは確かに大切なのですが、最も重要なのは災害直後に命を守る準備です」とも。

家具の固定、ハザードマップや避難場所の事前確認なども、忘れずに行っておきたいですね。

防災リュック 点検のポイント

リュックの重さは体力に合わせて

背負える防災リュックの重さは、体力によって決まります。

「毎年一度は背負ってみて、もし重たく感じるようなら中身を減らすか、車輪付きのキャリーバッグなどを別に用意するという方法も検討してみてください。体力に合わせて年々中身を減らすことが大切です」と、高荷さん。

特に防災リュックの重量の大部分を占めるのが、水と食料。

「水と食料は1日分の用意が目安とされていますが、1日に必要な水は3L。背負って避難するのは難しい重さです。ですので、防災リュックには500ml入りのペットボトルの水を3本程度にして、残りは予備のバッグに入れておけばよいでしょう。重ければ避難時に捨てればいいのです」(高荷さん)

薬なども毎年更新

「持病のある方は、薬も毎年入れ替えるようにしましょう」と、高荷さん。

さらに、「眼鏡や入れ歯、杖にサポーター、補聴器なども古いものを予備として防災リュックに入れるようにしましょう。

新調した場合は、それまで使用していたものをリュックへ移すとよいです」と、話します。

口腔ケアも忘れずに

実は、歯ブラシや歯磨き粉の用意も重要だといいます。

「歯磨きができず、歯周病菌を飲み込んでしまい、それが原因となって誤嚥性肺炎にかかってしまうケースがあるのです」と、高荷さんは注意を促します。

最新の防災グッズってどんなもの?

持ち運べる電源とソーラーパネル

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最近は持ち運び可能なポータブル電源も販売されています。さらに「太陽光発電ができる小型ソーラーパネルも売られているので、併用するとよいでしょう」と、高荷さん。二つ合わせて、小型だと5万円前後で入手できるものがあります。

実はスマホも防災グッズ!

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「ある意味ではスマートフォンこそが最も進化した防災グッズです」と、高荷さん。電話回線が使えなくてもインターネットを経由して家族の安否確認や情報収集を行ったり、罹災証明などに役立つ被災後の自宅の写真撮影をしたりと、便利に活用できます。

おいしくて機能的な非常食

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避難時には体力が必要で、それを支えるのは食事です。「最近の非常食はとてもおいしい上に、かむ力が弱い人や幼児向けに、かまずに飲めるゼリー状のものもあります。平常時に一度試してみて、好みのものを備えておきましょう」(高荷さん)

取材・文/仁井慎治 イラスト/やまだやすこ

 

<教えてくれた人>

ソナエルワークス代表 備え・防災アドバイザー

高荷智也(たかに・ともや)さん
1982年生まれ、静岡県出身。「備え・防災は日本のライフスタイル」をテーマに、「自分と家族が死なないための防災対策」のポイントを論理的に解説する専門家。講演、執筆、メディア出演の実績も多数。

この記事は『毎日が発見』2022年9月号に掲載の情報です。
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