2019年も災害が多発。集中豪雨による堤防の決壊で、一帯が浸水してしまった映像は記憶に新しいと思います。「四季の国・日本」とは無縁の異常気象に、不安を感じている方は多いでしょう。集中豪雨、台風、地震と立て続けに災害が起きている現在、気象やインフラ整備はどうなっているのでしょうか? 今回は「災害時の逃げ遅れの原因」について防災システム研究所所長 山村武彦先生にお話を伺いました。
"今日大地震が起こっても大丈夫"の訓練
いつでも避難するクセをつけましょう
ここ数年、過去にはなかった災害が頻繁に起こっています。
しかし日本は明治~1995(平成7)年、100人以上の犠牲者を出した地震は19回も発生し、台風は年に3~4回上陸。
火山は全世界の10%が日本にあり、そもそも災害列島なのです。
過去の地震津波災害
※1 地震の規模(マグニチュード)、ただしチリ地震津波はモーメントマグニチュード。
※2 1921年以前の地震の震度については気象庁の震度データベースには収録されていない。
出典:明治以降1995年までに100人以上の死者・行方不明者を出した地震・津波(気象庁、2019年)
「2016(平成28)年、熊本地震が起こりましたが、当時の地震調査研究推進本部では、熊本で活断層が動く可能性は30年以内に0~0.9%といわれていたものの、発生したのです。
首都直下型地震は30年内に70%の発生確率といわれ、いつ起きてもおかしくないのに、講演で今日地震が起きるか聞くと皆さん、今日は起こらない、先のことと答えます」と山村先生。
また災害で逃げ遅れるケースが後を絶ちませんが、それは前回の災害でも大丈夫だったから今回も大丈夫だろうと、都合の悪い情報を受け容れない「正常性バイアス」が原因といいます。
「前回大丈夫だから今回も安全なんてありません。正常性バイアスに陥っていないか、日ごろから自問自省すること。小さな揺れでも大丈夫とリスクを過小評価せずに、避難するクセをつけてください」(山村先生)
【正常性バイアスとは】
近い将来、大地震の発生確率が高いと言われても、現在の正常な状態がずっと続くと思い込んでしまっている。自分に都合の悪いことを受け容れない心的傾向。
取材・文/中沢文子