【カムカムエヴリバディ】初週から「白飯+味噌汁」のような安心感! だからこそ新鮮に映ったのは?

毎日の生活にドキドキやわくわく、そしてホロリなど様々な感情を届けてくれるNHK連続テレビ小説(通称朝ドラ)。毎日が発見ネットではエンタメライターの田幸和歌子さんに、楽しみ方や豆知識を語っていただく連載をお届けしています。今週は「初週を終えたカムカムエヴリバディ」について。あなたはどのように観ましたか?

※本記事にはネタバレが含まれています。

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ラジオ英語会話を軸に、朝ドラ史上初の3世代ヒロインが駆け抜けた100年の人生を描く、藤本有紀脚本のNHK連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』が11月1日にスタートした。

物語は、日本のラジオ放送がスタートした1925年3月22日、岡山の和菓子屋「たちばな」に初代ヒロイン・橘安子(上白石萌音)が誕生したところから始まる。

長い物語の幕開けを英語ナレーションで告げ、その文章が朝ドラ連動のラジオ語学番組『ラジオで!カムカムエヴリバディ』のテキストに掲載された文と同じというのは、なんて粋な演出なのだろう。

しかし、そこから始まったのは実に朝ドラらしい、温かく優しく明るい物語だった。

まずは、明るく健やかなヒロイン像。

厳格だが、ヒロインにだけ甘い祖父(大和田伸也)と、しっかり者の祖母(鷲尾真知子)、真面目な父(甲本雅裕)、優しい母(西田尚美)、やんちゃな兄(濱田岳)、たくさんの職人たちに囲まれた環境。

くつくつ煮た美味しそうなあんこと、温かな食卓。

その時点で「朝ドラはこうでなきゃ」という声がネット上には沸いていた。

そしてラジオがとある騒動を経て、家庭に導入され、馴染んでいく中、和菓子好きの安子は和菓子職人になりたいと考え始めるが、「おなごだから」と諭され、一方で跡継ぎの兄は夢を追いかけて家を出る。

子役(網本唯舞葵)がたった2日で本役の上白石に代わったのには驚いたが、そこから物語はますます安定感を見せ始める。

将来への夢は特になく、日々家業を手伝う14歳の安子は、自身の人生に大きな影響を与える大切なモノとの出会いをいっぺんに果たす。

それは幼馴染・勇(村上虹郎)の兄で雉島家の跡取り・稔(松村北斗)と、彼をきっかけに興味を抱いたラジオ英語講座だ。

まるで鴨が葱を背負ってやってきたかのような(?)理想的出会いであり、英語そのものへの関心という「内的動機」と初恋という「外的動機」により、毎朝熱心にラジオ英語講座を聞き始める安子。

初めての喫茶店で初めてのコーヒーを知ったのも、初めて自転車に乗れるようになったのも、全て恋が原動力となる安子が可愛らしい。

「甘いモノとオシャレが好きな普通の女の子」という描き方に、眉をひそめる人もいるだろう。

しかし、昭和初期には普通のことであり、学生でも勤め人でもなく、普通に家業を手伝うヒロインは逆に最近の朝ドラでは新鮮に映る。

可愛いワンピースに前掛けをかけて野道を歩く安子の姿に、つい目を細めてしまう視聴者も多いだろう。

長い歴史の中で数々の挑戦を続けてきたからこそ、今もなお愛され続けている朝ドラ。

しかし、本作は久しぶりに"白飯+味噌汁"のような「毎朝の安心感」がたくさん詰まった作品かもしれない。

文/田幸和歌子

 

田幸和歌子(たこう・わかこ)
1973年、長野県生まれ。出版社、広告制作会社を経て、フリーランスのライターに。ドラマコラムをweb媒体などで執筆するほか、週刊誌や月刊誌、夕刊紙などで医療、芸能、教育関係の取材や著名人インタビューなどを行う。Yahoo!のエンタメ公式コメンテーター。著書に『大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた』(太田出版)など。

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