大和いもや長いも、自然薯などさまざまな呼び名がある山のいも。栄養が豊富で、疲労回復や胃腸を整えるのに役立つ上に、いろいろな料理で楽しめるのが魅力です。今回は、管理栄養士で料理研究家の村上祥子さんに「山のいもの基礎知識と山のいもを使ったレシピ」について伺いました。
日本では、さつまいもやじゃがいもがなかった時代、いもといえば山のいもを意味しました。
現在は栽培作物として発達したものを総称して「山のいも」と呼びます。
大和いも、長いも、いちょういも、自然薯、大薯など、さまざまな呼び名があり、農林水産省は自然薯、長いも、大薯の三種を山のいもとしています。
山のいもは栄養が豊富で、その効果は漢方薬にも用いられるほど。
とくに夏の暑さで疲れた体を労わり、疲労回復や胃腸を整えるのに役立ちます。
一年を通して購入することができますが、出荷が増えるのは7月や8月。
生と加熱したときでは食感も違うので、いろいろな料理で楽しめるのも山のいもの魅力です。
アミラーゼが消化を促進
生で食べられるいも類は世界的に見ても珍しく、これは消化酵素・アミラーゼ(ジアスターゼ)が含まれ、消化を手助けするので胃もたれなどを防ぐおかげです。アミラーゼは唾液にも含まれている成分で、他には大根やかぶにも含まれています。
胃腸に優しい滋養食
山のいものぬめり成分は、胃腸を保護してたんぱく質の消化吸収を助けてくれます。胃腸に優しい食材なのです。ぬめり成分は水溶性食物繊維のため、食後の血糖値の上昇を緩やかにする働きも期待できます。
カリウムが豊富
山のいもにはカリウムが豊富に含まれています。このため、ナトリウムを排出して血圧の調整に働くのはもちろん、利尿作用もあるので、夏に生じやすいむくみの改善にも働きかけます。とくに生で食べられるので、ロスなしにカリウムを摂取できます。
食物繊維で美肌に
食物繊維が豊富で、腸内環境を整えるのに役立ちます。腸内環境が整うと便秘改善や美肌が期待できるだけでなく、さまざまな生活習慣病の予防にも役立ちます。また、ダイエット中の人にもおすすめの食材です。
加熱するとホクホク
すりおろすとトロトロ、生だとサクサク、加熱するとホクホク――。山のいもは調理次第でいろいろな食感が楽しめます。主成分のでんぷんは加熱されることで食感や味わいが多様に変化するからです。
山のいもいろいろ
市販されている山のいもには、いくつか種類があります。
ほとんど栄養成分は同じですが、食感やカロリーに少し違いがあります。
代表的な山のいもをご紹介します。
価格にも差があるので、お好きな山のいもを料理に活用してみてください。
今回のレシピでは、長いもを使っているものが多いですが、お好みの山のいもでも作れるものもあります。
長いも
粘りけは比較的サラリとしていてほどよく、生で、せん切り、すりおろす他、加熱してなど、さまざまな調理に向いています。価格も安定していて比較的リーズナブル。
●100gあたり64kcal
大和いも
長いもに比べると水分が少なく、粘りが強いのが特徴。すりおろして食べるのに向いています。揚げ物やすり身のつなぎにも使われます。
●100gあたり119kcal
つくねいも
ごつごつしていて丸いもの、長いもの、短形のものなど、形はいろいろです。粘りけもアクも大和いもよりもさらに強いのが特徴。すりおろしたり揚げる調理に向いています。
●100gあたり119kcal
《冷凍が便利》
せん切りや輪切りにして冷凍することもできますが、すりおろした山のいもを冷凍しておくととても便利です。保存用のビニール袋に小分けにしたり、製氷皿に入れて冷凍します。そのまますぐに使えます。
扱い方
□選び方
ずっしりと重く、ひげ根が多いものが良品。乾燥に弱いので真空パックやおがくずに入っているものの方が保存状態は良いです。
□皮は厚めにむく
アクがあるので、皮は少し厚めにむくのがコツ。皮ごと使う場合は周りに生えているひげ根は、ガスの炎で焼き切るとキレイに落とせ、アクも減少します。調理法によってはじゃがいもなどと同様に皮ごと使ってもおいしくいただけます。
□保存方法
水けや光に当たると傷みやすいので、なるべく早く使うのがベスト。使いかけの場合や真空パックに入っていないものは新聞紙にくるんで野菜室へ。泥つきは泥を落とし、乾かしてから野菜室に。
□酢水には短時間浸ける
皮をむくとポリフェノールの働きにより、褐色に変化します。気になるようなら酢水に浸けますが有効成分が溶け出るので、なるべく短時間にします。
□かゆみ対策
手がかゆくなるのは、皮の近くにあるシュウ酸カルシウムのせい。かゆみ対策としては、手のひらに酢をつけてこすり合わせるとかゆみがおさまります。