定期誌『毎日が発見』で好評連載中の、医師・作家の鎌田實さん「もっともっとおもしろく生きようよ」。今回のテーマは「"年甲斐もない"生き方のすすめ」です。
雪がある間は大好きなスキー!
「目標70日」を目前に、アクシデント
今年の冬は、コロナ自粛でどこへも出かけられないこともあって、大好きなスキーを思い切り楽しみました。
スキー場ではほとんど3密はなく、通常は複数人が乗るゴンドラも一人乗り。
朝いちばんで山頂に上がり、3キロのダウンヒルを3本滑るという毎日を続けていました。
シーズンの初め、65日滑ろうと目標を決めました。
その目標を達成し、切りのいいところで70日を目指していたところ、後ろから来たスキーヤーと接触。
僕のスキー板ははずれ、空中に放り出されたようです。
顔面から着地し、気が付いたときには、なぜ、スキー場にいるのかわかりませんでした。
一過性の逆行性健忘です。
額あたりも内出血で赤くなりました。
4日後に、吉永小百合さんとの対談がありました。
当然、写真撮影もあるので、しまった!と思いました。
このことをブログに書くと、何人かの方からお見舞いの電話をもらいました。
内科外来でも、付き合いの長い患者さんから、心配されました。
そのときにみんなが口々に言ったのは、「先生、もういい年なんだから...」「年甲斐もなくがんばりすぎてはダメ」。
たしかに僕は70歳を超えました。
でも、年相応に生きようなんて、今まで一度も考えたことはありません。
むしろ、「いい年をして」「年甲斐もなく」は、僕にとっては褒め言葉です。
ちなみに、吉永さんとの対談は、事情をお話しし、帽子を目深にかぶり、大きめの眼鏡をかけてしのぎました。
考え方によっては、こんなケガができるのも、好きなことに夢中になって、活動しているからこそ。
子どものころはよく膝小僧にすり傷をつくっていましたが、70代になってもすり傷だらけというのも、いいものだなと自分では思っています。
ちょっと前置きが長くなりましたが、今回は、年甲斐もなく生きるためのポイントをいくつか挙げてみましょう。
その一、中高年は"肉食"でいこう
常々、健康のために野菜を一日350g食べようと言っています。
野菜ジュースや具だくさん味噌汁などで工夫して、野菜たっぷり生活を送っています。
しかし、これだけでは草食男子になってしまいます。
目指しているのは肉食系中高年。
85歳になっても90歳になっても好奇心をもって活動的に動ける体をつくるには、筋肉や骨をつくるタンパク質をしっかり取ることが重要です。
厚生労働省は、フレイル(虚弱)予防のために高齢者に一日60gのタンパク質をすすめていますが、僕は70~80gを目標にしています。
一日3食のうち、2食は肉、1食は魚と決めています。
たとえば、鶏肉の炒め物、豚の生姜焼き、塩サケ、アジなどは大まかに計算して、100gでタンパク質が20gなので、これらを一日3食取ると60g。
さらに卵(1個のタンパク質は約6g)を2個、牛乳(200㏄でタンパク質6g)を1杯。
これらを合わせると78gのタンパク質が取れるという計算です。
さらに、納豆やヨーグルトなどを食べれば、完ぺきです。
その二、「腸」を美しく
腸が元気だと、体調が整い、肌も若々しく見えます。
そして、コロナの今、自然免疫力を上げるためにも、腸の健康はとても重要です。
大切なのは、食物繊維と発酵食品です。
食物繊維は、野菜やキノコ、海藻、寒天などにたっぷり含まれています。
旭松(※)の「なめらかおからパウダー」は食物繊維はもちろん、タンパク質も豊富に入っており、サラダにふりかけると粉チーズをかけたようにコクが出ます。
ヨーグルトに混ぜたり、煮物の上にふりかけたりして食べています。
腸内の善玉菌を増やすために、ヨーグルトや納豆、チーズ、キムチなど発酵食品も取るようにしています。
※長野県に本店がある食品メーカー
その三、家の中も町の中もスポーツジムに
一日のうちに「運動の時間」をつくることができれば理想的ですが、実際にはなかなかそうもいきません。
特に運動習慣のない人は、三日坊主になりがちです。
それよりも、テレビを見ながら、歯磨きをしながら、買い物の道すがら、バスが来るのを待ちながら、ちょっとした時間にスクワットやかかと落とし、フロントランジなどの運動をしましょう。
わざわざスポーツジムに行くのではなく、家の中や町の中をジムにしてしまう作戦です。
コロナフレイルを防いでいます。
屋外レストランでもどこでもスクワット。
公園でランジ。足を前後に開いて、腰を落としていく運動です。
そして、ジムでは腹筋を強化しています。とにかく「いい年をして」運動ザンマイ!
その四、いつでもどこでも肛門をキュッと
中高年になると、女性も男性も尿漏れが気になります。
原因はいくつかありますが、多くは骨盤底筋の緩みが関係しています。
骨盤底筋は意識するのが難しいのですが、肛門をキュッと締めて引き上げるようにすると、骨盤底筋を動かすことができます。
肛門を締めたら30秒キープして緩める。
これを5回ほど繰り返します。
背筋をピンと伸ばして、涼しい顔をしながら、こっそり肛門を締めて尿漏れ予防に励みましょう。
その五、テレビに支配されない
朝からずっとテレビの前に座っている人がいます。
テレビは朝から晩まで同じような内容が繰り返され、それを受け身で見ていると、足腰も弱るし、脳の活動も低下します。
僕も動画配信サービスで好きな映画はたくさん見ますが、見た後は感想を書いたり、人にあらすじを話したりして、受け身で終わらないようにしています。
テレビの前の指定席に座るのは、2時間程度にして、本を読んだり、家事を楽しんだり、外を散歩したり有意義に使ってください。
そして、コロナが終わった後、自分がモデルチェンジしているように、今が自分磨きをするチャンスだと思っています。
【カマタのこのごろ】
「いい年をして」という生き方をしていたら、数年前まで脊柱管狭窄症で腰痛に悩み、特殊な治療を受けていましたが、今年は腰痛が一切出ていません。
絶好調です。