8年前、親元を離れて同居していた祖母・きみ子さん(当時73歳)がアルツハイマー型認知症と診断され、当時22歳の学生でありながら介護をしていた孫・上條里実さん(@satomi_qoljojo)。その時の苦労や苦悩を描き、Twitterに投稿している漫画には「とても共感しました」「もらい泣きしました」などの声が寄せられています。『毎日が発見ネット』でも連載中の上條さんに、漫画を描くきっかけや漫画に込めた願いを聞きました。
【漫画を読む】「財布盗ったでしょ!」同居する73歳祖母が認知症!? ほぼ実話の孫介護マンガ/認知症介護実録(1)
『嫌いから可愛いになった私のおばあちゃん ~認知症介護実録~』1話「私のおばあちゃん」より
■祖母の介護は、家族の負担を考え「自分がやらないわけにいかない」という使命感
――現在、祖母・きみ子さんのお加減はいかがでしょうか?
施設に入居しており、コロナの影響で面会ができていない状況です。
――それは寂しいですね。そもそも、お祖母さまとの同居はどのようなきっかけだったのでしょうか?
進学先が祖母の家と近いこともあり、同居する流れになりました。大学院生のときに祖母が認知症を発症したため、就職後も同居を続けておりました。
――当時の限界寸前のエピソードも描かれています。それでも介護を続けられた原動力は何だったのでしょうか。
介護のスタッフの方々、そして職場の理解があり続けてこられました。ただ、家族の負担を考えると「自分がやらないわけにはいかない」という使命感が一番強かったと思います。
『嫌いから可愛いになった私のおばあちゃん ~認知症介護実録~』3話「普通って何だろう」より
■介護の知識だけじゃない、介護者と被介護者の"過去"も見つめる大切さ
――介護の日々をTwitterに漫画で投稿しようと思ったのはどのようなきっかけでしたか?
たくさんの書籍を読み、自分は介護に必要以上に苦しんでいたのだと気づきました。介護では、家族はもちろん、いろんな方々と向き合うことになります。だからこそ、介護に対する知識だけではなく、自分がどうしたいのか、何が大切なのかを考え、その為に、時には自分の過去や相手の過去を見つめる必要があると感じました。
――介護は、現在や未来の話だけではないんですね。
そうですね。介護の技術に関する情報は沢山ありますが、介護者と被介護者の今までの人生も見つめる話はあまり目に触れなかったため、漫画で伝えられたらなと思ったことがきっかけです。
――だからこそ、過去と現在を織り交ぜた率直な心情を描いていらっしゃるのですね。
はい。まず、介護をしていない人に向けて「介護者はこのような辛さや苦しさがあります」と、一例としてお伝えしたいです。また、辛さや苦しみを介護者自ら背負ってしまっている部分もあると思います。今後の展開となりますが、「介護に追い詰められると限界まで考え込んでしまう」ということも伝えたいです。
『嫌いから可愛いになった私のおばあちゃん ~認知症介護実録~』6話「受診への道のり」より
■介護者の抱える悩みを根本的に見つめていきたい
――Twitterに投稿された漫画は100話を越えました。ここまで描き続けてみていかがでしょうか?
1人で始めたことでしたが、いろんな方が繋がってくださり、応援してくださったことで続けられました。
――漫画を描いていて、特に印象深かった出来事はありますか?
SNSで「自分も実は言えなかったけど同じように辛かった」とお話しされていたことです。
――まさに漫画で伝えたかったことが届いているのですね。今後はどのような展開がありますか?
各々の介護者の抱える悩みを根本的に見つめていきたいと考えています。主人公の里実目線で「どうして祖母の大きな声が苦手なんだろう?」といったテーマや、里実の母・ゆみこの目線で「家族で仲良くしたいのに、どんどんバラバラになっていくのはどうして?」など、もう少し介護者に踏みこんだ話を展開する予定です。