沈黙で自爆を誘発? コミュニケーションが苦手な人でもできる「交渉をうまく運ぶテクニック」

人と一緒にいるのが疲れる、人付き合いが苦手など対人関係に悩みを抱えていませんか。自身も極度の人見知りという午堂登紀雄さんは「外交的な付き合い方が苦手でも生きていける」といいます。そんな午堂さんの著書『「人見知り」として生きていくとと決めたら読む本』(すばる舎)から、口下手や人見知りでも無理せずコミュニケーションができ、孤独すらも楽しむコツを連載形式でお届けします。

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沈黙も交渉のテクニック

口数の少ない内向的な人は、交渉で有利になることもあります。

というのも、ほとんどの人は相手がジッと押し黙ると、想像以上の不安とプレッシャーを感じるからです。

たとえば、「こちらの条件でいかがでしょうか」と提示したのに相手が「う〜ん」と唸っていると、提案した側は「この条件では不満なんじゃないか」「このままでは商談を逃すのではないか」などと焦り、

「では、金額は端数をカットさせていただくのでいかがでしょうか」

「このサービスを無料でつけさせていただくのはいかがでしょうか」

などと自爆する人は少なくありません。

こうしたやりとりは、家電量販店や自動車の販売店、リフォーム等の打ち合わせの場などでもよく見られます。

つい先日、私も同じような手を使って新車を購入しました。

「こちらがお見積りです」

「はい」

「決算セールということで、ここから40万円値引きいたします」

「......」

「ではこのオプションをサービスさせていただければと思います」

「う〜ん......」

「端数をカットさせていただき、この金額ではいかがでしょうか」

「う〜ん......」

「年内納車を条件に、ここの工賃を無料で、この金額でお願いできないでしょうか」

「わかりました、これでお願いします」

という感じで、私はほとんどしゃべっていませんが、大幅値引きを引き出して購入できました。

このように、口数を少なくすればするほど、相手のほうから勝手にこちらに有利な条件を提示してきたり、相手が譲歩してくれたりということが起こりやすいのです。

相手の交渉戦術を分析する

優秀な交渉人のことを「タフ・ネゴシエーター」と呼ぶことがありますが、ここでいう「タフ」とは、「自分の主張を強引に通す」ということではありません。

頑なに譲歩を拒否し、自分の要求だけを繰り返し主張し続ければ、やがて相手が折れてその場面だけでは勝ったことになるかもしれません。

しかしそれでは相手に不満が残り、どこかで仕返しを受けるかもしれないからです。

頑固一徹に自分の主張を曲げないことではなく、いかに双方が納得する落としどころを、あきらめることなく粘り強く話し合うのが、「タフ」が示す意味です。

そのためにはまず、平常心を保つ必要があります。

交渉は駆け引きともいわれるほど、心理戦の側面があり、相手が挑発などの揺さぶりをかけてくることがあります。

それによって「不安」「罪悪感」「恐怖」「怒り」を抱き、取り乱したり狼狽したり動揺してしまうと、相手の思うつぼです。

平常心を保つには、相手の交渉戦術を分析することです。

「ああ、こちらのこういう反応を狙っているな」と相手の戦術がわかれば、不要にビビったり申し訳なく思ったりすることなく、冷静に対処できるでしょう。

たとえば家電量販店で「この商品ありますか?」と聞いたとき、

「人気商品なので確か在庫切れで......ちょっと待ってください、倉庫を確認してきます」

「お客さん、ラッキーです!1つだけ在庫がありますよ!」

こんなふうに答えたら、顧客の狩猟本能を刺激する戦術であるとわかります。

また、交渉には相手からの「脅し」が含まれていることが多分にあります。

脅しというと、大声で怒鳴り圧力をかけるイメージがありますが、声の大きさや感情的かどうかに関わらず、小さな脅しもあります。

たとえば、「もっと値引きできるだろう」「もうちょっと勉強できないの?」「ついでにこれもおまけしてよ」「予算はこれで精いっぱい」「受注する気あるの?」などとといった明示的な脅しの場合もあれば、「せっかくあなたのために確保したのに......私の誠意を踏みにじるんですか?」と相手の罪悪感を誘う間接的な脅しもあります。

重要なのは、「あ、相手はこちらを脅して譲歩を引き出そうとしているな」とまずは気づけるかどうかです。

ここに気がつけないと、パニックになったり委縮したりして、余計な譲歩をしかねないからです。

しかし、「なるほど、脅して譲歩を引き出そうという戦術で来たか」とわかれば、動揺を抑えて極力平常心で次の手を考えられるでしょう。

もうひとつ、こちらが一方的に譲歩しても、一般的には「相手からは感謝されない」という事実を知っておくことです。

というのも、強引に譲歩を迫ってくるような人は、「今後もよい関係を続けたい」ではなく、「最終的に自分がトクすればよい」と、自分の損得だけしか考えていないからです。

なので譲歩としたとしても、「もっと圧力をかければ譲歩を引き出せるかもしれない」と調子に乗るし、妥結したあとも儀礼的に「ありがとうございます!」「感謝です!」などと言ってくるかもしれませんが、「やった!トクした!」という感想しか持たないのが常です。

「そういうものである」という人間心理を知れば、ただ譲歩するだけがどれだけ無意味なことかわかると思います。

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人見知り.jpg気後れしない対人関係の築き方や孤独を楽しむ方法など42のメソッドが全7章で解説されています

 

午堂登紀雄(ごどう・ときお)
1971年岡山県生まれ。中央大学経済学部卒。米国公認会計士。世界的な戦略系経営コンサルティングファームであるアーサー・D・リトルで経営コンサルタントとして活躍。現在は、株式会社プレミアム・インベストメント&パートナーズと株式会社エデュビジョンの代表取締役を務める。『孤独をたのしむ力』(日本実業出版社)など著書多数。

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『「人見知り」として生きていくとと決めたら読む本』

(午堂登紀雄/すばる舎)

人付き合いや人と一緒にいることが苦手という悩みを抱えていませんか。口下手で根暗だと自称する著者もその悩みを個人の特性と捉え、適した環境に身を置き、その悩みを解消しました。本書ではそれを42のコツにまとめ、孤独を楽しみ、人見知りでも苦にならない人との距離感の保ち方などが紹介されています。

※この記事は『「人見知り」として生きていくとと決めたら読む本』(午堂登紀雄/すばる舎)からの抜粋です。
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