日本人にとって、最も身近な宗教である仏教ですが「葬祭時のマナーは心もとない...」という人も多いのでは? そこで、仏教関連の著書を数多く執筆する長田幸康さんの著書「これだけは知っておきたい はじめての仏教」から、「お布施の相場」や「墓じまい」また「仏教の歴史」など「これだけは知っておきたい知識」をご紹介します。
【五戒】
なぜ「飲酒」が禁じられている!?
仏教は大らかな宗教だ。
『聖書』や『コーラン』に相当する聖典が定まっているわけでもなく、入信に儀式が必要なわけでもない。
しかし、禁じられていることはある。
いわゆる「戒律(かいりつ)」である。
このうち「戒」は、自ら守る習慣。
破ったからといって罰を受けることはない。
一方、「律」は集団生活のルール。
僧院での具体的な事例に即して定められたもので、罰則もある。
一般的な仏教徒が守るべきもっとも基本的なルールが次の「五戒(ごかい)」である。
一 殺してはいけない
二 盗んではいけない
三 邪で淫らな性関係を結んではいけない
四 嘘をついてはいけない
五 酒を飲んではいけない
一~四は、キリスト教などの戒め「モーセの十戒」ともおおむね一致する。
人として守るべき、当たり前のことばかりだ。
しかし、五番目の「酒を飲むな」は殺人や盗みと同列に語るほどのものだろうか?
原始仏典『ダンマパダ』において、お釈迦さまは「酒には三十五の矢がある」と説き、酒のもたらす害を列挙している。
「財を失う」「病の元となる」「もめごとの原因となる」「恥を忘れて裸になる」など、お説ごもっとも。
酔っぱらいは古代インドにおいても、すでに迷惑な存在だったようだ。
酔った勢いで一~四の戒めを破りかねないことから、五番目の戒めとしたと考えられる。
僧侶が守るべき戒律(一部のみ)とは?
1 病気でもないのに、在家者に美食の施しを求めてはならない
2 器を平らにして施しの飯を受けるべきである
3 飯とおかずを同じ速さで食べるべきである
4 飯でおかずを覆い隠して、さらにおかずを求めてはならない
5 隣の人の器を見て、不満を抱いてはならない
6 食べ物を口に入れたまま話してはならない
7 舌で食べ物をなめてはならない
8 飯で頬を膨らませて食べてはならない
9 飯粒を散らかしながら食べてはならない
10 衣をいったん他人に与えたにもかかわらず、後になって腹を立て、「衣を返せ。あげたわけではない」と言って自ら奪ったり、他人に奪わせてはならない
11 血縁のない尼僧に衣を与えてはならない
12 あらかじめ約束して尼僧と同行してはならない。ひとりでは危険なところに行く場合を除く
13 夫婦の家で、その妻と人目につかないところで座してはならない
14 他の僧侶をくすぐってはならない
15 「ブッダの教えでは、淫欲を行じても修行の妨げにはならない」と言ってはならない
16 飛び跳ねながら在家者の家に入ってはならない
『四分僧戒本』より
仏教の歴史から日本の寺社仏閣や法要関連の情報をわかりやすく紹介。特に5章の「仏教儀式」はすぐに役立ちます