同居や介護、相続など、親との関わりがより深まってくる40~50代。でも、それ以前に「親子の関係」がギクシャクしているとまとまる話も、なかなかまとまりません。そこで、親子の間にわだかまりが生まれるのは、「そもそも親に原因がある」と説く人気心理カウンセラー・石原加受子さんの著書『「苦しい親子関係」から抜け出す方法』(あさ出版)から、苦しみの原因と解決策を連載形式でお届けします。あなたのお家は大丈夫ですか?
人生の原型は自分の家族関係
日常生活を送るうえで体験するさまざまな問題や悩みが、実は、親子関係、あるいは家族関係に起因している。そのことに気づいている人は、果たしてどれだけいるでしょうか。
問題の原因が「特殊な親子関係」にある、という話ではありません。「普通」に生活し「当たり前」のようにやりとりをする「日常の親子関係」の話です。
私たちは、家庭で身につけた言動を、当たり前のものであるように捉え、あたかも社会の共通認識であるかのように錯覚しています。自分の家庭で通用するものが、社会でも通用するものかを判断することはできないからです。
一昔前であれば、町内の行事や催事があったり、家族ぐるみの付き合いや隣近所の付き合いがあったりして、自分の家庭と他者の家庭とを比較するチャンスがありました。そのような場で、自分の家庭と他者の家庭との違いに気づいたり、なんとなく雰囲気で感じることもできました。
けれども今は、そうした付き合いがなくなって久しく、むしろ煩わしく感じる傾向にあります。良くも悪くも、自分の家族と他の家族との違いを知るチャンスが乏しくなり、自分の家族関係を唯一の見本とするしかなくなっているのです。
言動がパターン化し、固定化されていく
そうすると次のようなことが起こりやすくなります。
高校や専門学校、大学など、学生気分でいられるときは、たいした問題は起こらなかったのに、社会に出てみると、なぜか、いろいろなことがうまくいかない。これまで通用していたことが、通用しなくなってしまった。
それは、学生時代に問題がなかったというわけではなく、社会人になったときに、その問題が大きくクローズアップされてきたということに過ぎません。
こうした問題が頻発しているときでも、その原因が、家庭で学習している「言動パターン」や、毎日の繰り返しの中で根付いていった「強い思い込み」であることに気づく人はごく少数です。
家庭で学んださまざまな「スキル」は、自分の家庭の中では通用します。仮に争ったり傷つくことがあったとしても、家族であれば、数日のうちに、「何事もなかった」かのような生活にもどります。
大多数の人たちが「普通」に生活して、「普通」の毎日を送っています。
けれども、その「普通」が365日、毎年毎年繰り返されていれば、それは言わば、毎日、その言動をトレーニングしているも同然です。その言動は定着し、固定化されていきます。
ひとたび固定化してしまうと、気づきにくく、また、気づいたとしても修正する方法を知らなければ、対応のしようがありません。そのために、ポジティブなものであれネガティブなものであれ、家庭での言動の長年の繰り返しが、自分の人生の基盤となり、方向性を決定づけることになるのです。
親と子の関係がつらくなる心のメカニズムを、言動や社会背景をもとに解説。コミュニケーションの取り方など具体的な対策もまとめられています