老後のためにと投資関係の本を買い、ちょっと読んでは積み上げる...それ、時間もお金も無駄にしていませんか?そこで、「1冊30分で3回読む」という新しい読書法がまとめられた『死ぬほど読めて忘れない高速読書』(上岡正明/アスコム)から、本の内容を「知識と実益にする読み方」のメソッドを毎日連載でお届けします。
1回目は文字を振り返らないのがコツ
高速読書で本文を読む際のコツを伝授します。高速読書では、1回目を15分で読めるようになることを目標としています。慣れてくれば私のように1冊8分で読むこともできますが、それまでは1回目:15分、2回目:10分、3回目:5分をめざします。まず、15分で1冊読めるようになれば、基本的なカタは、ほぼ手に入れたと思って良いでしょう。
その1回目ですが、はじめの段階なので、とりあえず速く読むことを前提に、文字を振り返ることなく内容を理解します。もちろん、今のままではまだ難しいでしょう。そこで、高速で読むためのテクニックを紹介していきます。
読書スピードを高速にするテクニック:漢字だけリーディング
「漢字だけリーディング」とは、その名のとおり漢字を中心にして本を読む方法です。たいていの場合、速く読めない人は、平仮名も漢字も、全部同じように上から丁寧に読んでいます。すべての文字を、一文字一文字、頭の中で音読しながら読んでいるから、速く読めないのです。
しかし、本を速く読む人は違います。じつは、読む文字と、『意識的に』読まない文字をあらかじめ決めているのです。それが、漢字とかなの優劣の違いです。じつは漢字はとても優秀な文字です。1つ1つに情報が詰まっています。
どういうことか、もう少し詳しく説明しましょう。先ほどの「情報」という言葉を使って解説しましょう。この漢字を理解するのに、漢字であれば2文字で完結しますよね。しかも、漢字特有のデザインであり、単語のはじまりと終わりがとても明確です。
いっぽう、仮名はどうでしょう。『じょうほう』と4つの文字を必要とします。また、言葉としてコンパクトにまとまっていないため、単語の意味を理解するのに時間がかかります。
なんだ、そんなの当たり前じゃないか。そう感じられた読者の方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、文字とは情報を伝えるいわば記号。脳が記号を意味として捉えて、理解するまでには時間と負荷がかかります。つまり、文字が伝わりにくいということは、脳というスペックに相当の時間と負荷がかかるということなのです。具体的に、つぎの文章を読んでみてください。
『わたしはきょう、りょうしんとさんにんでシャンハイにりょこうにいき、そこでちゅうかりょうりのてんしんをたべました。』
いかがでしょうか。さすがに慣れ親しんだ日本語なので、意味が解らないという方はいらっしゃらないと思います。しかし、読んで、内容を理解するまでには、けっこうな負荷と時間がかかったのではないでしょうか。
続いて、こちらを読んでみてください。
『私は今日、両親と三人で上海に旅行に行き、そこで中華料理の点心を食べました。』
わざわざ脳の負荷を測定するまでもありません。目で読んで、理解するまでの差は歴然だと思います。実際、ある学会の講演で聴いた話ではありますが、脳の神経細胞研究では、漢字で構成された文章と、平仮名だけの文章では内容を理解するのに倍もの差があるというデータがあるほどです。
さらに、二つの文章を読み比べてみると、ある法則に気がつくと思います。それは、人は自然と文章を読むとき、漢字を中心に読み進めて、平仮名を補足として目でとらえているということです。これは、平仮名のほとんどが指示語であったり、漢字同士をつなぐ補助語であるためです。
逆に言えば、漢字を中心に読めば、平仮名を多少飛ばして読んでも、意味は9割理解できるということなのです。これで、本の内容は2分の1程度に減らすことができます。
漢字だけ読めば20倍速くなる!?
私の場合、速読をマスターするために、どこかの速読スクールに通ったこともありません。そのため、はじめはものすごく苦労したのを覚えています。今の1冊8分というスピードを手に入れるのに、です。
実際に、ある脳のテストで、平仮名の文字がほとんど間違った文章を被験者に渡して、それぞれ内容が理解できるか読んでもらいました。
すると、ほとんどの被験者が意味を正しく理解できたそうです。つまり、漢字だけで意味が成立する内容であれば、平仮名は多少間違っていても、読む側もほとんどその間違いに気づかないということなのです。
このように、極端な話をすれば、脳科学的には、漢字だけですべてを理解できるよう訓練すれば、本はあっという間に読めてしまいます。もちろん、これはちょっと言い過ぎと思うかもしれません。
しかし、文字が平等に意味を成している、というこれまでの常識をちょっと頭から外して、ほとんどの平仮名がなくても意味が理解できると考えて読めば、それだけで本の文字数は大幅に減り、速く読めるようになります。
私が8分以内に1冊を読んでいるときは、ほとんどの平仮名は漢字の前後に配置されているのを一瞬で捉えて、感覚的に理解しているに過ぎません。これが、1冊をしっかりと記憶しながら、数分で読むための本当の脳の状態です。
平仮名で重要視するのは「逆接の接続詞」
ただし、漢字だけリーディングをする際にも、気をつけなければならないことがあります。それは、接続詞の扱いです。
通常、接続詞は平仮名で書かれています。この接続詞を戦略的に把握できるようになると、先の文章を予測しながら読むことができるようになります。また、筆者の主張などの本全体の構造も理解しやすくなります。
もちろん、それでもたいていの接続詞も読み飛ばしていただいて大丈夫です。ですが、ある特定の接続詞の扱いだけは気をつけてもらいたいのです。それが、逆接の接続詞と理由を述べる接続詞の2つです。
◎本を速く読むために重要になる接続詞
□逆接の接続詞:ところが、しかし、だが、けれども、いっぽう
□理由の接続詞:つまり、なぜなら、要するに、というわけで
「ところが」「しかし」「だが」「いっぽうで」などで、文と文とを結ぶ接続詞を逆接の接続詞と呼びます。
逆接の接続詞は前の文を否定して、新しい考えを述べるさいに活用します。そして、そのあとには著者の重要な結論が隠されていることが多いのです。
同じように、理由を述べる接続詞も重要です。あとには筆者の考えや経験にもとづく主張がポイントをまとめるように書かれているはずです。そして、その内容は筆者の主張を支える大黒柱的な役割をしています。
つまり、「逆接(ところが)→筆者の重要な主張や結論→理由(つまり)→主張のまとめ」というのが一般的な本の流れなわけです。
4章にわたって高速読書のやり方から自身に起こる変化までを解説。最も重要なアウトプットの方法は本書で!