「近所の人が非常識で...」といった悩みを耳にすることもあるはずです。でも、世界に目を向けると、「パジャマで外出」「50歳でもお年玉」など、私たちが驚いてしまうことが「あたりまえ」として行われています。そこで、文化人類学者・斗鬼正一さんの著書『開幕!世界あたりまえ会議』(ワニブックス)から日本ではありえない驚きの常識を連載形式でお届けします。
どんなに寒くても服を着ない
バヌアツ・タンナ島の民族ナマルメの男性は、紐に藁束が下がったナンバスを腰につけて暮らしています。ところが、どんなに寒くてもこれ以上衣服は身に着けません。それが伝統であたりまえだといい、夜は火を焚いて、そのまわりで寒さに震えながら身体を寄せ合って寝るというやせ我慢民族です。服は防寒のためのものだと考えないというわけですが、身体を隠すためだともあまり考えておらず、近年は大きな葉を腰紐につけることもありますが、あくまで町に出るときに町の習慣に合わせているだけで、普段はかなり露出が多くなっています。
ブラジルの熱帯雨林で1975 年に発見された民族ゾエは、地上最後の石器時代人と驚かれたのですが、さらに世界を驚かせたのは、ゾエが衣服をまったく身に着けていなかったことです。
しかし、何も身に着けていないわけではなく、下唇くちびるに穴をあけ、プックルという木の棒を挿していました。これを身に着けていれば正装なので、彼らからすればプックルを身に着けていない文明人こそが裸で恥ずかしいわけで、自分たちが裸族だと好奇の目で見られたのは、さぞ心外だったでしょう。
【日本人からしたら...】民族によって服装、身なりのあたりまえもこんなに違うのか
足を見せるのは裸と同じこと
ミクロネシア連邦にある熱帯の島ヤップの女性は腰蓑姿で、他に身に着けているのはネックレスだけ。つまり上半身が裸の裸族です。でもヤップ人から見たら、日本人女性こそ恥ずかしい裸族だというのです。ヤップの伝統文化では、女性が隠すべきは足で、長い腰蓑でくるぶしまで隠しています。足が見えているのが裸なのですから、足を出してスカートや短パン姿で町を歩く日本人女性は、まさに破廉恥な裸族というわけです。
サウジアラビアとなると、男性でも短パンで町を歩いたら犯罪で、宗教警察に拘束されてしまいます。トルコの男性も公衆浴場では長い腰巻着用ですから、赤の他人と一緒に裸になるという日本の温泉や銭湯は到底無理、となります。
欧米人となると入浴は1人が常識で、他人と一緒の入浴自体がすごく恥ずかしいというのですから、ますます温泉天国どころではありません。
裸の恥ずかしさも民族によって様々ですが、動物たちは何も身に着けませんし、それが恥ずかしいなどとは思っていません。生まれたままの身体は恥ずかしいことと決め、何かしら身に着け、一続きのはずの身体を区分して、どこを隠せなどと決めてしまうという点では、人類は皆同じなのです。
【日本人からしたら...】それぞれの民族によって、何が裸かはまったく違うものなのだな
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イラスト/てぶくろ星人
「男女」「生活」など5つのテーマで、世界中から集められた83の"驚きの常識"が!世界から見れば、日本も意外と非常識のようです