スマホなしで1日過ごせますか?脳科学者の「ぼーっとする」ススメ

知人の名前がどうしても出てこず「老化かな・・・」とへこむこと、ありますよね。そこで鍛えたいのが「思い出す力」。情報をただ「インプット」するのではなく、何度も思い出して「役立てる」ことで、情報が「知恵」に変わり、人生を充実させることができるんです。そんな話題の新刊『ど忘れをチャンスに変える思い出す力:記憶脳からアウトプット脳へ!』(茂木健一郎/河出書房新社)より、思い出す力を高めるための効果的な方法や、誰もがすぐにできるアクションを連載形式でお届けします。

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もっとぼーっとしよう!

お笑いの太田光さんに聞いた話ですが、彼は高校のときは、人としゃべらないで、廊下に立ってぼーっと外を見ているような人だったそうです。外から刺激がないと飽きてしまう、というのではなく、自分の中の思い出にふけることができる太田さんのような人は、クリエイティブな仕事をすることになる人が多いものです。

僕の友人で、科学界の鬼才、郡司ペギオ幸夫にはこんな逸話があります。彼は電車が一日に一本しか来ないある場所で、その日の電車に乗り遅れてしまって、次の日までそのホームでずっと待っていたとのこと。一日中ホームにいたなんて、退屈しなかったのかと聞くと、「いや、退屈なんか基本的にするわけがないだろう」と言いました。ずっと同じ場所にいたとしても、思い出すこと、感じること、考えることが、たくさんあって、ストレスにならない。郡司さんは、携帯電話をいまだに持っていない人です。スマホなしで、一日中過ごすことは、あなたには可能ですか?

文豪・内田百閒(うちだひゃっけん)にも似たような話があります。『阿房(あほう)列車』には、御殿場線に乗り換えるときに、目の前で汽車が行ってしまって、2時間ヒマラヤ山系(平山三郎)と一緒にホームで待っていたときの様子が描かれています。郡司さんに比べたら、2時間など短いかもしれないけれども、百閒さんも2時間ずっとぼーっとホームで待っていて飽きませんでした。

普通2時間も、携帯もなしに電車を待たされたら、退屈したり、イライラしたりすることでしょう。そんなときにあなたが快適に過ごせるかどうかは、あなたが無意識を働かせる達人かどうかの一つの目安になるかもしれません。

誰でも、ぼーっとすることはあるでしょう。
ただ、現代人は忙しく常に情報をインプットしていないといけないと思っています。

郡司さんや百閒さんは、過激な例だとしても、たまには思い切ってオフの時間を取り、マッサージやビューティーサロンに行く感覚で、脳のマッサージ、脳のビューティーサロンに自分で行ってみてはどうでしょう? 意識して思い出す時間を作るのです。長く生きていれば生きているほど、過去の蓄積、つまりは宝物がいっぱいあります。

奈良の正倉院の御物(ぎょぶつ)でさえ、ときどき虫干ししているといいます。宝物は、ときどき箱から取り出して日に当てなければ、虫に食われたり、黴(かび)が生えたりしてしまいます。

記憶も同じです。ときどき思い出して、虫干しをしてみるといい。そうすれば、あなたの隠された欲求がわかって、これからのヒントになるはずですし、自分が豊かな記憶の持ち主であるということも、自覚できるはずです。

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思い出すカバー帯.jpg情報過多の現代に「思い出す力」を強化することで、クリエイティブになれる「新しい脳の使い方」を教えてくれる一冊。全6章の構成で、各章にはポイントやレッスンの「まとめ」がついた保存版です!

 

茂木健一郎(もぎ・けんいちろう)

1962年東京生まれ。脳科学者。理学博士。理化学研究所、ケンブリッジ大学を経て、現在、ソニーコンピュータサイエンス研究所シニアリサーチャー。2005年、『脳と仮想』(新潮社)で第4回小林秀雄賞、2009年、『今、ここからすべての場所へ』(筑摩書房)で第12回桑原武夫学芸賞受賞。

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『記憶脳からアウトプット脳へ! ど忘れをチャンスに変える思い出す力』

(茂木健一郎/河出書房新社)

AI(人工知能)が本格的に普及していく現代において、「思い出す力」を強化することを解く話題の一冊。「思い出す」という行為が、過去をなつかしんだり、ノスタルジーに浸るためのものではなく、非常に創造的な行為であること。そして従来の「暗記・記憶=インプット」偏重の脳から「アウトプット脳」に変えることが、これからの時代を生きるために必要なことを明らかにしていきます。

※この記事は『記憶脳からアウトプット脳へ! ど忘れをチャンスに変える思い出す力』(茂木健一郎/河出書房新社)からの抜粋です。

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