「食後にお皿をまとめる」「落し物を自分の物にしない」「見えないところで努力する」――。日本で長らく育ってきた方であればきっと普通のことだと感じるでしょう。でも、外国人からしてみると、実は想像できないほど不思議な行動だそうです。「幸せに生きるコツは日本で見つけた」という、来日30年を超えるアメリカ人女性が気付いたのは、この行動や考え方は世界に誇れるということ。外国人から見た、「日本人の本当のすごさ」についてお届けします。
日本がトップクオリティを保ちつづけられる理由
ある海外進出を計画している、飲料メーカーの課長と話をしていたときのこと。「欠品によるリスクは、どの程度考えていますか?」と同席していた別のアメリカ人が質問しました。
欠品が出るとそのぶんだけ購入の機会が失われ、売上げが下がってしまいます。だからといって在庫を抱えすぎると、過剰在庫の維持費がかさんだり、廃棄処分しなければいけなかったりと弊害が生まれます。
ですから、適正な在庫を抱えることが重要なのですが、在庫適正化はむずかしく、商品を抱える企業の課題でもあるのです。
質問者に対し、課長はこう答えました。「欠品リスクはありません。私たちは100%完璧の前提で生産管理、在庫管理を行っています」
驚きました。「リスク0」なんてほんとうに実現できるのだろうか、と思ってしまいましたが、実際クリアしているとのこと。
アメリカ育ちの私はつい、何事も完璧にはできないから、少しぐらい仕方がないと思ってしまいます。少し汚れていてもいいだろう、少し遅れても大丈夫、言葉づかいが多少丁寧でなくても通じるからまあいいか......などなど。
でも、そうやって「少しくらいなら」と油断していると、そこからどんどん基準が甘くなり、気づいたときには「少し」ではなくなっているケースが往々にしてあります。
それに対して、日本人は「こうあるべきだ」という期待値(ここでは数学的な値ではなく、期待の高さに対して使っています)を高く維持している人が多いように思います。
「期待値を下げない日本人」を私がいちばん身近に実感したのは、リクルート創立者の江副さんとのやりとりでした。
いまの会社で仕事をすることになったとき、江副さんから言われました。「ルーシー、日本で不動産業をやるんだったら、宅建という資格をもたないとだめですよ」ほとんど漢字が読めない私は驚いて「そんなの無理です」と言ったのですが、まったく聞き入れてもらえませんでした。
本来私に求められるのは、宅建主任の社員の通訳として、外国人のお客さまと契約を結ぶ際に同席することです。しかし、江副さんは私に対する期待値を落としませんでした。
外国籍の人間にもフラットにチャンスを与え、評価も昇格もフラットにするかわりに、期待値を絶対に下げなかったのです。
そのおかげで奇跡が起きました。私は2006年、欧米系女性としておそらく初の宅地建物取引主任士となったのです。外国人でも、日本語の試験に合格することができるのです!
さらには、スペースデザインの2人の欧米系外国人が宅建を取得しました。現在、欧米系で宅建の資格をもっているのは日本に6人しかいませんが、そのうちの3人がいまの会社出身者です。
だから、日本のみなさんも、日本人が大切にしていることの基準を下げずに維持してください。外国人に対して「日本人ではないから」「日本とは習慣が違うだろうから」「日本の○○に慣れていないだろうから......」「○○だから仕方がないね」と言わない。
また、若い人たちに対して、「いまの若い人にはわからないから言ってもムダ」「時代が変わったのだから仕方がない」などとあきらめずに、期待値を高く維持していただきたいのです。
仕事に対する姿勢や勤勉さ、世界一清潔なところ......などなど、日本人がなくしてはいけない大切なものがたくさんあります。いまの日本を維持するためには、外国人だからとか、若者だからとか関係なく、彼らの意識の底上げが必要です。
「教える」というよりも、「introduce(紹介する)」というスタンスで、気づいたことを周りの人に伝えてあげてください。
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