潜在的に抱えているかもしれない!?自分の「パワハラリスク度」をチェック!

身近な社会問題として注目を集める、パワハラ=パワーハラスメント。今や労使紛争のトップになったパワハラは、どうすればなくせるのでしょうか。カギとなるのは「命令する上司」から「動機付ける上司」への転換。10万人以上に講演・指導を行ってきた和田隆さんの『パワハラをなくす教科書』(方丈社)から、これだけは知っておきたい「パワハラをなくす方法」について、連載形式でお届けします。

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自分のパワハラリスクを知る

「個人のパワハラリスク度チェック」をしてみましょう。

1.仕事に対して「こうあるべきだ」と考える傾向がある
2.物事を白か黒かはっきりさせるほうである
3.プライドが高いほうである
4.これまで他の人より実績を残してきたほうだと思う
5.自分の思っていることや気持ちを表現しないで我慢することが多い
6.「失敗するな!」「なぜ、できないの?」という否定的な表現をよく使う
7.人の気持ちより、正しいかどうかの理屈のほうが大切だと思う
8.正当な理由があれば、パワハラ行為をしてもしかたがないと思う
9.仕事は結果がすべてだと思う
10.高ストレス状態または睡眠になんらかの問題を抱えている

このチェックはセミナーでも実施するのですが、ひとつもチェックが入らない人はほとんどいません。どこかにチェックが入るものです。すべてにチェックが入る人もいます。

誤解しないでいただきたいのですが、チェックが入ったところが悪い、欠点だというわけではありません。これらの内容は、パワハラ行為をしてしまうリスクではあるけれど、同時にその人の強みである場合もあります。では、なぜそれぞれの項目が内在するリスクになるのか、ひとつひとつ、見ていきましょう。

1.仕事に対して「こうあるべきだ」と考える傾向がある

「~すべき思考」が強過ぎると怒りの感情が出やすくなります。仕事だろうと、家庭であろうと、「そうすべきだ」と思っても、ほとんど、思ったとおりにはなりません。それでも、「そうすべきだ」と思っているわけですから、常に理想と現実の間に大きなギャップを抱えていることになります。そのギャップがストレスとなり怒りの感情が出やすく、他者にぶつけてしまうことになる。

考え方は、言葉や感情からも影響を受けます。「~すべきだ」というのが口癖になっている人は、「~なると良くなるよね」と表現から変えていくと、自分の中にある偏りをほぐすことができます。

2.物事を白か黒かはっきりさせるほうである

「白黒思考」は判断力が早いというプラス面があります。しかし、仕事の中、特に対人関係の中では、白黒つかない問題のほうが圧倒的に多いものです。とりわけ人の感情は白も黒もありません。

どちらかはっきりさせるという思考は、はっきりさせられない問題に対して苛立ちを感じやすくなる。これも、1と同じ、考え方の偏りです。

3.プライドが高いほうである

「自分は正しい」「自分が常識的だ」と思いがちで、常に自分の側から他人を見る傾向があります。相手の発言の裏にある真意や、相手が思うようにできない理由などに思いが至らないなど、他者が見えていないことが多いのではないでしょうか。

4.これまで他の人より実績を残してきたほうだと思う

自分で結果を出していますので、自分のやり方が正しいと思いがちです。部下の個性や成熟度に応じて指導するという視点に欠け、自身の成功体験があるために、それが唯一の正解とばかりに部下に押し付ける。そして、できないのは気合いが足りないからだと、乱暴な結論に陥ってしまう。なにかにつけて叱責が多いのもこのタイプです。

スポーツの世界では、「名選手が名監督にならない」と言われますが、ビジネスの世界でも優秀なプレイヤーが、必ずしも優秀なマネージャーになるとは限りません。マネージャーの仕事は、自分ではなく他者の力を借りて成果をあげることなのですが、プレイヤーとして優秀だった人は、マネージャーになっても自分でやってしまうことが多いようです。

部下が成果を上げられないと、最後、自分が動いて結果を出してしまう。チームとしての数字はいいのに、部下はまったく成長していないし、自信がなく、仕事に対して不満を募らせていたりします。プレイヤーの自分とマネージャーになった自分とでは、役割が違うことを認識しなくてはいけません。

5.自分の思っていることや気持ちを表現しないで我慢することが多い

この質問にチェックの入った人は、従順性が高く協調性もありますが、ストレスを溜め込みやすいタイプです。我慢やストレスを溜め込んでいると、ストレスのコップが満タンになり、外に溢れ出てきてしまい、突然、感情が爆発してしまったりする。

関連記事:「ストレスがなければパワハラもない!? 「我慢をしない」ススメ/パワハラをなくす教科書(3)」

自己主張が強過ぎる方にも問題はありますが、この非主張型にも問題があります。どちらも極端でバランスが悪い。一方的に自分のことを言うか、ひたすら耐えるか、どちらも両極端。どちらもリスクを抱えています。最近の若いリーダーには、このタイプの方が多いように思います。

6.「失敗するな!」「なぜ、できないの?」という否定的な表現をよく使う

「なぜ、できないの?」という表現は相手を追い込みます。「失敗するな!」は、失敗したら責任を取らすぞというふうにも受け止められますので、部下を萎縮させます。また、できていない人に、「なぜ、できないの?」と聞くのは、極めて乱暴な問いかけです。理由がわかっていたら行動しているわけで、「なぜ、できないんだ?」と言われても、答えられません。

こういうシチュエーションになると上司は、部下の反応の悪さに苛立ち、同じ質問を繰り返します。部下側も、こんなふうに責められたらネガティブな感情が表情に出て、それを見た上司はさらにヒートアップしてさらに不毛な問いかけを繰り返す。

自分の否定的な言葉を繰り返すうちに自分自身が興奮し、部下を追いこんでしまいます。そして、気付いたときに、「だから、お前はダメなんだ!」と人格否定をしてしまう可能性があります。

7.人の気持ちより、正しいかどうかの理屈のほうが大切だと思う

管理職は正しいことを部下に伝えようとします。それ自体は大切なことですが、正論を相手にぶつけるのは、ある意味、自己満足です。繰り返しになりますが、人間関係において、正しいことを言っても問題は解決しません。

何をしたら良い結果が生まれるかということを考えると、やはり感情への対処です。正しいことができていないその人の欲求、気持ち、価値観を理解してあげると、自分のことをわかってくれたと思う。その上で正しいことを言われたら受け入れることができます。

しかし、信頼関係がまるでない相手から正論を言われると、怒りに変わります。「仕事だろう、ちゃんとやれよ!」「そんなことはわかっています」と、互いにやりあってしまう。

部下もわかってはいるんです。だからこそ、「でも、できない」という部分を共に考えていくべきなのに、上司がひたすら正しいことを言っていたら、心理的に部下を追いこむことになります。正しいことは、否定できないですから。くどいようですが、人間関係は正しいことを言ってうまくいくとは限らないということを知ってください。そして、対人関係の場面では、感情を理解することがなにより大事なのです。

8.正当な理由があれば、パワハラ行為をしてもしかたがないと思う

この項目をチェックする方は、実はとても多くいます。しかし、パワハラ行為は不当行為であり、不当行為というのは、その理由をどれだけ説明しても、正当化されません。

パワハラをした人は、必ず、自身の手段を正当化する理屈を言います。「行き過ぎたかもしれない。けれど、部下が全然、指示命令に従わないから」「部下側にたくさんの問題があって、それを甘やかしてしまっていいのか!?」「厳しく数字が課せられているんだから、何とかしなきゃいけないじゃないか」

つまり、一方的に処分だけされた行為者は、まったく納得できていないのです。被害者―部下も悪いのになんの処分を受けていない。職務に専念せず、秩序を乱す、礼儀がなっていない。ほとんど義務を果たしていないじゃないか。会社からも厳しくやれと言われていたのに、組織も何も責任をとらない、部下も責任をとらない。自分だけが責任をとらされる。

そんな、納得できないという気持ちが、手段の正当化につながるのだと思います。でも、不当行為はどんな理由を並べても、正当化されることはありません。感情的になって、一線を超えた瞬間、部下が悪かったという情報はほとんど触れられることがなく、あなたのとった行動は行き過ぎだと判断されるわけです。

部下の言動があっても、そういうときこそ冷静になる必要があるのです。

9.仕事は結果がすべてだと思う

この考え方はビジネスの世界では根強いようです。しかし、会社の商品やサービスが時代に受け入れられず、成長する要素が何もなかったとしても、成長するのが当たり前というのは、根本的に無理のある考え方です。

結果が出なければダメという発想は、翻ると、結果が出れば何をしてもいいという発想にもつながりやすく、不祥事はこうした土壌から生まれます。

企業不祥事は人の倫理観の問題だけではありません。構造上の問題もあります。結果がすべてだと言いながら、時代の変化に対応してこなかった経営者がいる。上場企業は株主に対して責任があるので、予算達成できませんでしたとはなかなか言えない。悪い結果を受け入れることができず、常に良い結果でなくてはいけないと言う考え方が数字を操作してしまうわけです。

当然、そこで働く労働者は「そんな不正は嫌だ」と思っていたはずです。しかし、それを組織的に行い、続けているうちに悪いことだと思わなくなる恐ろしさもあるのです。

10.高ストレス状態または睡眠になんらかの問題を抱えている

高ストレス状態や睡眠になんらかの問題を抱えている状態だと、感情中枢である扁桃体が過剰反応して前頭前野という理性を司る部分が機能低下します。理性のブレーキが壊れた状態で、何かのきっかけで我慢のコップも溢れると、行き過ぎた指導になってしまいます。

これら10の項目で、該当するものが多ければ多いほど、それぞれが刺激し合って、怒りの感情が出やすくなり、パワハラにつながりやすくなります。チェックが多く入った人は、注意が必要です。

チェックが入った項目のうち、「これは、変えていけるかも」と思うものがあったら、それを意識してみてください。すべてを変えることはできなくても、1~2つ変えることができれば、それぞれが刺激しあう度合が弱まります。リスクをゼロにすることを考えるのではなく、バランスのとれたものにしていくことを考えてください。

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00191002.jpgパワハラがなぜ生まれるのか。その理由を企業の体質や構造から解明し、改善方法が解説されています。管理職となったあなたが抱えている問題を解決するヒントがまとめられています

 

和田 隆(わだ・たかし)

ハラスメント防止コンサルタント、1級キャリアコンサルティング技能士、シニア産業カウンセラー。メンタルプラス株式会社代表取締役、ウェルリンク株式会社シニアコンサルタント。大学卒業後、旅行会社、スポーツクラブ運営会社で主に商品企画業務に従事。その後、職場のストレスが社会問題化する流れの中、心の健康を大切にする支援をライフワークとするため、メンタルヘルスケアに取り組む。現在、カウンセラー、コンサルタントをする傍ら、ハラスメント、メンタルヘルス、睡眠改善、コミュニケーション等をテーマに、民間企業、官公庁、教育機関等で、講演・指導を行っている。受講者は10万人を超える。

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『パワハラをなくす教科書』

(和田 隆/方丈社)

パワハラを生む企業の体質と構造を解き明かし、社員のモチベーションを活性化することで、健康企業へと導く方法を徹底解説します。部下への指導で悩む管理職のみなさんが抱えている問題を解決するヒントが詰まった一冊です。

※この記事は『パワハラをなくす教科書』(和田 隆/方丈社)からの抜粋です。

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