ストレスがなければパワハラもない!? 「我慢をしない」ススメ

身近な社会問題として注目を集める、パワハラ=パワーハラスメント。今や労使紛争のトップになったパワハラは、どうすればなくせるのでしょうか。カギとなるのは「命令する上司」から「動機付ける上司」への転換。10万人以上に講演・指導を行ってきた和田隆さんの『パワハラをなくす教科書』(方丈社)から、これだけは知っておきたい「パワハラをなくす方法」について、連載形式でお届けします。

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ストレスは弱い者に置き換えられる

ストレスはそのメカニズムとして、人から人、強い者から弱い者へと向かっていく特徴があります。ストレスの置き換えと呼ばれるものです。

例えば、上司や先輩、親など、優位性のある人、強い者がイライラしたり、カチンとしたり、高ストレス状態になると、自分の中のストレスを外に出したくなります。無意識に誰かに置き換えたくなる。そして、無意識に自分より弱い人を探すのです。

例えば、部長や課長は部下に対して、「お前!何やってるんだ!」とは言えますが、社長に対しては絶対に言いません。社長だからやめておこうと理性的に計算して判断をしているわけではなく、無意識にターゲットを弱い者に定め、そこに自分のストレスを置き換えているのです。

置き換えたられた側――部下や後輩や子どものストレス耐性が高ければ、「部長、役員との会議で何かあったんじゃないの?」「今日は機嫌が悪いんだなあ」と軽く流すこともできるでしょう。しかし、ストレス耐性が低いと受け止められず、傷ついてしまう。そして、「今の発言、パワハラです!」となってしまう。

上に立つ人はストレスをしっかりコントロールしていく必要があります。そうしないと、ストレス状態が高くなったとき、無意識に近くにいる自分より弱い人へ吐き出してしまいます。無意識だからこそ、怖いのです。

 

我慢をしない

ストレスがないところで、人間はあまり怒りません。逆に言うと、ストレスのあるところで人は怒りを発散します。だから、我慢をしてストレスを溜め込むことはしないほうがいい。

耐えられる我慢の容量は人によって違います。「ストレスのコップ」のようなものがあったとして、暑いという不快感の我慢、空腹への我慢、寝不足の我慢など、さまざまな我慢は、ストレスとしてまとめてこのコップに貯まっていきます。我慢をし過ぎて、ストレスが貯まってコップがいっぱいになると溢れ出てしまう。それが、怒りなのです。

その意味で、怒りっぽい人というのは、我慢のしすぎだとも言えます。我慢強い人ほど、切れやすい傾向があります(なかには瞬間湯沸かし器のような人もいますが......)。個人のストレス耐性の問題もありますが、めったに怒らない人は、実はあまり我慢をしていない人ともいえます。

こういうお話をすると、「我慢をしなければ、忍耐強さは養えない!」と思う人もいるかもしれません。もちろん、自分の実現したいものに対しては、我慢をしてでも突き進んだほうがいい。我慢する価値があるからです。

しかし、暑さや空腹など、いろいろなことを我慢しすぎてしまうと、知らず知らずのうちに、ストレスのコップは満タンに近づいていきます。そんなときに、ちょっとした不快な感情が加わると、ストレスのコップが溢れ、怒りが爆発してしまうのです。

我慢する必要がないことは、我慢しないほうがいい。暑いのであれば涼しい室内に入る、空腹を感じたら小腹を満たす。具体的な形で解消できるものは、解消していきましょう。「ストレスのコップ」に余裕を持たせておくのが、ストレスコントロールなのです。

例えば、子どもがずっとテレビを見ていて、「一体、いつ勉強するんだ?」と思いながら、声をかけるのを我慢しているとします。そんなとき、のんきな子どもの笑い声にカチンときて、気付いたら怒鳴り声をあげてしまうといったシチュエーションはよくあるものです。

しかし、「いつ勉強するんだ?」と気になったときに、「そのテレビ、いつ終わるの?」と聞いていたら、どうでしょう。子どもから「あと30分」という返事があれば、「テレビが終わったら勉強やろうね」と伝え、ムダに怒らなくても済みます。

しかし、その番組が30分後に終わるということを知らないと、「勉強もしないで、ずっとテレビ見ているつもりなのか!?」と疑念が生じ、我慢し続けた結果、あと少しで番組が終わるというときに、怒り出してしまうわけです。子どもだって、「この番組が終わったら、勉強しようと思ってたのに!」と逆切れしたりもする。

お互いにストレス耐性を上げたほうがいいのはもちろんですが、怒りの感情を人にぶつけないようにするため、常に冷静でいることが必要です。それは、自身でゆとりのある状態をつくるということです。ゆとりがあれば、人の話も冷静に聞くことができます。

職場でも同じです。部下の仕事が遅いと感じているとき。「どうだ?様子は?」と声をかけ、「期限内には終わりそうです」「もう、仕上げの段階です」などと、進捗を聞き把握していたらイライラする必要もありません。

それなのに、言葉をかけずに勝手に我慢を重ね、ギリギリになって「お前、一体、どうなってるんだ!?大丈夫なのか!」と言ってしまったりする。自分が気になっていることがあるなら、相手にちゃんと確認すればいい。でも、意外とこれができない人が多いようです。

そして、コップが溢れた勢いで、「お前はいつもそうだ」「日頃から」「この前も」と、過去にあったことまで持ち出し、人格否定までしてしまって、一線を超えてしまう。

会社を取り巻く環境が変化する中、上司に負荷がかかりやすくなっています。理想を言うのであれば、部下の側から、「あの仕事ですが、期日内には終わりそうです」「プロジェクト順調ですので安心してください」などと一言でも報告するだけで、上司のストレスを軽減させることができます。

人は互いの事情がわかっていると、理解しあえ尊重することができます。何も知らなければ知らないほど、相手の行動をネガティブに解釈しがちで、相手が苦しんでいるときにもかかわらず、苦しい働きかけを発信してしまったりもする。

自分のストレス耐性をあげ、ストレスコントロールをして、相手のストレスを理解してあげることが必要なのです。

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00191002.jpgパワハラがなぜ生まれるのか。その理由を企業の体質や構造から解明し、改善方法が解説されています。管理職となったあなたが抱えている問題を解決するヒントがまとめられています

 

和田 隆(わだ・たかし)

ハラスメント防止コンサルタント、1級キャリアコンサルティング技能士、シニア産業カウンセラー。メンタルプラス株式会社代表取締役、ウェルリンク株式会社シニアコンサルタント。大学卒業後、旅行会社、スポーツクラブ運営会社で主に商品企画業務に従事。その後、職場のストレスが社会問題化する流れの中、心の健康を大切にする支援をライフワークとするため、メンタルヘルスケアに取り組む。現在、カウンセラー、コンサルタントをする傍ら、ハラスメント、メンタルヘルス、睡眠改善、コミュニケーション等をテーマに、民間企業、官公庁、教育機関等で、講演・指導を行っている。受講者は10万人を超える。

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※この記事は『パワハラをなくす教科書』(和田 隆/方丈社)からの抜粋です。

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