その主張「思いやり」含んでますか?パワハラを避けるスキル「アサーション」とは?

身近な社会問題として注目を集める、パワハラ=パワーハラスメント。今や労使紛争のトップになったパワハラは、どうすればなくせるのでしょうか。カギとなるのは「命令する上司」から「動機付ける上司」への転換。10万人以上に講演・指導を行ってきた和田隆さんの『パワハラをなくす教科書』(方丈社)から、これだけは知っておきたい「パワハラをなくす方法」について、連載形式でお届けします。

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アサーティブに接していく

アサーティブに接していくコミュニケーションスキルのひとつで「アサーション」と呼ばれるものがあります。簡単に言うと、相手を思いやりながら自己主張をする、ということです。

人間には、いつも自分のことを優先する攻撃的な人と、自分を後回しにする非主張的な人がいます。前者はプライドが高く、攻撃的。後者は自分よりも他人を優先するタイプで、日本人に多いタイプです。

例えば、上司も部下も攻撃的であれば、お互いに言いたいことをぶつけ合うので、部下側もあまり、ダメージを受けていなかったりします。

しかし、上司が攻撃的で、部下が非主張的だと、部下は一方的に言われっぱなしで、自分の意見など言えません。こういう関係は部下が体調不良、うつ状態になりやすく、危険です。

「攻撃的」「非主張的」か。どちらがいいのかという話ではなく、どちらも欠けていることに気付いていただきたいと思います。コミュニケーションにおいて、自分でも他人でも、どちらか片方だけを優先するというのはよくありません。対話が成立しないからです。

自分も大事。相手も大事。どちらも大事。相手を尊重しながら、自分の意見や要望も対等に表現することが大切です。アサーティブは対等にコミュニケーションするということ。アサーティブに接していくとパワハラはできません。対等な中にパワハラは生まれないのですから。

パワハラの基準も人によって異なる

パワハラはパワーがあるか、不当行為があるか、ダメージがあるか。この3条件で見ていくわけですが、行為が行き過ぎたかどうかの判断、行為の許容範囲は人によって違います。これもまた、パワハラ行為の線引きの難しさの一因だということがおわかりいただけたかと思います。

では、ご自身の許容範囲について、以下の事例で考えてみてください。

A社の営業部員は、定例会議に遅刻するとみんなの前で厳しく叱られる。また、月1回の全体会議前日は、2時間近くの残業を強いられるため、部員は不満を感じている。この上司の行為を見て、パワハラだと思いますか?

感覚的に判断してみてください。セミナーでは、「まったく、パワハラだとは思わない」を1点、「間違いなくパワハラだ!」というのを10点として、点数化してもらっています。

「パワハラ研修なんだから、パワハラだろう」と7~9点をつける人もいますが、次に、6人前後のグループになって平均点を出してもらうと、個人の点数とのギャップが出てきます。さらに、セミナー参加者全体の平均点を出すと、さらに、個人とのズレが生じます。

これは、何点が正解、ということではありません。ある行動に対し、自分の見方と他人の見方は違う、ということを感じてもらいたいのです。ハラスメントでは、自分と他人の違いを理解するということがとても重要になります。

では、この事例について、パワハラかどうかの判断がなぜ割れたのか、振り返ってみましょう。

パワハラだという人は、「みんなの前だからダメ」「厳しすぎるのがよくない」「残業を強いるのはどうか」などと言います。つまり、パワハラかどうかを判断するとき、そこにある「言葉」で判断しているのです。

人間は話の内容より、言葉そのものに反応しやすいのです。「みんなの前」「厳しい」「強いる」のはよくないと感じたわけです。

私の判断では、行為としては必ずしも行き過ぎていません。もちろん「みんなの前」で失敗を叱らないほうがいい。わざと失敗する人は基本的にいません。失敗して傷ついているところに、さらに自尊感情を傷つける行為で、そんなふうに叱責されてやる気を起こす人はいません。

しかし、理由もなく遅刻をしたなら叱られても仕方がありません。時間をきちんと守っている人にしてみたら、「なんだよ、あいつ!遅れてきて」という思いも抱くでしょう。そこで上司がみんなの前で叱ってくれたら、「ちゃんと言ってくれた」と溜飲を下げることもできる。全体の納得性が高まりますので、みんなの前で叱ったほうが効果的な場合もあります。

また、「厳しく」叱るのは、大事な会議を軽んじたからであって、ここで厳しく叱らなければ、会議を軽んじてもいいという認識が広がってしまう。職場の秩序を守るため、厳しく叱ることは必ずしもマイナスではありません。しかし、「定例会議に遅刻するような奴はダメ人間だ!」と言ったとしたらどうでしょうか?遅刻という行動だけでなく、人格否定が含まれているのでパワハラ的になります。

2時間近く残業を「強いられる」という表現ですが、「強いられる」というのは基本的によいことではありません。ただし、必要な残業を求めているのにそれをパワハラだというのは違いますよね。

残業の指示は、目的があり必要性があるかどうかです。残業をする合理性や相当性で判断していかなくてはならないのに、「強いられる」という言葉だけで判断しているわけです。

つまり、何を言いたいのかというと、人は言葉に反応しやすいため、上司は部下に誤解を与えないように丁寧に言葉を発していく必要があるのです。仕事を期限内にやり遂げてもらいたいという思いを伝えるとき、「最後まで投げ出さずにやってくれよ」と言ったら、部下は「投げ出したりしませんよ!」と反発したくもなります。

自分が口に出した表現が、どんなふうに解釈されるのかということへの想像力が大切です。アサーティブな表現――自分のことも、相手のことも考えて表現する。自分ではなく他人のほうへ意識を向けると、他人側から自分のことを見ることになります。

「部下が自分の思うとおりにやってくれない!」と思うのは、自分が軸になっている証拠です。じゃあ、なぜ、彼はできなかったのか?と相手の立場や状況を考えることができると、いきなり感情をぶつけることがなくなります。コミュニケーションの軸は相手にあると考えてください。

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00191002.jpgパワハラがなぜ生まれるのか。その理由を企業の体質や構造から解明し、改善方法が解説されています。管理職となったあなたが抱えている問題を解決するヒントがまとめられています

 

 

和田 隆(わだ・たかし)

ハラスメント防止コンサルタント、1級キャリアコンサルティング技能士、シニア産業カウンセラー。メンタルプラス株式会社代表取締役、ウェルリンク株式会社シニアコンサルタント。大学卒業後、旅行会社、スポーツクラブ運営会社で主に商品企画業務に従事。その後、職場のストレスが社会問題化する流れの中、心の健康を大切にする支援をライフワークとするため、メンタルヘルスケアに取り組む。現在、カウンセラー、コンサルタントをする傍ら、ハラスメント、メンタルヘルス、睡眠改善、コミュニケーション等をテーマに、民間企業、官公庁、教育機関等で、講演・指導を行っている。受講者は10万人を超える。

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『パワハラをなくす教科書』

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※この記事は『パワハラをなくす教科書』(和田 隆/方丈社)からの抜粋です。

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