仕事がたまる、残業が減らない、遊ぶ時間がない...そんな人は「時間の使い方」が悪いのかもしれません。毎月1冊、10万字の本を書き続けている人気ブックライター・上阪徹さんが実践している「時間術」についてお届けします。成功者3000人を取材して学んだという「時間の哲学」に満ちたメソッドは必見です!
※この記事は『大人の時間割を使えば、仕事が3倍速くなる! プロの時間術』(上阪徹/方丈社)からの抜粋です。
「素材」さえあれば、文章にはまったく困らない
文章を構成している「内容/素材」とは何か。私は端的に「文章の素材」と呼んでいるのですが、これには大きく3つがあります。
・事実
・数字
・エピソード
です。この3つの「素材」をどんどん書いていけばいいのです。逆にいえば、この3つの「素材」がなければ文章を書くことはできません。私にもできない。そうすると、表現だけで、文章を書かないといけなくなります。だから、時間もかかるのです。
要するに、文章はゼロからひねり出して作るもの、ではないのです。すでにある「素材」を書けばいいのです。
そしてここで大事になるのが、メモを取ることです。なぜなら、人間は忘れてしまう生き物だからです。そうすると、いざ訪問先から会社に戻って書こうとして、「あれ、思い出せないぞ」ということになる。
例えば、新しくできた取引先の物流センターを視察に行ったとしましょう。簡単なレポートを書いて部内共有をしなければいけなくなった。こういうとき、ついやってしまうのが、「巨大な」「最新鋭の」「膨大な数の」といった形容をしてしまおうとすることです。そして、こうした形容の言葉を思い出そうとして、デスクの上でウンウンうなることになる。これは苦しいし、時間もかかるのは当然です。
では、「素材」で考えてみましょう。事実、数字、エピソードです。「東京ドーム10個分の大きさだった」「昨年、アメリカの大手L社が開発したばかりのベルトコンベアーを導入していた」「800台のトラックが待っていた」。どうでしょうか。形容詞と事実と、どちらが部内共有で新しい工場についてイメージをしてもらえるでしょうか。
したがって、視察に行ったときには事実、数字、エピソードを意識してメモを取っておく必要があります。それをしっかりメモできていれば、もう安心です。会社に戻ったら、それを組み替えて、文章にしていけばいいのです。
伝える、とはつまり、相手に追体験してもらうことだと私は思っています。どんなふうに伝えれば、相手に自分がしてきたことを追体験してもらえるか。それを意識して、素材を捉えていくことです。
そして素材は「聞いたこと」ばかりではありません。追体験ですから、「見たこと」も素材です。もっといえば、「触れたこと」「匂い」もでしょう。つまりは、五感です。五感で感じたものすべてが、素材になるのです。
書く仕事をしている人は、新聞記者であれ、雑誌記者であれ、私であれ、要するにこの素材を取材で取りに行っているのです。取材とは、材を取ること。素材を取ってくることです。この素材がなければ、記者も私も文章は書けないのです。
そして書くプロはみんな、メモを取ります。ノートを取ります。ICレコーダーを回しますし、スマートフォンのカメラで写真を撮ったりもします。素材を手に入れるために、五感をフル活用しています。
これがあれば、書くときに「ウンウン」しなくていいのです。実際、特にビジネス系の記事に目を凝らしてもらえたらと思います。表現などほとんどありません。記者が取材で手に入れた「素材」で文章は構成されているのです。
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