「去年まで着ていた服がしっくりこない」「重い洋服を着たくなくなった」...。そんな悩みを抱えている方はいませんか? 実は2019年に50歳を迎えた人気雑貨店オーナーの後藤由紀子さんも、40歳からの10年ほどは「おしゃれの壁にぶち当たっていた」そうなんです。加齢による体型や体調の変化に合わせて「おしゃれ」をどのように楽しむといいのかを、連載形式でお届けします。
※この記事は『50歳からのおしゃれを探して』(後藤由紀子/KADOKAWA)からの抜粋です。
重いものにさようなら
私の日常着と化していたカットソーが似合わなくなるなど、40代半ばで容姿の変化に気付き、その次に待っていたのは、様々な体調の変化でした。
少し前までは無理すればこなせていたことができなくなったり、洗い物をしていると器をつるんと落とすようになりました。忘れ物も増え、出かける前はいつも指差し確認をしたり、取材の前日は内容確認のファックスを送ってもらうようにも......。
心配性なのと世話焼きなのとで、常備薬やおやつ、リラックスできる雑貨などを持ち歩くため、荷物はいつも多めだったのですが、それもだんだん疲れるようになりました。特に旅行などで慣れない場所を長距離歩くと、いくらお気に入りのバッグだとしても、帰りには重いものを持つのが辛くなりました。いまでは帰りの荷物は宅配便で送ってしまうことのほうが多くなり、解決法が少し見つかりましたが、当時は今後はどうすればいいんだろうと途方にくれたものです。
奮発して買ったトレンチコートや、生地のしっかりした高級なコートも、肩こりがひどくなって、着る回数が減っていったのもこのころからです。
そう、重いものを体が受け付けなくなったのです。「これが老化かあ......」としんみりしてしまいました。40を過ぎているのですから、おばさんなのは百も承知です。でも周りに音楽好き、カルチャー好きの友人が多く、みんな変わらずおしゃれで活動的だし、と自分も同じように若いつもりでいたのです。
おしゃれに夢中だった若いころの私なら、おしゃれ度を優先して、重いことや使いづらさも何のそのでしたが、「おしゃれは我慢!」とは、もう言えません。
「こんなはずじゃなかった!」と嘆いても、日々の暮らしは続くわけで、私なりに工夫せざるを得ない状況になりました。年齢を重ねることを受け入れ、快適なおしゃれを意識 するようになっていったのです。
着なくなったものを手放す
似合う洋服がどんどんなくなっていく中、うじうじ悩んでいても時間は取り戻せませんし、何かが解決するわけではありません。私は、すぐに対策を練りました。
まずは、着られなくなった洋服を潔く手放すこと。ある時から毎年、衣替えの後にはhalの店の奥で「我が家のフリマ」を開催するようになりました。 中には「すごく高かったし」とか「娘に着てもらったらどうだろう?」と迷うものもありましたが、たんすの肥やしのままカビ臭くなってしまうなら、「合う体形の方に安価でお譲りするのが一番」と割り切れるようになりました。
下半身太りから、もうはけなくなったパンツやひざ丈スカートを大放出した年もありましたし、大量のボーダーアイテムとSサイズアイテムを放出したある年などは、正直切ないものがありましたが......。
手放す時は、自分の老化や体形の変化に向き合った結果でもあるので、悲しい気持ちになるのですが、いい面もあります。手持ちの洋服を循環させる習慣ができたことで、いつでも「自分に似合う洋服だけがあるクローゼット」になり、必要なものが明確になったと感じています。
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