「孤立出産」や「日齢0日児の虐待死」の背景には、私たちの社会が抱えるさまざまな課題があります。
性教育が不十分であることや緊急避妊薬(アフターピル)を手に入れるのが困難なこと、人工妊娠中絶の経済的なハードルが高いこと、経口避妊薬も含めて人工妊娠中絶の際に配偶者の同意が求められるために女性が自分ひとりで決められないといった制度上の問題があります。妊娠や中絶に対する社会の強いタブー意識や自己責任論もまた、妊婦が助けを求める声を上げづらくしています。
また、思いがけない妊娠などで生みの親が子どもを育てられない場合、生まれた子どもを養親が引き取る「特別養子縁組」という仕組みの周知も課題です。特別養子縁組は家庭に恵まれなかった子どもの命を救い、温かい家庭の中で健やかに育つ環境を用意するために1988年にスタートした制度です。制度ができてからすでに35 年以上が経ちましたが、いまも救われない子どもの命があります。
少子化が国難となっている日本は、「産めよ殖やせよ」といわんばかりに出生数を増やすことにやっきになっています。しかし、実際に生まれた子どもたちは、幸せに生きることができているでしょうか?
今も生まれて間もなく消えていく命があります。すべての命が安全に、健やかに育つことができるようサポートするのは、社会の責任です。
※掲載されている情報は2024年2月現在のものです。
(参考)
・こども虐待による死亡事例等の検証結果等について(第19次報告)(こども家庭庁、2023年)
・「こうのとりのゆりかご」第5期検証報告書(熊本市、2021年)