ビジネスパーソンであれば、年に1度は健康診断を受診しているはずだ。しかし、より詳細に健康状態を知りたいと思うなら「人間ドック」という手段もある。
登録者数50万人以上の人気YouTubeチャンネル「予防医学ch /医師監修 ウチカラクリニック」も運営する著者の書籍『人間ドックの作法-心構え、受けるべき検査、検査結果の見方など、丸ごと徹底解説』(森勇磨/中央公論新社)は、人間ドックへのハードルを下げてくれる1冊。すでに受診経験のある人にとっても、検査数値の見方など、学ぶべきことが多い。
※本記事はダ・ヴィンチWebの転載記事です
『人間ドックの作法-心構え、受けるべき検査、検査結果の見方など、丸ごと徹底解説』(森勇磨/中央公論新社)
基本「自由」の人間ドックでは検査項目のみきわめも大切
恥ずかしながら、本書を読むまで健康診断と人間ドックの違いすら知らなかった。
著者によると、その違いは「強制力」にある。
健康診断は「労働安全衛生法」で定められたものであり、企業に所属している人であれば「仕事を安全に行うことができるかどうか確認する」目的で、必ず受診しなければならない。
対して、人間ドックを受診するかどうかは「自由」で基本的には個々の判断に委ねられる。
また、人間ドックは健康診断と比較して「検査項目の数」も異なる。
健康診断のように項目は「統一」されていない。
人間ドックを推奨する企業で、実際に受診する従業員が任意で「オプション検査」を選べる場合があるのは、このためだ。
ただ、項目によっては「科学的に効果が証明されていなかったりする検査が押し込められていること」もあるため注意が必要だと著者は指摘する。
本書などの知見を参考に、自分にとって真に必要な検査は何かを、みきわめる目も大切ということだろう。
難関の「バリウム検査」では「ゲップ」を出さないよう注意!
人間ドックと聞くと、健康診断より「何やら、大ごとなのではないか...」と不安に駆られる。
しかし、本書を読むと基本的な「流れ」は一緒だと分かる。
著者によると、人間ドックの「準備」は「前日」にはじまる。食事を済ませるのは前日の「21時」までとすることが多く、検査に必要な「尿や便」も事前に採取する。
「胃カメラ」や「大腸カメラ」を受診する場合は、検査までに胃や腸を空っぽにしておかなければならない。
慣れない検査では、注意点もある。
例えば、敬遠されがちな「バリウム検査」だ。
バリウムを飲んで行う「胃のレントゲン検査」では、バリウム自体の味が「まずい」と不安をおぼえる人たちも少なくない。
しかし、昨今では「イチゴ味、チョコ味、バナナ味など色々なフレーバー」のものもあるという。
検査は「10分程度」で終わる。
ただ、途中で「ゲップ」が出てしまうと「初めからやり直し」になってしまうので注意が必要。
検査後、2~3日間ほどは「バリウムが混じった白い便」が出る場合もあるので、心して挑もう。
分かりづらい項目の筆頭「コレステロール」数値の目安は?
人間ドックの結果に一喜一憂するだけでは意味がない。
本来の目的は、結果を受けて生活習慣を見直すことにある。
本書ではその参考として、様々な検査項目に関する目安の数値も紹介している。
例えば、検査の基本となる「血圧」で「上の数値」が高い人は注意が必要だ。
著者の目安は「自助努力で140を切る」数値で、さらなる理想は「120台でキープしておける」数値だという。
これは、上の血圧が「140を超える状態が続き、自助努力で改善できない場合は、投薬の対象」になるためだ。
また、血中の「コレステロール」数値は、そもそもの基準が分かりづらい項目の筆頭だろう。
日本では「LDL」を「悪玉コレステロール」、「HDL」を「善玉コレステロール」と呼ぶ。
LDLは「多いと良くない」数値で、HDLは「少ないと良くない」数値とおぼえておくのがポイントだ。
LDLは「140」が基準値で、「160」を超えると「心筋梗塞などの心臓病のリスクが2・6倍に、180を超えると5・7倍になった」とする研究結果もある。対して、HDLの基準値は「40」。
この数値を切ると、「血管の壁に蓄積した余分なコレステロールを回収する」というHDL本来の役割が損なわれる可能性もあると著者は指摘する。
本書では、これらのほか「いつから人間ドックにかかるべき?」「人間ドックの費用の相場は?」といったささいな疑問や、「胃カメラ」や「マンモグラフィ(乳房レントゲン検査)」の流れなどを詳細に扱っている。
公私ともども、体はやはり資本だ。本書を読むと、自分の健康を改めて考えたくなる。
文=青山悠